ジャニーズ記者会見へ、憂慮される「茶番」と「待った」をかける記者は誰か

問われる「マスメディアの沈黙」

今週は、ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川前社長(2019年に死去)による所属タレントへの性加害問題を巡り、事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」(座長:林真琴弁護士)による調査報告書が話題となった。

東京・六本木のジャニーズ事務所(編集部撮影)

8月29日に公表された報告書では前社長が20代の頃から晩年までの約60年に渡り、少なくとも20人以上に性加害を加えていた事実を認定。特別チームは再発防止策とともに藤島ジュリー景子社長の辞任を勧告に踏み込み、さらには週刊文春など一部を除く大半の「マスメディアの沈黙」も性加害を継続させるに至った経緯を指摘したことも話題になった。

次の焦点は、事務所が来週7日14時に開催する記者会見だ。1日までの時点では会見の出席者が明らかになっていないが、一部で辞任の意向を報じられたジュリー氏の去就が最初のポイントになる。

また仮にジュリー氏が退いた場合でも、後任の社長を含む経営体制がどうなるのか。報告書で事務所の全株式を保有していることが指摘されたジュリー氏が影響力を残すのかどうかも焦点になる。

危惧される記者会見の儀式化

しかし記者会見が単なる「禊ぎの儀式」と化す可能性も捨てきれない。民放局の報道事情に詳しいある大手ネットメディアの幹部はこう危惧する。

仮にジュリー氏が会見に出てきても泣き出したり、あるいは東山紀之氏のような著名な所属タレントが新社長として出直し宣言したりすると、そこだけが大きくクローズアップされ、報告書で指摘されたメディアの沈黙問題は深掘りされずに終わってしまうのではないか

3月の英BBC報道で性加害問題が注目されて以降の事務所やメディアの対応ぶりは、確かにこうした懸念を想起させてしまうだろう。ジュリー氏はこれまで記者会見を開かず、5月14日深夜に唐突に謝罪を動画をアップ。この日が新聞休刊日で、報道番組も少ない日曜夜の「間隙」をつくような対応に不誠実さを指摘する報道関係者は少なくなかった。

謝罪動画でのジュリー藤島社長(ジャニーズ事務所公式サイトより)

そのメディア側もテレビ局を中心に今回の報告書で“責任の一端”を指摘され、在京の全民放局のコーポレート部門が追い込まれるようにプレスリリースを掲出。「過去の報道に関するご指摘を真摯に受け止めております」(フジテレビ)、「指摘された事も踏まえ、いかなる性暴力も許されるものではない」(TBS社長室)などと見解を表明するに至ったが、あまり触れられたくもないのが本音だ。

一方、テレビ局と同様に事務所との距離の近さが指摘されてきたスポーツ紙はといえば、何事もなかったかのように後任人事の話題に終始。新社長候補として前出の東山氏や、ともに子会社社長を務める元TOKIOの城島茂氏、元V6の井ノ原快彦氏ら著名な関係者の名前をあげたり、事務所をすでに去った滝沢秀明氏や元SMAPのチーフマネージャー飯島三智氏らの動向を伝えるなどしている。

“期待”される反権力ジャーナリスト

記者会見はこのままただショーアップされ、本質的には“シャンシャン開催”されてしまうだけなのか。そこに待ったをかける記者として、前出のネットメディア幹部が“期待”をかけるのが、首相官邸の記者会見で噛み付くあの人たちの存在だ。

東京新聞の望月衣塑子記者と、彼女が出演する動画メディアを主宰する元朝日新聞記者の尾形聡彦氏が記者会見に参加すれば少しは面白くなるかもしれない。実際、報告書を公表した林座長らの記者会見で質問の一番槍を突き出したのも尾形氏で、いきなりメディアの責任を言い出した

望月衣塑子氏ツイッターより

反権力ジャーナリストの鏡としてネット右派に嫌悪される2人だが、まさに真実の追及へ“適材適所”になるのかもしれない。ただ一方で「尾形氏の質問が出た途端、各局の中継は打ち切られていた」(前出のネットメディア幹部)との指摘も。

果たして記者会見は茶番劇に終わるのか、それとも望月氏原作の映画「新聞記者」のような大立ち回りがあるのだろうか。

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(関連記事)新聞休刊日前夜の動画アップ…ジャニーズ事務所のあざと過ぎる「謝罪」

 

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