20時になっても居酒屋で五輪観戦?海外メディアによる切り取りの怖さ
日本のイメージダウンが生まれる構造- ワシントンポスト記者の投稿「20時になっても東京の居酒屋で五輪観戦」が波紋
- 多くの東京都民も夜間は外食はせず、自宅に大人しく帰っている実態と乖離
- 日本のコロナ無策の言い訳「気の緩み」が海外にそのまま伝播。広報戦略の問題
ワシントンポストのMichelle Ye Hee Lee東京支局長(日本・朝鮮担当)が7月31日に下記の内容をTwitterに投稿した。
Leaving the restaurant at 8pm per guidelines under Tokyo state of emergency, and yet … still a full house. Some people got seated minutes ago. Most people here are watching the Japan-NZ men’s Olympic soccer quarterfinals. pic.twitter.com/yqMKfmxn0A
— Michelle Ye Hee Lee (@myhlee) July 31, 2021
Tweetは実態を反映しているか?
端的に言うと、緊急事態宣言が出ているにも関わらず、20時になっても東京の居酒屋でオリンピックを観戦している人がこんなにいますよ、というもの。このTweetは1万以上リツイートされており、1万以上の「いいね」がついている状態だ。
もちろんLee東京支局長がTweetしたように、極めて一部の飲食店が緊急事態宣言下でも20時以降営業していることはあるだろう。感染防止という観点から同措置が妥当か否かの議論は別として、店舗も国民も長引く緊急事態宣言やまん延防止措置の中で体力・気力が限界であることも否定しない。
ただし、東京都在住者として明確に述べさせてもらうが、東京の飲食店の大半は緊急事態宣言の内容を遵守し、飲食店経営者は塗炭の苦しみの中で過ごしている。そして、多くの東京都民も夜間は外食はせず、自宅に大人しく帰っている。東京都民であれば大半の人は自分の意見に同意するものと思う。なぜなら、それが実態であり、Lee東京支局長がTweetしたような店舗は極めて稀であること誰でも知っているからだ。
そして、現在のデルタ株を中心としたコロナ禍の蔓延理由は、その強い感染力にあることは明らかであり、国民の「気の緩み」だけの問題ではないことは明らかだ。NHKが31日に報じた内容では、中央区保健所の担当者が「外出していない、職場との行き来、スーパー・コンビニしか行っていない人が過半数」と証言している。

一方、日経新聞は実は病床が大量に余っており、緊急事態宣言の前提となる重症者向け病床などの医療サービスの供給量がまだ伸ばせる余地があることを示唆している。
つまり、本当の問題は政府や東京都が主張する国民の「気の緩み」だけではない。むしろ、大半の飲食店は緊急事態宣言に苦しいながらも協力している中、コロナの変異で感染力が増大してしまっているに関わらず、1年以上も既得権に雁字搦めで医療体制整備ができていないことにこそ本質がある。一部の左派系メディアは「オリンピック」が気の緩みに繋がっていると主張しているが、本筋から外れたくだらない主張に過ぎない。
「気の緩み」国内論調が海外に伝播
しかし、本稿が今回取り上げたいことは、コロナ対策自体の問題ではなく、日本の対外広報戦略上の問題についてである。
政府、東京都、日本メディアが、無策の言い訳として、国民の「気の緩み」ということを繰り返し主張していることで、外国メディアの日本に対する批判的な論調としてそのまま伝播しているように思えて仕方がない。(オリンピック開催以前、海外メディアはオリンピックにほとんど触れることはなかったし、たまに取り上げると日本国内の論調そのままのものであることは多かったように思う。)

そのような一例として興味がある人は、前述のワシントンポストのMichelle Ye Hee Lee記者が日本についてどのような論調で書いているのかを下記のリンクから読んでみてほしい。(今回それがどのような論調であるかはあえて述べない。)
https://www.washingtonpost.com/people/michelle-ye-hee-lee/
どれか1つの記事で良いやという人は、彼女のTweetアカウントのトップに固定されているこの記事をどうぞ。どんな論調かは直ぐに分かるので。
In shadow of Japan’s Fukushima disaster, the Olympic message of ‘recovery’ rings hollow
当然であるが、外国メディアが日本政府や日本社会に対して鋭い論調で切り込むことは大いに評価するし是非ともやってほしい。ただし、政府、自治体、日本メディアが誤った主張を垂れ流した場合でも、外国メディアがそれを信用して自国に伝えてしまうことにも留意が必要だ。
今回のLee記者のTweetは、悪意の有無にはここでは触れない。しかし、ゴーストタウン化した東京の夜の惨状を無視して、わざわざ探さないと見つからない密な居酒屋を取り上げた彼女のTweetは、東京の実態を正確に反映しておらず、徒に日本のイメージを下げただけのものだと思われる。ただし、それを日本政府が自ら言っているのだから否定のしようがない。日本人として好ましい事例とは言えないだろう。
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