5類へ見直し検討の新型コロナ。オンライン診療は医療を変えるか
カギ握る「受診勧奨」の規制改革- 新型コロナの5類感染症への引き下げなど医療体制の見直しが話題に
- 感染拡大の中、政府がオンライン診療の制度化・恒久化を閣議決定
- それでも課題あり。今後のオンライン診療の利便性に関わるポイントは?
オリンピックが終わると同時に、新型コロナウィルス感染症医療体制の見直しがにわかに議論されるようになりました。8月4日には重傷者・重症化リスク者を除く発症者の入院基準の引き上げが、9日には新型インフルエンザ等感染症から5類感染症への事実上引き下げが話題になっています。
これはフランス・ドイツにおけるPCR検査の有料化や、イギリスの日常生活制限措置の終了といった「脱コロナ」の国際世論と歩調をあわせたと見ることができます。
- 東京都 入院基準の見直し検討 “自宅療養基本”の政府方針受け ― NHK
- 新型コロナ厳格措置見直し 厚労省着手 感染症法の扱い緩和も ― 産経ニュース
- 仏・独でコロナ検査有料化へ ワクチン接種推進狙い ―テレビ朝日
- 英イングランドの感染対策ルール、ほぼ全廃へ 首相が表明 ― BBC

「5類移行」でも先読み困難
新型コロナを5類感染症とするならば、いままで対応のボトルネックとなっていた保健所対応や、隔離や高水準の感染防御は原則不要。医療機関の負担は大幅に軽減されます。
また病室も従来のインフルエンザと同レベルの面会制限や感染防止策へと緩和されることで、日本の主力である中小医療機関のリソースを活かし、圧倒的多数である軽症・中等度に関してより柔軟でスピーディーな対応ができることとなります。
しかし、これらの緩和策を行ったとしても、人工呼吸器とそれを扱える人材の総数は変わりません。
たしかにワクチン接種の効果か5月頃のピーク時と比べ、8月の重症者の割合は半減しましたが、同時に感染者数では倍増し重症者総数としては過去最大に。

これらを踏まえ5類感染症への移行に伴う行動制限緩和や、変異株の影響によってどうなるかは読めない部分でもあります。今後濃厚接触者の2週間の自宅待機や海外渡航などは「省令・通達による変更しやすい上乗せオプション」として臨機応変に対応されることになるでしょう。
ここで忘れてはならないのが、高齢者・有病者などの重症化リスクがある中、様々な理由でワクチンの接種をかかりつけ医と相談した上で見合わせた者も多いということです。そういった方々に対しこれらの緩和策は、日常的な通院での感染リスクが高まることを意味します。
オンライン診療の制度化・恒久化
これらの動きの中でもう一つ、新型コロナウィルスによって普及した医療体制の大きな変化があります。それが6月18日に閣議決定されたオンライン診療の制度化・恒久化で、以下の基本方針の変化が見受けられます。
- 「初診の原則対面」の記載がなくなった。
- オンライン初診は原則かかりつけ医が行う。
- かかりつけ医がいない健康な若年者などは「医師との事前のオンラインのやりとり」でオンライン初診が可能であるか判断する。

昨年4月より新型コロナ対策として、かかりつけ医によるオンライン診療・処方は初診を含めて大幅に認められるようになりました。現在実証実験の始まった処方薬のコンビニ受取サービスなどを始め、薬局を介した宅配サービスなども既に行われています。
このような技術革新によって、より利便性やアクセシビリティを高める形で医療リソースの適正配分につなげ、それが同時に新型コロナ蔓延防止策につながるとしたら、取り組む価値は十分あります。
しかし現状のオンライン診療は申請・予約・支払いがパッケージになっているアプリなどの開発はごく一部に限られており、利用しやすい制度になっていません。

そこで2021年秋に予定される検討会で主に議論される、「医師との事前のオンラインのやりとり」が、今後のオンライン診療の利便性に大きく関わってくることとなります。
医療履歴・基礎疾患・現状を把握しオンライン初診で十分か、医療機関受診が必要か判断する「初診 = 診療行為」の前段階と位置付けられているこのやりとりは、「受診勧奨」と定義されています。
受診勧奨は極めてニーズが高く、特に有限な時間の中で働く現役世代にとって「何科を受診すべきか」「それはどこにあるのか」「出勤してよいか」「自宅や職場でできる対応はないか」などはお金を払ってでもいますぐ欲しい情報ではないでしょうか。
受診勧奨で新たな市場を
受診勧奨の法的整備は長らく不十分で、医師・歯科医師が対価を求める業務として行うと医師法第20条違反「無診療診断」とされかねず、多くの医師・歯科医師が無償ボランティアとして行っているという現状。国営サービスとしても新型コロナ受診相談センターや、救急安心センター事業(#7119)などが無償で実施されていますが、これらは限定的な目的のものです。
オンライン診療によって新型コロナ蔓延防止・医療アクセシビリティ向上・医療リソース適正配分・医療費高騰の抑制を同時に狙うならば、診療アプリケーションの開発を民間に任せ、規制緩和によって受診勧奨で適正な対価を得られる新たな市場を開放するのが近道です。
例えば医師法による善管注意義務を負う医師側が目的に叶うアプリを選択肢、対価は保険外自費医療サービスとすることで一般受診を過度に抑制させず、収益は医療機関とアプリ運営会社で折半する。利便性の高いアプリは受診勧奨後のオンライン診療やその支払いでも活用されていくでしょう。
オンライン診療の未来を占う、今秋の「検討会」にご注目いただければと思います。
オンライン初診の制度化に向けた大枠固める、2021年秋の指針改定に向けて詳細をさらに詰める―オンライン診療指針見直し検討会 ― GemMed
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