全局“テレ東化現象”…日本の地上波テレビ、ロシア・ワグネル武装蜂起で終日特番なし

有識者からも疑問相次ぐ

ロシアの民間軍事会社ワグネルによる武装蜂起を巡り、日本の地上波テレビ各局は24日、事態が刻々と深刻化する中でも終日に渡り特別番組を放送しなかったことがネット上で話題になった。

東京・渋谷のNHK放送センター

ロイターによると、ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が通信アプリ「テレグラム」への投稿で、ロシア軍による爆撃でワグネルの戦闘員が多数殺害され、武装蜂起を宣言したのが現地時間の23日。その後、武装勢力は日本時間の24日昼までにウクライナに隣接するロシア南部のロストフ州に進撃し、ロシア軍の南部軍管区司令部を制圧したことが判明するなど事態が深まった。

SNSではロシア軍が各地で厳戒態勢を取り、街中を戦車が行き交い、兵士らが銃を構える様子などを映した画像や動画が多数投稿。日本時間の昼過ぎには、これらを引用する形で、米CNNや英BBCなど欧米の放送局が予定を変更して報道番組を拡充する動きが見られたが、日本の地上波各局(東京キー局管内)は定時の報道番組で、武装蜂起の動向を取り上げたものの、NHKを含めて往年の湾岸戦争やイラク戦争当時のように特別番組は編成せず、通常通りにバラエティやドラマを放送し続けた。

ツイッターでは

クーデターを成功させるか?という瀬戸際なのに、この平静を装っている感じはなんなんだ。

ロシア情勢のみならず、世界情勢がどうなるかという時に、日本の地上波は何やってるんだろうね。

Twitterを見ないで地上波だけ見てると、ロシアで大変なことが起きてるなんて誰も思わないだろうな。

などの疑問や批判が噴出。各局の対応ぶりについて

速報性でネットに勝てないのはわかるんだが、何にもしないってところに今の日本のメディアの体質が現れている

といったあきらめの境地を語る人もいたが、

日本のTV局の総テレ東化

テレ東化現象

など、歴史的有事の際でも独自の編成を貫いたテレビ東京を揶揄するように引き合いにする人も続出した。

東京・六本木のテレビ東京社屋前(編集部撮影)

ネット上では古くから「テレ東伝説」と言われ、1991年の湾岸戦争では他局が特番を組む中、テレ東はアニメ『楽しいムーミン一家』を放映し、高視聴率をあげた“故事”が語り継がれている。ただ、この日は災害特番では機動力を発揮するNHKですらBSも含めて特番がなかったことに、報道関係者や有識者からも疑問が呈された。

国際政治学者で、一橋大の秋山信将教授は「もしかしたら世界が変わってしまう可能性だってなくはない重大事のさ中、NHKが特番で報道していないことについて、そのセンスや取材力の低下を嘆く声がツイッターに流れてくる」と指摘した上で、「確かにそうだよなあ…そのために有料にしてるんだし。独自取材がなければ提携している各国の局のニュースでもいいんだけど」とネットの声に共感していた。

日本大学危機管理学部の福田充教授は「ロシアのこの展開をどこもリアルタイム報道、中継しない日本のテレビ地上波、BS放送、大丈夫でしょうか?」と懸念を示し、「30年前の方がよほどリアルタイムでした。チャウシェスク殺害とか、天安門事件とか」と述べ、往時と比較していた。

元NHKアナウンサーの堀潤氏は在局時代のエピソードを披露。「2010年アラブの春が起きた時、CNNもBBCも特番体制に切り替え報じ続けていた。当時僕はまだNHK職員でニュースキャスターをしていた。『なぜNHKは伝えないのか?』と沢山問い合わせを受け、BSニュースを案内しながら現地市民のSNSをかき集めてTwitterで伝えた。内側にいる職員として不甲斐なかった」などと率直な心境を明かした上で、「あれから10年以上が経過。ロシアでのワグネル武装蜂起を特番体制で伝え続けるNHKはいない」と古巣の現状を嘆いているかのように綴った。

 

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