実子連れ去り:マクロン大統領が直談判も、日本は政権とメディアが淡白

「子の利益最優先」謳うも...
2021年07月25日 06:01
  • 五輪で来日したマクロン大統領が菅首相の会談で「実子連れ去り」問題を討議
  • 会談後の共同声明では他の諸問題に比べて、当該事案はわずか33文字の記載のみ
  • 日本メディアも大半がスルー。一方、フランス側はここまで報道も関心が高い

東京オリンピック開催に合わせた来日したフランスのマクロン大統領が24日、東京・赤坂の迎賓館で菅首相と会談した。この会談に際し、注目されていたのが、在日フランス人男性が離婚係争中の日本人妻に実子を連れ去られたと訴えている案件で、マクロン氏が日本側に善処するように求める方針だったことだ。この男性は、野村証券に最近まで勤めていたヴィンセント・フィショ氏。国立競技場近くのJR千駄ヶ谷駅まで2週間あまりハンガーストライキをしており、フランス政府の関係者も現場で男性に面会している。

迎賓館で会談した日仏両首脳(24日、官邸サイト)

首脳会談後に外務省はホームページで共同声明の日本語訳文を公開。「1. 特別なパートナーシップ」「2.オリンピック・パラリンピック」「3. 感染症・ワクチン」「4. インド太平洋」「5. 開発金融」「6. 気候変動・環境・生物多様性」「7. 経済」と記述がきて最後に盛り込まれた「8. 領事協力」に、以下のように盛り込まれた。

両国は、子の利益を最優先として、対話を強化することにコミットする。

この一文だけをみるとフランス側の訴えを日本側が考慮しているように見えるが、句読点を入れてもわずか33文字の記載のみ。他は「3. 感染症・ワクチン」の574文字、「7. 経済」の723文字などと比べても“熱量”の相違は明白な状態だ。記者クラブに加盟する日本の大手メディアも何かに規制されたかのように口が重い。この問題を大手紙で珍しく事前に報じていた日経新聞は「フランスなどは離婚後も父母両方が親権を持つ『共同親権』が一般的になっている一方、日本は認めていない。首相はマクロン氏に日本の制度を説明し、理解を求めた」とやりとりの概要のみを記載しているが、25日未明時点で読売新聞や朝日新聞など大半のメディアは記載が見当たらず、「なかった」ことになっている。

これに対し、フランス側はメディアも含めて関心が高い。AFP通信は日本語サイトの速報では概要の経緯にとどまったが、フランス語版では、日仏首脳会談の記事のおよそ半分が、フィショ氏の問題について記述を割いており、菅首相がマクロン氏に対して「対話を再開する」などと述べたことが紹介されている。

それでも前述したように、他の外交問題に比べても取り組みへの落差が目立っており、メディアも含めた日本側の反応が総じて「淡白」であるのは確かで、「人権国家」フランスを含めたEUから見たときにどのように映るのか気がかりなところだ。というのも、すでに昨年7月、EU議会は、日本国籍とEU加盟国の国籍を持つ子どもを日本人の親が連れ去ることを禁止するよう求める決議をしている。EU籍の人と日本人の婚姻関係が破綻した際に、EU圏内から日本人の片親が実家のある日本に連れ去る事案が多発していたためだ。マクロン大統領は安倍首相の時代から日本側に善処するように求めてきたが、大きな動きはなかった。菅政権になり、上川陽子法相の下で法制審議会で親権制度のあり方を見直すかどうかの議論を始めたが、まだ審議中の段階だ。

とはいえ、日本側もSNSでの関心を反映するように、週刊誌やネットメディアでは露出も増えてきた。朝日新聞系のウェブ論座がフィショ氏のレポートを掲載後に削除される事件があった際には、この問題が日本の大手メディアで「タブー」扱いされている壁を感じさせたが、日仏首脳会談当日朝には、ビジネス系のネットメディアで最多の2億超のページビュー数を誇る東洋経済オンラインが仏フィガロ東京特派員の長文レポート記事を掲載。大手週刊誌、週刊新潮系のデイリー新潮もここまでの経緯を取り上げる記事を配信するなど変化の兆しもある。

 

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