国交省OB人事介入の空港施設、株主総会で異例の社長再任否決に、田中康夫氏「人払い」

「続投に疑義当然」の見方も

国土交通省OBが社長や副社長の人事に介入していたことが表面化した民間企業「空港施設」の株主総会が29日、東京都内で行われ、会社側が提案した取締役候補9人のうち、乗田俊明社長の取締役再任を否決した。

空港施設が設備を手掛ける羽田空港(kawamura_lucy /iStock)

空港施設は羽田など主要空港の設備を手掛ける東証プライム上場企業だが、敵対的買収のようなケースを除いて社長の再任を認めないのは異例だ。約20%ずつ株を保有するANAとJALなどの主要株主が否決したと見られている。株主総会の採決を受け、同社は乗田氏の退任と田村滋朗常務の昇格を発表した。

同社は1970年設立。事業の性格が許認可が絡むとあって、長らく国交省OBが社長を務めるなど典型的な天下り企業だった。しかし近年はホテル投資事業の失敗で40億円を超える減損を出し、21年3月期は1995年の上場以来初の営業赤字に転落していた。

経営刷新を図るため、JAL出身の乗田氏が社長を務めていたが、昨年12月、東京メトロの会長だった元国交次官の本田勝氏が乗田氏らと面会、同省OBの副社長(当時)山口勝弘氏を社長にするように求めていたことが今年3月になって朝日新聞がスクープして表面化した。

さらに週刊文春が本田氏が人事介入する際の音声を入手して生々しく報道するなど騒ぎが拡大し、本田氏、山口氏はそれぞれ退任に追い込まれた。

しかし、この日は介入を排除した側の乗田氏が実質的に解任される展開に。ネット上では、「元事務次官にたてつくとこういうことになるんですね」「痛み分けですね」などと採決結果に批判的な見方が相次いだ。ツイッターでは長野県知事、国会議員を歴任した作家の田中康夫氏が反応。「乗田俊明社長再任を含む9人の選任議案を反対多数で否決💢」と憤った様子で、乗田前社長を主要株主が「人払い」したのではないかとの見方を示した。

一方、公共政策学者の上山信一氏はネット世論の多数派と異なる見解を披露。Yahooニュースのコメントでは、乗田氏がメディアを巻き込んで国交省側の介入を排除しようとしたとして「ビジネスマンとしての品性を欠く」と厳しく批判。「JALもANAもこの方の続投に疑義を抱いて当然だろう」と述べ、株主としての対応が妥当の立場を示した。上山氏は国交省OBだが、「国交省OBの天下りと同等に航空会社OBの天下りは良くない」とも指摘。ツイッターでは「施設借り主の航空会社のOBが社長をやるのは望ましくない」と理由を示した。

 

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