“どうする吉村 ” 万博から撤退する勇気が大阪府民を守る
自民の「維新潰し」!? 逃げ切りのススメ- 懸念される大阪万博の行方を、村山氏が独特の目線と筆致で語る
- テーマ設定から詰んでいた状態、一番「動きの悪さ」を感じたのは…
- 「万博潰し」で自民は「維新潰し」!? どうする吉村知事?
『命かがやく未来社会のデザイン』 ……こらアカンわ。関西人のため息が聞こえてきそうでした。「命」「かがやく」「未来社会」って、平成のうちに賞味期限が切れた昭和の赤面語が3つも入っています。どういう人材が、どういう発想で始め、どういう目で見られ、どういう失敗をするのか、分かりやすい話です。

ところで「ミャクミャク」って知ってますか。人間の腸あるいはその通過物みたいな万博公式キャラクターです。国際会議場のポスターで最初に見たとき、国際大腸ガン学会が開催されるのかと思いました。あるいは、宿便一掃系の漢方薬。『ウ●チ掻き出すヤバイ刺激の下剤』などと下らないギャグを考えていたら、ご丁寧にも大阪市内のマンホールの蓋にミャクミャクが描かれはじめました。
喜んでいるのは、長年守り続けていた「関西一気持ちの悪い公式キャラ」の座を譲り渡した奈良の「せんとくん」ぐらいでしょう。テーマにしろキャラにしろ、「作れば何とかなる」という甘さが気恥ずかしいほどです。
空き地、金食う。未来世代の借金
人類の進歩と調和。1970年の大阪万博には「万博で未来をのぞこう」「万博で世界を歩こう」という2つの明白な方向性があり、みんな入場前からお目当てのコンテンツがありました。
けれども今回、7500円も出して何を見に行くのでしょう。近未来に実現できそうな最新技術で、なおかつ見たこともないものなど、今更あまり考えられません。世界中のお宝関係もバブル期あたりに散々来日しています。その後のWebやVRの普及など言うまでもないことです。苦し紛れの「空飛ぶ車」。誰か、ヘリコプターとどこが違うのか教えてください。そもそも航空法上の型式証明は大丈夫でしょうか。「特例」は止めてくださいね。
かつて「愛・地球博」は環境を前面に出して、それなりに成功し(最終入場者数2200万人)、ジブリパークなどの広大な緑地をレガシーとして残しました。今回の万博も、「命輝く未来社会のデザイン」に沿って、防災・安全・医療・福祉などに特化した博覧会にするという話も聞いたことがあります。かなり地味な博覧会になりますが、世界中が興味を持っているテーマで、ビジネスにもなりそうですから、結構な参加が見込まれたかもしれません。
しかし、テーマの絞り込みの機会を逸してしまい、いまだに「何を見るのか」分からない状況です。国内の企業団体関係のパビリオンはわずか13館。食に特化した大阪外食産業協会や笑いの老舗吉本興業のほかは、テーマが抽象的で特徴がないものばかりだと私には見えます。少なくとも、わざわざ見に行きたい展示品や、ここでしか体験できないコンテンツがあるとは思えません。
大盤振る舞いをしてくれる太いスポンサーが少なく、有料入場者(特に懲りずにやってくるリピーター)が少ないとなると、赤字はどこへ行くのか、万博の話を聞いて機嫌が良くなる人を、関西では見たことがありません。最も好意的な反応は無関心です。
いのちいただく、未開社会のタコ部屋
表に出ている最大のトラブルは、海外パビリオンの建築の遅れです。参加国の中で、独自設計したパビリオンを作るタイプAの参加表明国は56あります。個性豊かで奇抜な建築物は博覧会の花になるはずでしたが、それどころではありません。

