学校教育を救うには部活動全廃しかない
もはや何かを諦めることが必要な時代- 中学教員の77%、小学教員の64%が上限オーバーの時間外勤務
- 「現場に余裕ないのは明らか」と村山氏。部活を辞めることを提言
- そもそも問題だらけの部活動。「何かを諦めることが必要な時代」に
ゴールデンウィークの直前、文科省による学校教員の残業時間の22年度の調査結果が出ました。「1カ月あたりの時間外勤務が文科省の定める上限基準(45時間)を超える教員は中学校で77.1%、小学校で64.5%を占めた」そうです。文科省さんは、自分が決めた基準を3分の2前後の教員が守っていない。あるいは守れていないことをどう思っているのでしょうか。しかもこれはサービス残業を含まない上に、コロナ下での数字です。

こういう状況でさえも教員になりたがるような人にだけは、教員になって欲しくないと思うのは私だけでしょうか。体育会系のパワハラ族か、過労死のリスクに耐えられるほど特殊な理由(たとえばロリコン)をお持ちの方ではないかと、つい勘ぐってしまいます。
しかし、この現状を解決するのは容易ではありません。すべての業界が人手不足で、国も地方も財政が厳しい今日この頃、働き手の数を増やせないなら仕事の量を減らすしかありません。それでいて一部の書類仕事を除いて、教員の仕事は全てが子供たちや地域に貢献しているのですから、「不要なものを探す」という発想では話が前に進みません。何を削っても悪影響があるのなら、マイナスを最小にする方法を考えてみましょう。
部活をする余裕がなくなった
「塾の授業と学校の授業、上手なのはどっち」と子供に聞けば、よほどラッキーな子か、よほど賢い子か、よほど変わった子か、よほど嘘つきな子か、塾に行っていない子以外は、「塾」と答えるでしょう。考えてみれば当たり前の話です。数ある学校の仕事のひとつとして授業に取り組む教員と、授業専門のプロとして生活をかけている塾教師との競争は、野球の選手と陸上の選手のどちらが100m走が速いか……みたいな話です。
この問題はかなり深刻だと思います。親の所得格差や居住地の地域格差が子供の学力格差に直結することの、最大の理由だからです。実際、塾に行かずに公立の小中高の授業だけを受けた子供が、国公立大学かGMARCHや関関同立以上のクラスの私立大学に毎年多数進学する地域は限られており、どんどん減少しているのが実情です。
これを変えるには、学校の授業の質やら量を改善するよりないはずですが、そんな余裕が現場にないのは明らかです。クラブ活動などやっている余裕はありません。部活だって大事な教育活動だというのは、反論になっていません。部活で身につけたもので将来職を得られる生徒と授業で身につけたもので職を得られる生徒、どっちが多いか。もっと言えば、部活が機能しなくなるのと授業が機能しなくなるのと、どちらがより多くの生徒を将来不幸にするのか、です。
大量の教員を現場に追加投入するだけの経済力がない我が国は、学校で子供たちに趣味やスポーツをさせられるほど、もはや豊かではないということです。授業よりも部活のほうが教育的に大事だという考え方もアリですが、そういうのなら、親の所得や住んでいる地域による進学格差には、一切文句を言わないで欲しいと思います。
問われる部活のそもそもの意義
さらに、部活って本当にそんなに素晴らしいものでしょうか。指導者の能力にあまり期待できない中で無理に活動している弊害も多く見られます。楽器の演奏などで、悪い癖をつけたせいで一定以上能力が伸びないというのもよく聞く話です。体育系のクラブでの後遺障害も同じ質の問題です。三角関数を知らない数学教師はいませんが、面をつけたことのない剣道部顧問はざらにいます。水泳や武道の安全管理をド素人がやっているのですから、今程度の問題で済んでいるのが不思議なぐらいです。

一方、幸運にも指導者にも環境にも恵まれ入学以来ずっと機嫌良く活動していたのに、進学や就職を機会にキッパリやめてしまう生徒が大量にいます。おそらく過半数はそうでしょう。忙しくなって遠ざかるというのは仕方ありませんが、「もう十分やりきった」とか、もっとはっきり「嫌になった」と言って、立ち去ってしまうことも少なくありません。
というより、それが一般的な部活の終わり方です。成人前に多数が引退する趣味やアマチュアスポーツって何なんでしょう。精神教育や思いで作りも大切かもしれませんが、学力をかなり犠牲にしてまで、重視することなのでしょうか。
無償労働のもたらす弊害
もうひとつ、教員の無償労働に支えられていること自体の弊害もあります。こうした指導者の姿を見て育った生徒は、感謝と尊敬を感じて自分も無償の活動でも頑張ろう思うのは素晴らしいことなのですが、一方では他人の無償労働を当然だと思ってしまう傾向があります。そして多くの場合、労働条件にこだわる組合員などを敵視しがちです。頼りないし思想的に鼻持ちならないのは事実ですが、労働者としての教員の権利が極端に蹂躙されないようにできるのは、現実には労働組合しかないでしょう。
指導する側にもしばしば問題が発生します。熱心に部活指導をして長年、一定以上の結果を出している教員がいるクラブには、外部の目が届きません。そして「家庭も健康も犠牲にしているんだから、少しぐらい勝手なことをしてもいいだろう」という甘えがパワハラやセクハラの温床になります。
実際、「勝つために規律ある組織にしたい」という気持ちや「生徒に心身ともに寄り添いたい」という気持ちが、暴力や性の強要という最悪の形で出てしまうのは、よくあるパターンで、特定の学校の特定の教員のみの責任にできるものではないでしょう。

諦めることが必要な時代
国や自治体の予算の不足、地域社会の風化、家庭格差の拡大、授業を妨害する生徒の増加など、学校を取り巻く環境は、ここ数年、極端に厳しくなっています。これまでは保護者の負担増や教員の踏ん張りで、幸い目立ったほころびが無かった日本の教育も、あちこちに限界が来ており、その典型が格差拡大とブラック労働なのではないでしょうか。
もはや日本は豊かな国ではなく、改革をするには代償に何かを諦めることが必要な時代になっていることを考えれば、多くの中高生の将来のため(というより悪影響を最小限にするには)、部活はきっぱり廃止して、その分の経費・人員・時間で教科教育を充実させるしかないと思うのですが、いかがでしょうか。
■
(本記事の反響を受けた第2回はこちら)
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