岸田には敬意、安倍・菅は呼び捨て:北朝鮮が「日朝交渉」へ秋波を読み解く
朝日新聞などが読み違えた北の「真意」- 北朝鮮が「岸田政権を強く牽制」という朝日新聞などの報道は間違い
- 北が岸田政権を公式に批判する気はないどころか、交渉再開への秋波を送っている
- 駆け引きの常套句の裏で、日朝関係について慎重に扱ってほしい、との真意か
北朝鮮が、岸田文雄首相に「話し合う用意がある」との意向を送ってきた。ところが新聞テレビは、単なる研究員の個人的発言を「北朝鮮、拉致全て解決を主張」と報じ、岸田政権を非難したと伝えた。北朝鮮の真意を読み取る分析と解説がなければ、報道機関失格だ。
朝日新聞解説に大きな誤り
北朝鮮外務省は10月7日、ウェブサイトに日本研究所の李炳徳(リ・ビョンドク)研究員の発言を掲載した。この記事に、なぜ北朝鮮は一研究員の発言のみで、政府としての公式見解を発表しないのか、との疑問を抱かないようでは、取材記者とデスクの資格はない。研究員の発言はあくまで「個人の見解」であり、北朝鮮外務省は、日本が反発し非難した場合に「個人の見解」と逃げられるように準備したものだった。それほどに気を遣っていたのである。
実は、日本研究所の建物も部署も、誰も見たことはない。さらに、この発言は朝鮮中央通信や平壌放送などの宣伝媒体では、大きく報道されていない。その点も疑問に思うべきだろう。
ところが日本のメディアは「岸田政権を強く牽制」(参考:朝日新聞)などと解説した。これは大きな間違いである。
安倍・菅は呼び捨て、岸田には敬意示す
結論から言うと、北朝鮮は岸田政権を公式に批判する気は全く無い。それどころか、交渉再開への秋波を送っているとみていい。
北朝鮮外務省のウェブサイトにこっそり掲載し、日本政府にメッセージを伝えようとした事情を鑑みて記事を読むと、その真意がよくわかる。
記事の書き出しと終わりは、慎重で丁寧だ。
「岸田文雄首相は就任直後に、一部の国家首脳らと対話し拉致問題を取り上げたという」
「岸田文雄首相」とフルネームで書き、呼び捨てにせず、非難の表現はない。これは異例のことで、菅前首相と安倍元首相は、呼び捨てで非難された。総裁選のさなかにも、安倍・菅両氏を呼び捨てにしたうえで「永遠にわが人民の呪いと糾弾を受けて当然だ」とまで書いていた。岸田首相に対する態度は一変している。
さらには断定的に「不当にも、拉致を取り上げた」と表現せず、「取り上げたという」の表現で、自分たちが確認はしていない立場を正直に認め、非難めいた表現を避けた。珍しい表現である。
また北朝鮮側の立場も、分かりやすく説明した。
「拉致問題は2002年9月と2004年5月、日本首相の平壌訪問と、その後われわれの誠意と努力で既に全て解決され、完全に終わった問題である。接触の度に日本側に分かるように真摯に説明した。首相も5年間の外相経歴を持っているから、われわれの原則的立場を知らないはずがないであろう」
表現はかなり慎重で、首相に失礼にならないように、怒らせないようにと気をつけているのが分かる。

「こちらの事情も分かってください」
さらに北朝鮮は、次の文章に、北朝鮮外務省の思いを込めている。
「(岸田首相は)就任するや、既に終結した問題を持ち出して大騒ぎし、何を得ようとするのか、真意を疑わざるを得ない」
この表現は、日朝の外交問題は「国交正常化」であるのに、それを妨害するために拉致問題を提起している、との北朝鮮内の反対勢力の主張に配慮したものだ。つまりは、国交正常化交渉をしたい、との思いを込めている。
北朝鮮の文書表現は、最後に重要な言及をする。
「今のように最初のボタンから掛け違えれば、朝日関係はさらに濃い暗雲の中に陥ることになろう。 日本首相は、朝日関係問題に関する言動を慎重にする必要がある」