報道によれば、国内ゼネコンと契約をして進展している形跡があるのが、2023年8月15日現在、10数ヶ国程度、普通なら花のあるプロジェクトは受注したゼネコンが嬉々として発表するものですが、なぜかひた隠しにしています。低予算と納期厳守で犠牲者が多発する令和型タコ部屋で。ブラック企業の殿堂入りの可能性が見えます……義理で引き受けたけヨゴレ仕事で顔出しはNGなのでしょう。
7月末、出遅れているタイプA諸国に対して「日本側で(おそらく画一的な)建物を建てて引き渡すから内装はやってね」との提案が出されました。実質的にタイプBへのダウングレード。「学園祭仕様」では、面白さの上限は「お化け屋敷」だと思います。
さらに、公的資金援助のある「建築費踏み倒し保険」もしっかり準備。やる事なす事、すでに負けパターンです。しょぼい展示だけでも十分国辱的なのに、建築費食い逃げの嫌疑を事前にかけられながら参加する国がどれだけあるでしょうか。経費をかけて恥をかきたいとは誰も思わないでしょう。「ダウングレード」申請。8月末の締め切りまでに、どういう動きがあるか、あるいはどういう動きもないのか想像もつきません。
手抜きひどすぎ。ロシア参加の放置
こういう展開で気の毒なのは大韓民国です。親日政権の方針なのか、諸外国の中で先頭切って準備を進めたあげく、後続が現れず実質的に「韓国博」になれば、開催国並の恥ずかしさです。『キムチ劇辛、味覚破壊の冷麺』でも売りますか。
(【追記:12:10】出稿直前にチェコが大韓民国に続いて「基本計画書」を提出したとのこと、「韓国博」はなくなりました。『キムチ劇辛、ボヘミアガラスで冷麺』)
大国が多く平素から付き合いのあるタイプA諸国ですらこの始末ですから、残りの90数ヶ国が順調に準備を進めているはずがありません。このまま行くと、写真パネルと木の実と貝殻だけみたいな、「内申点を諦めた中学生の自由研究」が押し寄せて来かねません。別れ話を切り出したいカップルや自己破産を決断したい人に最適な、殺伐としたパビリオンばかりになるでしょう。
この記事を書いている8月14日現在、153か国が参加を公式表明したと公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下:協会)のホームページにありますが、もうこの段階で「大丈夫かいな」と思いました。
広報にある参加国リストの日付は2023年3月24日で、その後更新はありません。それによく見るとロシアが入っています。国際スポーツ大会への参加でさえ炎上案件なのに、プーチン政権が堂々とパビリオンを作るのが大問題になっていないところを見ると、やはり誰も読んでいないのでしょうか。「お知らせ」にあるその後の記事には、参加国数の増減ないしロシアに関する情報はありません。
もし万一、予定通り開館したら。警備費と嫌味千羽鶴の処理費用だけで入場チケットの売り上げぐらい、簡単に吹っ飛ぶでしょう。それとも、日本側で箱物だけ作って、空飛ぶ車の殺傷能力を確かめる実証実験でもしますか。
さらに深刻なのは、「詳細は以下の外務省Webサイトをご確認ください」とのリンクの先にある外務省の記事も更新が止まっていることです。外交当局だけにシャレになりません。開催前に『命なくなる。敗れたロシアのプーチン』になるという極秘情報でもあるのでしょうか。それなら、確かにホルマリン漬けの「キラーコンテンツ」でロシア館は平日でも入場2時間待ち。アメリカが対抗措置をとれば、国家反逆罪で「さらし首」になった前大統領が2体みられる歴史的万博になります。
いくらロシア相手とはいえ失礼過ぎるギャグだと言われるのなら、進攻から1年以上たった時点のリストにロシアの名をさらしておくのも、十分に失礼な話ですよね。恐らく只の「訂正忘れ」なのでしょうが、真面目に準備を進めている他国も、同じリストに名前を載せられるのは良い気分ではないでしょう。官僚たちの手抜きによるプチ国辱は、サッカーで負けてもスタンドのゴミを拾う現代日本国民の顔に泥を塗っていることになっていませんか。「手抜き」そのものではないですか。
それ以外の外務省の万博関連ページの最新記事は2022年10月のもの。参加表明した各国との個別の交渉が、ほぼというか全く進んでいないということが明らかです。

