WSJ「イランがハマスの攻撃計画に関与」報道へ疑問広がる

世紀のスクープか大誤報か

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、イランがハマスのイスラエル攻撃計画に関与していたと特報した内容について、中東の専門家や他メディアの記者たちから疑問の声が上がり始めている。

BornaMir /iStock

WSJは8日(日本時間9日)、ハマス、ヒズボラの幹部の話としてイランの治安当局者が奇襲作戦の立案に関わり、レバノンの首都ベイルートで2日に開かれた会合でイラン側が攻撃を承認したなどと報じた。

しかし、イラン国連代表部9日の声明文で、パレスチナとの「揺るぎない連帯」を表明する一方で「イランはパレスチナの対応に関与していないことに注意することが重要だ」とも述べ、世界的に広がる“黒幕”説に釘を刺した。

また、米国家安全保障会議(NSC)ジョン・カービー連絡広報調整官は同日、報道番組で、イランが共謀しているとの見立てを示したものの、「具体的な証拠は持ち合わせていない」と述べた。

米新興メディア「アクシオス」の国際政治担当、バラク・ラビド記者はWSJの報道直後にいち早く反応、Xにヘブライ語で投稿し「ハマスの誰かがWSJに何かを言ったからといって、それが真実であるとは限らない」と否定的な見方を示した。

さらに英エコノミストの中東特派員、グレッグ・カールストローム記者は、イランが奇襲計画に協力したとするハマスとヒズボラの主張について「これまでのところ実証されていない物語を裏付けるに過ぎない」と厳しく論じた。

中東戦略研究所村上拓哉代表もこの投稿を引用しながら「WSJの『今回の攻撃の背景にイランがいる』という主張の報道には、多くの中東専門家から疑問が呈されている」と述べるなど、ほぼ全面的に同意。イラン外相が会合に参加したとする報道内容への疑問や、「アラブ諸国がハマースに連帯して軍事介入に踏み切る事態に発展することは考え難い」との展望を示した。

中東の専門家や、詳しいジャーナリストらが続々と疑問符をつけ始めたWSJの報道。世界的スクープが一転して世紀の大誤報になるのか。ロシアとウクライナの戦争でも真偽が確かでない情報や報道が乱れ飛んだ経緯からしても、情報の錯綜には留意しておきたいところだ。

 

関連記事

編集部おすすめ

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

人気コメント記事ランキング

  • 週間
  • 月間

過去の記事