「今の時代、のんびりPDCAやってる場合じゃない」JFRカード二之部守社長
わたしの逆説:異端のビジネスリーダーを直撃 #1J.フロントリテイリンググループで「大丸松坂屋カード」を発行するJFRカードの二之部守社長は、アメリカン・エキスプレスやVISAなど、クレジットカード業界でのキャリアを持つ。2018年にJ.フロントリテイリンググループのJFRカードの社長として迎え入れられ、今は老舗の百貨店が従来から行ってきた取り組みを、ゼロベースで見直す改革を行っている。
大丸は300年、松坂屋は400年以上の歴史を持つ“超伝統企業”だが、こうした老舗で続いてきたことを変革することは、至難の為せる技のようにもおもえる。二之部氏は一体どのような考え方で、改革をおこなっているのだろうか--。
想定外の時代、“朝令暮改”の必要
オリンピックもそうですが、人は一度計画をたてると状況が変わってもやらなきゃいけない、と思いがちです。それなりに多額の投資をしたり、お金をかけていると、なおさらです。あとで「意味が無い」と気づいたとしても、「せっかく始めたのだから、やらなければいけない」、「せっかく買っちゃったから売らなければ…」、というふうに思いがちですね。そういうのを見直すことを、ここ半年のあいだ、やっています。意味が無いと気づいた時にやめられるか。それは、経営者の決断力によるところが大きいと思うのです。
“PDCAサイクル”という経営手法がありますが、今の時代、コロナのように何が起こるかわからない事が起こると、のんびり計画、実行、検証などとPDCAをやっている場合ではない、と思うことがあります。
もちろん、経営という観点から中長期的にはPDCAをやらなければならない場合はあります。でも、突然に想定外のことが起こる今は、経営者は“朝令暮改”のようにスピーディーな意思決定をすることを意識的に行っていく必要があると思うのです。
当社では、オリンピックがあるという前提で1年、いやそれ以上の期間、準備をしてきました。オリンピックのキャンペーンを計画したり、オリンピックグッズを仕入れたりしていたのです。これを私はさっさと中止しようと言ったのです。
弊社は百貨店と一緒にやっているので、「緊急事態宣言でしばらく店を閉めます」となった時に、「どうしよう計画が実行できない」などとフラフラしてもどうしようもない。事前に計画していたプランにこだわらず、目の前の事態に対応することが一番大事なのです。

何をやめて、何を絶対やるか見極め
いま行っているサービスをやめる。こうしたことは、伝統ある百貨店のカルチャーの中では、やはり抵抗があることです。とはいえ、サービスは時間の経過とともに見直さないとどんどん増えていくものです。これだけは絶対やる、やらないなどの見極め、リソースをどこに集中すべきかが、とても大切になってくるのです。
具体的には、従来から続けていた百貨店内のクレジットカウンターでの現金での入金の取扱いを、今年7月末でやめました。現金を受け取るということは感染症の観点からも良くないとの声もありながら、これまで続いていたのは、百貨店だとお客さんが来てくれるのだから「来店増は良し」とした理由があったからです。
「なんでずっとやって来たのか?」と聞いてみると、「なぜなら、ずっとやって来たからです」というようなことが歴史ある百貨店ではありがちです。逆に「景表法(景品表示法)があるから出来ない」といって頑なにやってこなかったことが、見方を変えて別の方法でトライしてみたところできた、なんてこともありました。

実は、こうした百貨店がやっている様々な取り組みというのは総じて、お客様のご要望から始まったものがほとんどなのです。従来からのサービスは「お客様のニーズを満たしたい」という、非常にまっとうな考え方からきているものばかりなのです。ただ、それがどのくらい重要なのかの見極めが大切になってきます。
「お客様がこう仰っているから、こういう仕組みを作りましょう」というふうに、百貨店のサービスは、顧客の需要をもとに作られていくものなのです。でも「その声は、実際にいくらあるのか?何千件くらいあるのか」などと問うてみると、実は1件しかなかったりする。こうした過度の顧客志向というのは、日本独特のカルチャーでしょう。
でも最近は変わってきました。社会的に環境負荷へ対応しようという動きもあって、食品の廃棄も無くそうとする方向に向かっていますし、包装の仕方も変わりました。あえて包装紙をきれいにして欲しい場合は有料になりました。お客様も何のサービスに単価をはらっているのかが、見える時代になったと思います。
ネット時代に百貨店の付加価値を
「大丸松坂屋オンラインショッピング」のように、今では百貨店の買い物もネットでも出来るようになりました。今の時代、百貨店の店舗に行かなければ買えないというものは減ってきています。その中でどう百貨店の付加価値を付けていくか。知人がこの前、百貨店に数珠を買いに行ったら「店員さんから数珠にまつわることをたくさん教えてもらえた」と喜んでいました。こうしたことはオンライン購入ではわからないものです。そういうところに、お客さんが価値を見出して、対価を払っているわけです。そういう付加価値の付け方に、百貨店は力を入れています。
今年1月には、大丸松坂屋カードのリニューアルを行いました。カード事業に関しては、大丸、松坂屋、パルコ、GINZA6などを有するJ.フロント リテイリンググループの強みを生かしています。JFRグループには、長い顧客サービスの中で培った600万口座を超す優良なID顧客数と1兆円を超える取扱高などの強みがあります。
さらに、JFRグループは出店地域を集客力ある都市の特定エリアに戦略的に集中しています。東京では上野、東京、銀座。名古屋では栄地区、大阪では心斎橋。それから、京都、神戸などにもありますが、出店地域を各都市の特定のエリアに集中させているのです。
今年1月にリニューアルした「大丸松坂屋カード」は、大丸・松坂屋のポイントとQIRA[キラ]ポイントの2つのポイントが貯まるカードです。百貨店と周辺地域の商業施設をつなぐ役割やこうした地域に出店している店舗でお得なカードにしていきたいです。大丸、松坂屋、パルコ、GINZA6などこれほど多様な出店形態があるのは、他にはありません。JFRグループのどの店舗のエリアにいっても周辺地域の店舗でQIRAポイントを使うことができる、各都市の地域で働いている人、住んでいる人、その街に遊びに来る人にとって、便利性の高いカードとして存在意義を発揮していきたいと思います。

昨年11月には保険・金融商品のコンサルティングと紹介を行う「QIRAフィナンシャルラウンジ」を開設しました。働く女性や子育て世代、富裕層の方などが気軽にご相談出来る場として機能していけばいいと思っています。今後は、オンラインでの相談も増やしていこうと思っています。リアルで相談したければ店舗に行くことも出来る、DX化もデジタルとリアルの良さを双方向で活用出来るようにしていきたいですね。時代の変化を受けながら、老舗企業のあり方も新しいやり方を柔軟に取り入れながら今後も変わっていくことになると思います。
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