女性市議の発言順抽選「子連れ参加NG」、報道されないウラに何が?
【独自取材】愛知・豊橋市発「全国区」の騒動に- 女性市議が子連れを理由に発言順を決める抽選参加NG…騒動が全国区に
- フェミニズム的な論調で議会バッシング。議長がSNSで反論した中身
- 「実は女性市議の夫は…」地元関係者が指摘する報道されない裏事情とは
先週後半、愛知県豊橋市議会で、女性市議が子どもを連れていたために発言順を決める抽選に参加できず、一般質問の機会を失ったという報道がネット上で注目を集めた。
女性市議は「子どもの発熱でやむを得ず連れてきた」と理由を説明。地元紙・中日新聞が1日1面で特報し、NHKや朝日新聞なども追随して「全国区」の話題になった。地方議会で時折勃発し、朝日などが好物な“フェミニズム”的葛藤劇がまた始まったかと思いきや、その後の当事者の発信などから「報道されない」複雑な事情が透けて見える。
フェミ論調で議会バッシング
抽選に参加できなかったのは4月に初当選したばかりの諸井菜々子市議(37)=無所属=。長女(2)が前日に発熱したため、保育園に預けることができず、子どもを連れたまま市議会へ。報道によると、近藤喜典議長(43)=自民=に対し「子供を伴って手短に抽選をさせてもらえないか」と申し入れたが、認められなかった。
議会内で取り決めたルールでは、議員本人の病気や事故が原因で議長が許可した場合は代理出席が認められているが、議会事務局の報告書によると、今回は本人ではなく子どもが原因とする場合のルールがないことや、抽選のわずか15分前の出来事で対応できないことから、諸井氏の抽選会への参加は認められなかった。
近藤氏は中日新聞の大々的な報道を受けて緊急記者会見。コロナ感染の疑いなどを理由に挙げ、ネット上では理解を示す意見も散見されたが、報道の全体的なトーンとしては議会側の対応をバッシングする方向になりがちだ。
朝日新聞デジタルでは、公式コメンテーターの女性社会学者が「子どもが発熱して仕事との両立に悩んでいる議員にこそ、議会で発言をして欲しい」と意見を述べ、日本の女性の政治参画のジェンダーギャップ指数が過去最低に低迷していることなどを強調した。
「偏向報道」議長に同情も
ところがこの報道は、当事者のSNSでの発信を見ていくと「続き」がある。記者会見で「釈明」したとされた近藤氏だが、「X」(旧ツイッター)で「釈明はしてません。決定に至った経緯を説明はしましたが」と報道内容に不満の様子だ。
近藤氏は諸井氏の参加を認めなかった経緯についても事務局の文書とともに詳細な説明で報道に“反論”
- 感染症も含めて、39度をこえる子どもを、まず連れて登庁することを認めることは出来ない
- 招集意思はあったが、15分前では議会運営委員会の開催は物理的不可能
- 8時30分に仮に電話があった場合、招集、その中での協議での抽選会代理等の可能性はゼロではなかった点を共有
- パートナー等の協力依頼の確認
の4点を理由に挙げた。1の新型コロナの可能性については「X」では一般のネット民から「まだまだコロナが怖い時。常識的に考えてダメだとわからないのかなー」「偏向報道ですね。ちゃんとなんで断られたのか書かないとまるで議長が差別をしてるみたいになっちゃうよ?」などの同情が近藤氏に寄せられたが、もう一つポイントになるのが4のパートナーら家族の協力が得られたのかどうかだ。
夫の半休「言い出せなかった」
「報道されていないが、実は諸井氏の夫は豊橋市民病院の医師」。こう指摘するのは市議会の事情に詳しい地元関係者だ。「市民病院の医師には半休制度がある。夫に半休を取るように言えたはずなのにしていなかった」と語る。
実際、Xで諸井氏は、一般のネット民から「ダンナ様は、育児休業で、お仕事休めなかったのでしょうか」と尋ねられたのに対して「今となれば夫に半休を依頼してみても良かったと思います 議会が長引いてお迎えに間に合わない時のために、翌週2回ほど半休を取ってもらっているので、なんとなく遠慮して言い出せませんでした」と打ち明けている。
諸井氏は抽選会の前、議会側から別室で子ども1人で待機するよう提案されたのに対し、「体調不良の子を知らない場所に1人で残すことはできない」とも述べていたが、これについても「別室と言ってもガラスパーテーションで議場から見える位置にあり、職員が短時間見ていると申し出たのに断った」(関係者)という話が水面下で広がっている。
市長選絡みの政局?
諸井氏のネット上の“釈明”を見た前述の関係者は「『夫には言い出しにくい』『知らない人に預けるのは不安』という感情最優先で突き進んでしまっているのではないか」と指摘。諸井氏の夫が市民病院の医師であるといった個人情報を議長が記者会見でつまびらかに言えるはずもなく、地元では「内情」を知る他の議員や市民らと、報道機関から“同情”的に取り上げられる諸井氏との間で温度差が広がりつつあるようだ。
今回の騒動のウラには、来年11月に現職市長の浅井由崇氏が任期満了を迎える次期市長選絡みの「政局」との見方も浮上している。というのも地元政界では、報道で矢面に立った近藤氏が自民が擁立する有力候補の1人と目されているからだ。
諸井氏はXで「私から中日新聞さんに話を持ちかけたわけではない」と発信しているものの、誰がリークしたのか憶測が渦巻いている。万一「政局」であれば、報道について多面的に見ていくことが求められそうだ。
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