北朝鮮外務省は、拉致問題を前面に出せば、日朝交渉や接触に反対する勢力に利用されるから、こちらの事情もわかってください、日朝関係については慎重に扱ってほしい、との正直な思いを、懸命に伝えようとしているのだ。
日本政府は、拉致問題を日朝交渉開始や国交正常化の前提条件には、必ずしもしていない。この姿勢が岸田政権でも変わらないのなら「交渉や接触は可能になる」と、打診する意図が込められている。また、「短命に終わる」とみていた菅政権と違い、岸田政権は長期政権になると考えている節もうかがえる。
もちろん、発言の中には慰安婦や強制連行、過去の精神的苦痛への補償にも言及しているが、これは駆け引きの常套句であり、国内の各機関に配慮したものだ。
北朝鮮報道の意図と目的を読み解け
今回の報道は、北朝鮮の平壌放送などの報道をモニターするラジオプレスが、10月7日夜10時半に、北朝鮮外務省がウェブサイトに外務省研究員の記事を掲載した、と配信した。これを日本のテレビ・ニュースが、正しく判断せずに「岸田批判」との「誤見出し」を報じた。
北朝鮮の意図を正しく汲んで、「首相演説に注文」とすべきだったのだ。その理由を述べよう。7日は、岸田首相の所信表明演説前日である。首相演説に「日朝国交正常化に配慮した言及をしてほしい、交渉の用意はある」と注文をつけたのだ。公式には要請できないから、研究員による「個人の意見」の立場を取った。
一方、岸田首相は「平壌宣言に基づき、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う」と述べた。北朝鮮は、8日の岸田首相の所信表明演説後には一切の批判を控えている。ここから考えても、北朝鮮は、岸田首相の日朝関係の言及に満足したといえる。
北朝鮮と韓国は、工作国家である。巨大な工作機関と諜報機関を抱えている。報道の自由はない。全ての報道や発言には、目的と意図がある。これがわからないと、まんまと利用される。
松野一博官房長官は、「北朝鮮側の発言の一つ一つにコメントすることは差し控えたい」と述べたが、正しい反応だ。単なる研究員の個人的発言に、官房長官が答える必要はない。その上で「拉致問題が解決されたとの主張は受け入れられない」と述べたが、これは「拉致問題の解決は平壌宣言で合意されている」とすべきだった。首脳の合意には、北朝鮮は反論できない。

困った北朝鮮は日朝交渉に動く
朝鮮問題は、国際政治の変化に常に影響される。北朝鮮は、米中対立と中国の韓国傾斜に悩まされている。中国からの食糧やエネルギー支援も消極的だ。この状況では、日本との関係を改善する動きを見せ、中国や韓国を牽制するしかない。
北朝鮮をめぐる国際状況を理解していれば「北朝鮮、岸田首相を批判」との記事は出せないはずだ。困った北朝鮮が、ようやく日朝接触に動いたと感じるはずだ。
日朝交渉と接触は簡単ではない。日朝の接触窓口が閉ざされているからだ。北朝鮮の外務省には、力はない。拉致問題と日朝交渉を指導するのは、秘密警察の国家保衛省だ。日本では、内閣危機管理官や国家安全保障会議(NSC)の事務局長が秘密接触をしてきたが、今は閉ざされている。
外務省研究員の発言は、岸田政権の窓口整理を求める要求でもある。ただし、朝鮮総連系の詐欺師や永田町・官邸周辺の詐欺的人物らが「北朝鮮にルートがある」と嘘をついて、総理や官房長官に接触するから、騙されてはいけない。
金正恩氏へのパイプを維持しているのは、北朝鮮指導者に書簡を送り小泉訪朝を実現させた日本人1人だけだ。
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