ソロモンと安全保障協定を締結した中国の思惑は?「安全を阻害しているのはアメリカ」
ソロモンは台湾と断交から3年…- 中国がソロモン諸島との間で安全保障協定を締結
- アメリカやオーストラリア、日本は懸念を示したが、中国は反発
- ソロモン諸島はかつて台湾と国交を結んでいたが、19年から中国と樹立
中国外交部は19日、ソロモン諸島との間で安全保障協定を締結したと発表した。ソロモン諸島はオーストラリアの北東に位置する島国で、人口は約70万人。首都ホニアラは、太平洋戦争の激戦「ガダルカナル島の戦い」で知られるガダルカナル州に位置する。
協定締結について、日本政府は松野博一官房長官が21日、次のように懸念を表明した。
太平洋地域全体の安全保障に影響を及ぼし得るもので、懸念を持って注視をしている
アメリカやオーストラリア、日本がネガティブな反応を示していることについて、中国外交部スポークスマンの汪文斌氏は、記者会見で次のように述べた。
両国は平等と相互利益のもと、公開で透明性のある安全保障協定を結んでおり、ソロモン諸島の社会秩序の安定と自然災害への対応、人道主義に基づく救助活動などが行われる。第三者への影響はなく、現行の安全保障体制に代わるものではない。我が国とソロモン諸島の間の安全保障協力が、アメリカに対してなぜ重大なリスクとなるのか、理解できない。
汪氏はさらに米中対立を背景に、アメリカを強く牽制した。
アメリカの論理で言えば、太平洋の島国はアメリカあるいはそのわずかな同盟国との間でのみ安全保障協力ができないということか? アメリカ以外の国と協力を結ぶと脅威になるのか? アメリカはこれらの島国を自分たちの属国のように見ているのではないのか? これらの島国と平等に発展していく関係を求めているのか、それともコントロール下に置こうと考えているのか? アメリカはこれらの問題に答えなくてはならない。
そして、平和と安全を阻害しているのはアメリカの側だと断言。
中国は南太平洋地域の平和的な建設者であり、地域の安定を促進するものである。アメリカその他の国々は根拠もなく中国を誹謗中傷し、オークスなる関係を結んで核拡散リスクと冷戦思考をこの地域に持ち込んでいる。“地域の安全を阻害している”のは彼らのほうである。
一方、ソロモン諸島のソガバレ首相は20日、議会で
中国との安保協定はいかなる国も外部同盟も念頭に置いておらず、自国の治安維持を目的としている
と説明。相互の同意のもとに結ばれた関係であると強調した。
ソロモン諸島は2019年まで台湾(中華民国)と国交を結んでいたが、同年4月にソガバレ首相が就任すると、台湾と断交して中国と国交を樹立。21年11月には親中路線に舵を切ったソガバレ首相に反発した市民による激しいデモ活動や暴動が発生した。その後、暴動再発に備えた訓練のためとして、中国から警察関係者と装備を受け入れていた。また、中国との国交樹立後は、23年に開催予定の国際スポーツ大会に向けた新競技場を中国支援で建設することが決まっている。
しかし、ソロモンは現在も英連邦の一員であり、オーストラリアやニュージーランドにも近く、南太平洋海域に中国が“橋頭堡”を築くような動きに西側諸国の懸念は深まるばかりだ。
今回の安全保障協定締結について、英ガーディアン誌は20日、「世界に衝撃を与えた取引」と論じる記事を掲載。この記事では、ソロモン諸島の野党指導者、マシュー・ウェール氏の話として、今回の締結に至るまでソガバレ首相らが周辺と極秘裏に交渉を進めていた経緯を紹介。また、オーストラリアの元外交官で、ソロモン諸島高等弁務官などを歴任したジェームズ・バトリー氏が同誌の取材に「協定の文案が北京で起草され、ソロモン諸島側に提示されたように見える」との見方を示した。
ここ最近、日本の国際ニュースはウクライナ情勢に目を向けられがちだったが、中国が着々と自国の勢力圏を拡大している情勢を改めて思い知った人も多いのではないだろうか。
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