河野氏「増税さける社会保障見直し」現役世代の負担軽減に期待

コロナ後の持続可能な医療制度追求へ
2021年09月17日 06:00
歯学博士/医療行政アナリスト
  • 「増税をさけるため」医療制度改革を打ち出す河野氏の政策を検証
  • 「増税をさける」以上は歳出削減が必要。コロナで医療費の浪費が明示
  • 医療費抑制策が機能してない日本。台湾や夕張が示唆する方向性とは

自民党総裁選候補である河野太郎氏は、「剛腕の改革派」として知られています。行政改革担当相として縦割り110番なる目安箱を設け、今年春以降はワクチン担当大臣として奔走。ブログやツイッターでのコミュニケーションにも積極的で、新型コロナ対策を見守る医療関係者も注視。言葉足らず・無表情と批判の続いた菅氏とは正反対の開かれた政治が期待されます。

その河野太郎氏が11日、テレビ番組で「厚労省分割再編」に触れました。氏はかねてよりブログ上「主張・政策」にて「増税をさけるために」と題し社会保障、とりわけ医療制度改革に前向きな姿勢を見せています。

総裁選に出馬会見する河野氏(10日、写真:AFP/アフロ)

増税回避なら歳出削減あるのみ

例えばジェネリック薬品への切り替えで1.6兆円、高額医療費支払上限を年齢ではなく所得に応じたものにすることで40億円の支出削減ができるとしており、「負担のない給付はあり得ない」「持続可能な社会保障をどうやってつくっていったらよいか」と結んでいます。

これまで医療費は高齢化による増加だけではなく、医師会のロビイングなどにより財務省のコントロールを外れて上昇。結果として社会保険料は平成30年間で倍に膨れ上がり、国民の自由な経済活動は大いに損ねられています

(参考リンク)

その結果、税と社会保障の合計である国民負担率は46.1%。ここに財政赤字分を加えると実に国民の所得の60%に相当する歳出で国家運営がされています。不足分を国債発行で賄うにも対外的な円の信認維持という制約があるため、増税か歳出削減のどちらかを行いプライマリーバランスの改善に努める姿勢が問われることになります。

河野太郎氏の言う通り「増税をさける」以上は歳出削減が必要で、その中でも最大の支出分野である医療と年金の改革は避けて通れないテーマです。

コロナで可視化、医療の「浪費」

この中で医療費窓口負担は菅義偉首相によって一部2割負担への移行が進み、約1000億円の医療費削減となりました。医療費窓口負担というのは「割引価格でどれだけ気軽に医療を受けられるか」に関連していると言われ、早期発見早期治療の初動に関係しています。

一方で窓口3割負担でも入院・手術となれば払いきれない医療費負担に。この場合に自己破産の心配なく医療を受けられるのは前述した「高額医療費支払制度」があるからで、国民の生存権財産権を守るセーフティネットとしてはこちらのほうが本質的です。

むしろ無料もしくは1割と窓口負担が極端に低い場合、余分な受診や処方の温床となり医療の非効率を生んでいるのは周知の事実かと思います。

例えば薬局で購入するよりも病院に受診したほうが風邪薬や処方薬が安く手に入るならばセルフメディケーションは進まないでしょうし、入院していることで安価に介護や独居生活の負担が減らせるなら退院拒否につながります。新型コロナウイルス感染拡大では、このような医療リソースの浪費が可視化されました。

(参考リンク)後期高齢者の医療費負担はどう変わるのか-難航した政府・与党の議論、曲折の末に決着  ― ニッセイ基礎研究所

台湾に学ぶ医療費抑制

医療費削減というと不安を感じる方も多いと思いますが、例えば世界から日本よりも優れた高い医療水準を持つと認められている台湾では医療費対GDP比は5.8%であり、日本の10.9%と比較すると約半分。

台湾もかつては日本同様医療費高騰に苦しんだものの、2000年代に大胆な是正に取り組んできました。一例として日本のように診療報酬1点=10円と固定ではなく、国の総医療費予算や施設毎での患者数・治療成績によって1点あたりの報酬額が変化します。

このような明確な医療費抑制策を実施していないのは、先進国ではもはや日本だけです。

また2006年に財政破綻した夕張市では171床の市立総合病院が閉鎖し、19床の市立診療所と3人の開業医のみへと医療体制が大幅に縮小。これを受けて訪問診療を強化した結果、介護費が増加したものの診療費が減少しトータルの医療費では減少したのに関わらず、死亡率は横ばいでした

在宅や施設での看取りが多くなる中でターミナルケア、最期の迎え方について本人だけでなく家族などと意見交換する機会を早い段階からもつことができ、本人が望まない延命処置や救急搬送・処方・入院が少なくなったためなどと分析されています。

(参考リンク)

防衛相時代、自衛隊札幌病院を視察する河野氏(2019年9月、防衛省・自衛隊ツイッターより)

だれもがやり方を変えるのには抵抗があり、それまでのスタイルを維持したいと考えています。それは医療を受ける側も、医療従事者も同じです。しかし新型コロナ感染拡大が長期化し、日本経済に甚大なダメージが及ぶ中、いやがおうにも医療も将来にわたって維持可能な制度へと変化していかなければなりません。

河野太郎氏は10日の出馬会見で、これまで診療報酬請求の電子化でテレワークが進んだことや、新型コロナワクチン接種に関して「箸の上げ下げまで指示する厚労省を押し倒して」「地方の創意工夫にお任せする」などと改革実行能力への自信を語りました。

遠隔医療や往診といった受診方法の変化や、年齢ではなく所得による公平医療費総額抑制に関する議論が、新しいリーダーシップの下で進むことを期待しています。

(参考リンク)5類へ見直し検討の新型コロナ。オンライン診療は医療を変えるか – SAKISIRU(サキシル)

歯学博士/医療行政アナリスト

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