ジャニーズNGリスト騒動:「偽善」の望月衣塑子、「喝破」の橋下徹

記者会見「幻想」こそ茶番だ
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役
  • ジャニーズ記者会見「NGリスト」騒動の語られざる本質とは?
  • 東山社長の辞任を求める望月氏、しかし規制強化の経緯を振り返ると…
  • 記者会見を巡る言説の「偽善」、橋下氏が喝破した「リアル」とは

ジャニーズ事務所が故ジャニー喜多川元副社長の性加害を巡る問題で2日に開いた記者会見の質疑の際に、会見を運営したコンサル会社が特定の取材者に対して「指名候補」と「NGリスト」を作成していたことが発覚して騒動になっている。

事務所側とコンサル側との言い分が微妙に食い違うなど真相が不明な点も多いが、メディア関係者やSNSの議論は、建前論や偽善的な話が多く実態と本質を無視した流れになっていて、筆者は失笑を禁じ得ない。

東京・六本木のジャニーズ事務所。社名の看板は5日に撤去された(編集部撮影)

取材規制強化の背景は?

まず確かなことは記者会見の運営が9月7日の前回と10月2日の今回で変わったことだ。前回は取材者の質問が「1人1問」に設定されたものの、4時間を超える超ロングランの異例だった。出席者もジャニーズの取材に日頃出入りしている大手メディアだけでなく、独立系のネットメディア(≒YouTuber)にも門戸を開いた。つまり、ある程度、疑問を出し尽くそうとオープンな姿勢だった。

ところが今回は「1人1問」から「1社1問」に制限が厳しくなった。結果として時間も半分の2時間に収まった。運営方針が変更されたのは前回の「教訓」を踏まえたのは明らかだ。その「教訓」が何かといえば、前回の「最低限」のルールすら踏み越え、「常識」的な範囲を超え「暴走」する取材者がいたからにほかなるまい。

そして、そのシンボリックな存在と言えるのが、東京新聞記者でありながら、社外の独立系動画メディアで“キャスター”の副業にいそしむ望月衣塑子氏だ。振り返れば、望月記者は1回目の会見で、東山紀之社長個人の疑惑を追及。2005年に出版されたジャニーズ元関係者の暴露本の内容を引き合いに「ご自身の陰部を晒し『俺のソーセージを食え』って見出し取られてますよね?」などと発言。

望月衣塑子氏ツイッターより

さらに「東山さん自身がデビューする前にジャニーさんからも加害的なものを他のメンバー含め受けたという記憶はあるのかないのか」などと、公の場で性被害の有無を認めさせようとして物議を醸した。特に後者は、古市憲寿氏が「正義の暴走」と批判するように、いわゆるアウティングの強要に当たる。

そして、実際にこうした望月記者の言動が2回目の取材規制強化の「名目」になった。リストを作成したコンサル会社「FTIコンサルティング」の担当者が読売新聞の取材に対し、「長時間にわたり自説を述べたり、セカンドレイプ(二次被害)と受け止められかねない質問をしたりする記者がいることへの懸念を同事務所と共有」(読売)していたことを明らかにしている。

リストの存在が発覚してから望月記者はXで「大変不愉快です。やはり茶番・八百長会見でした」と猛反発した上で、「このまま新会社での再出発など、到底絶対許されません。東山氏と井ノ原氏の辞任を強く求めます」と要求した。そういうとこやで、あんた。ジャニーズ側の会見運営を批判するのは当然だが、事実がまだ不明瞭な段階で取材先の人事にまで持論をぶつけるあたり、取材者の矩(のり)をこえてお門違いもはなはだしい。何様のつもりか。(そもそも東京新聞の人事管理はどうなってるんだ)

ジャニーズ側の“過剰防衛”

リスト作りについて、事務所側が主導したのか、コンサル会社が主導したのか、真相が不明な点は残るが、どちらにせよ、記者会見の運営側としては、2回目で警戒してリスク管理をするのは当たり前だ。

ジャニーズ側の対応にメディアが感情的に反発が強まったところで、「現実論」で流れに棹(さお)をさしたのが橋下徹氏だ。橋下氏は5日、出演した読売テレビ系「ミヤネ屋」で「弁護士として株主総会とかにも関与してますけど、(要注意人物の)リストを作るのは当たり前」「危機管理上作らないと対応できない」などと発言した

政治家時代の会見対応を振り返る橋下氏(10/5日放送「ミヤネ屋」より)

念のためだが、橋下氏は質問NGを是認しているのではなく、「演説をずっとやる記者」を例に挙げ、政治家時代の経験を振り返り、「その人に当ててしまったら2時間も3時間もずっと続いてしまう。僕は必ず質問には答えていたので、いちばん最後に回すとか」などの対応をしていたと述懐。また、誹謗中傷や人格攻撃をする人も要注意リストに入れていたことを明らかにした。

今回の事態を日本国の防衛に例えてみればいい。記者会見をする側は基本的に受け身だ。つまり“専守防衛”を余儀なくされる。だからこそ“急迫不正の侵害”に対し、事務所が“自衛権”を抑制的に行使するという意味で、橋下氏が言うような対応は是認されよう。

もちろんメディアを敵視してばかりでは建設的な対応にはならない。社会の関心に誠実に向き合わなければ組織の存続はおぼつかない。だからその意味では、今回の「指名NG」は“過剰防衛”だ。尖閣諸島を占拠する敵国の特殊部隊を掃討するのにクラスター爆弾を大量投下し、島の生態系を丸ごと破壊するようなものだ。この騒動で事務所は再び瀬戸際に追い込まれつつある。

記者会見を巡る「幻想」

そうした“過剰防衛”の結果として事務所は本当に怖い取材者を「NGリスト」に入れることになっている。ここまでYahoo!ニュース個人などでジャニーズ問題をロジカルかつリアルに追及してきた松谷創一郎氏がまさにそうだ。

見方はさまざまあろうが、芸能界の取材を日頃していない望月氏が永田町の時と同じく、専門外のフィールドでムダに暴れたおかげで、第一人者が鋭く厳しい質問をする機会を封じようとする際の「ダシ」に使われたわけだ。

最後に。そもそも今回の事態での議論では、皆が記者会見に「幻想」を持ち過ぎていることにこそ茶番を感じる。

「やらせ」も「八百長」もあってはならないが、まるで法廷のように、真相が全て明らかになるかのような舞台装置のようにみなしてメディア関係者が騒ぎ立てることは「偽善」でないのか。望月氏はその筆頭だ。

事態を動かし、世間を震撼させるスクープは記者会見で生まれないことは、まともな記者ならわかっているはずだ。『新聞記者』という仰々しいタイトルの映画の原作者でもある望月氏が、記者会見で過剰に暴れ続ける本当の目的はなんなのだろうか。

 
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役

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