維新ゆるさぬ。ナニワ破壊の自民
WEB資料を見ていて一番感じたのは官僚の動きの悪さです。彼らは間に合わないことを承知で放置プレーをしているとしか思えません。都市が主催者であるオリンピックとは違い、日本国政府が主催者なので民間企業や大阪市(府)はいくら焦っても出来ることはたかが知れています。唯一、状況を打開できるはずの岸田政権は呑気に構えています。
考えてみればこれは当たり前のことです。今、自民党にとって一番危険な政治勢力は維新です。関西を中心に国民の多くが『維新かがやく、未来志向の政権』に期待しています。憲法など政策内容は似ているだけに支持層も競合します。『今も変わらぬ、時代錯誤の革新』とか『イケダ率いる、平和至上のガッカイ』よりも、よほど怖い存在です。こういうのは芽のうちに潰しておくに限ります。
維新が事実上誘致したのが今回の万博でしたが、今にして思えばこれは甘い判断でした。経費は国と自治体、財界(関西企業中心)が三等分とのことですが、大赤字が出ても国の歳出の中では屁みたいなもので、しかも税金です。儲けるつもりの府市や、その支持基盤になりつつある関西財界にお仕置きができるのなら、自民党にとって「万博潰し」は極めて効率の良い自爆テロです。

2025年。仮に、参加国は集まらん。客はもっと集まらん。収支予想は怖くて出来ない。無茶な工期と低予算で建てた箱物が『いのちからがら、未熟工事で全壊』とでもなれば、もう最高。夏は参議院選挙。比例代表で維新の凋落があからさまになります。
こう考えれば、建築業界の万博に対する冷たい態度も理解できます。普段は無視か軽視している「24年問題」を引っ張り出してきて受注を渋ったり、協会事務総長の「年末までに着工すれば間に合う」という悲壮な叫びに、日本建設業連合会会長が「何を根拠にしているのか、私どもにはわからない」とユンボでつねるような意地悪を返したり……『いけず炸裂。自民支持するゼネコン』。
この件だけは官僚の動きが素早く、協会会長が「万博期間中は2024年版の労働規制をはずしてくれ」と嘆願すると、直ちに加藤厚生労働大臣が「単なる業務の繁忙については認められない」と塩対応です。
「維新を締め上げるために自民党政権が万博潰しをしている」というのはさすがに陰謀論じみていますが、少なくとも岸田政権にしてみれば、無理をしてまで万博を促進する理由はありません。結局、だれも何もしないまま、時間ばかりが過ぎているわけです。
見事、逃げ切れ。しがらみ知らずの維新府政
で、どうする吉村。案外答えは簡単です。もうここまで来たら、成功の可能性は万一にもないのですから。大怪我をしないうちに万博から全力で逃げることです。

「小池東京都知事に学ぶべきだ」と言う議論もありますが、都知事に学ぶなら、やっぱり故青島幸男第13代東京都知事でしょう。都知事選挙中の公約、「世界都市博(1996)中止」を当選直後に実行したことが、いまだに語り継がれています。
今、第21代大阪府知事がやるべきことはひとつ。「やめた」と叫ぶことです。理由を聞かれたら、「やめない理由を教えてくれ」と返せばいいでしょう。関係者一同、本音では逃げたいと思っているわけですから、国内外で中止への流れが出来ます。下手に開催にこだわるやつは確実にババを引きます。
流れを作るのは大変ですが、人気絶頂の吉村知事なら可能だと思います。その際、大事なのは、誘致したことをしっかり謝罪した上で、国や民間に極力迷惑をかけないことです。まだどこも大した出費をしていないのですから、大阪府市だけでその分は負担しましょう。そうすれば、誰も(右も左も財界も)文句は言えません。開催していれば押しつけられるはずの大赤字のことを考えれば、かなり傷は浅いはずですから、ナニワの有権者も維新を許して信頼関係がさらに深くなるでしょう。逃げるときに物惜しみをしてはいけません。ただ、走りに走って逃げるのです。
一段落したら、二度と万博も五輪も誘致しないという、「非博都市宣言(ひはくとしせんげん)」「閉輪都市宣言(へいわとしせんげん)」を出しましょう。何も迷うことはありません。
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