統一地方選「静かに熱い」共同親権の論議、自治体レベルで求められることは?

当事者の候補が奮戦、警察庁通達も注目
  • 統一地方選で共同親権の問題は一見話題になっていないようだが…
  • 国政政党で唯一公約の維新が躍進、当事者が選挙に立候補も
  • 法務省のパブリックコメントや警察庁通達が注目。自治体の役割は?

統一地方選を前に政治的に混迷していた共同親権の問題は、予想どおりマスコミはもちろん選挙戦当事者の候補者、政党の間で議論がほとんど聴かれていない。親権制度の見直しそのものが国政マターであることや、反対派による落選運動などの紛糾があったことなどが背景にあるが、ここ最近の政治情勢や警察当局の動きに元パートナーらに子どもを連れ去られた被害者の間で期待を寄せる声もある。

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統一地方選の前半戦を終えて、欧米並みの共同親権導入を求める人たちが注目しているのは維新の躍進だ。21年衆院選に際してまとめた政策提言集では「子どもの福祉・最善の利益の確保のため、主要先進国で法制化されている共同親権・共同養育については、 DV(家庭内暴力)被害等に十分に配慮をしながら導入を推進します 」とうたい、国政政党で唯一マニフェストに掲げている。

前半戦で維新は本拠地の大阪だけでなく、奈良県知事選を公認候補が制し、初めて大阪以外で知事を送り込むことに成功。統一地方選で1.5倍増となる議席獲得600の目標達成へ弾みをつけた。共同親権導入を明確にうたった政党は珍しく、その理念に共感し選挙戦に挑む候補者もいる。

長野県議選では離婚後の親子交流に苦慮した当事者でもある男性が立候補。惜しくも落選したが、統一選後半戦の目黒区議選(23日投開票)では、幼い時の両親の離婚で母親との再会まで約20年を擁した元職の男性が4年ぶりの返り咲きをめざし、身を切る改革の公約とともにライフワークの共同親権導入を掲げながら連日街頭で声を枯らしている。

候補者も有権者も親権問題の当事者は子育て世代とあってSNSの活用はお手の物。共同親権に反対する人たちとの「論戦」も見られるが、候補者の真意を尋ねる人も。東京のある区長選では共同親権反対論者を配偶者に持つ候補者に「自分の子どもの入学式は父母問わず出席は出来るのでしょうか?」と質問を寄せる人もいた。

永田町、霞が関の親権問題を巡る情勢に当事者は、統一地方選の半年近く前から重大な関心を寄せてきた。法務省は昨年12月から今年2月中旬まで「家族法制の見直しに関する中間試案」に関するパブリックコメントを実施。共同親権の賛成派、反対派ともに多数の意見が送られた。3月下旬には警察庁刑事局が全国の都道府県警察に対し、連れ去り被害の届け出について「遺漏なきを期されたい」と適切な対応を求める通達を出したことも注目を集めた。

メディアで報じられる裏で“静かに過熱”するのは「DV被害者を保護しながら離婚後共同親権制を実現する民法改正法案は今すぐにでも国会に提出できる状態」(嘉田由紀子参院議員)でありながら、法務省も自民党も選挙戦への影響を見越し様子見していることに危機感を募らせているからだ。

他方、親権制度は国政の専管事項であるものの、現場は国民に身近な基礎自治体だ。共同親権の賛成派からはDV防止や共同養育計画合意書づくりにおいてADR(裁判外紛争解決手続き)の活用が提言されているが、自治体との連携のあり方など共同親権導入後を見越し、先取りして議論が地方政治でも求められている。

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