中国不動産はバブル崩壊へ、日本不動産はバブルが始まるのか?

東京のマンション価格が「平成バブル」超え
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

(編集部より)「中国恒大集団」の危機に端を発した中国不動産バブル崩壊危機。一方で日本でも東京のマンション販売で「バブル超え」を示すデータも。9月下旬に「恒大集団」の問題を冷静に読み解き、反響があった高幡和也さんが中国と日本の不動産市場を比べ、最新動向を分析します。

中国・広州で今夏建設中の高層建物群(Zhonghui Bao /iStock)

中国不動産開発企業のチャイナ・プロパティーズ・グループ(CPG)は10月15日、子会社が発行した社債が期限までに償還できず、デフォルトに陥ったことを明らかにした。

参考:ロイター「中国地産集団がデフォルト、2.26億ドルの社債償還不能」

中国は、平成バブル崩壊の轍を踏むか

いま中国では恒大集団をはじめ、不動産企業のデフォルト危機が相次ぎ、長年好調だった不動産市場に陰りが見えつつある。中国国家統計局が9月15日に発表した主要70都市の新築住宅価格は前月比+0.16%で、現在まで上昇は続いているものの、伸び率は3ヵ月連続で減速した。

これは、中国当局が行っている住宅価格の高騰抑制政策(取引価格監視や不動産関連融資の制限など)の効果が表れた形だが、この政策が今後の不動産市場にどこまで影響を与えるかは未知数だ。中国政府がここでそのかじ取りを誤れば、日本の平成バブル崩壊時の様に不動産価格が長期の下落スパイラルに陥ってしまう可能性もある。

そんな中国の状況と対照的なのが東京のマンション市場だ。不動産経済研究所(東京・新宿)のデータによると、バブル真っ只中だった1990年の新築マンション平均価格が6123万円(首都圏)だったのに対し、今年8月の新築マンション平均価格は7452万円(首都圏)で、契約率も販売好調の目安とされる70%を超えているのだ。

大人気の選手村跡地のマンション(東京・晴海 y-studio /iStock)

都心のマンションは高くなり過ぎ?

首都圏で値上がりしているのは新築マンションだけではない。公益財団法人 東日本不動産流通機構が公表しているデータによると、首都圏の中古マンション平均成約㎡単価は61.23万円/㎡で、前年比プラス 11.0%の 2ケタ上昇となり20年5月から17か月連続の上昇となっている。また、平均成約価格も前年同月比7.9%上昇の3985万円で、2020年6月から16か月連続で前年同月を上回っている。

出典 公益財団法人 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート2021年9月度

さらに注目すべきはその値上がり率だ。

今から10年前、2011年9月の同機構のデータをみると、東京の中古マンション平均成約㎡単価は48.96万円/㎡であるのに対し、今年9月の平均成約㎡単価は83.51万円/㎡にまで値上がりしている。つまり、デフレが続き賃金も上がらずコロナ禍にも見舞われたこの10年間で、東京の中古マンション価格だけは約1.7倍にも値上がりしていることになる。

東京のマンション値上がりは「バブル」なのか

今、中国で起きつつある不動産バブル崩壊の構図は、日本の平成バブル崩壊の構図に酷似している。現在、中国政府が行っている価格高騰抑制対策として、取引価格を監視することや不動産関連に対して資金の供給制限をすることも当時の日本政府がとった対策とほぼ同じだ。そしてなにより似ているのは、個人も企業も不動産価格は右肩上がりを続けるという「土地神話」をずっと信じきっていたことだ。

土地神話が前提にあれば、金融機関は「必ず値上がりする質草」を担保にとれるのだから、何らかの規制がかからない限りジャブジャブと不動産担保の融資を続けるのも無理はない。住宅価格が上がり続けるなら債務者がデフォルトしても担保住宅の競売処分で十分に債権を回収できるのだ。銀行にとってこんなオイシイ商売はない。米国のサブプライムローンが被害を広げたのもほぼ同じ理由だ。

バブルの定義を仮に、「実態の価値以上の評価が生じている経済状態のこと」とした場合、いまの首都圏マンション価格高騰はバブルといえるだろうか?

色々見解は分かれるところだが、筆者は現状をバブル状態とは思っていない。リクルート住まいカンパニー(東京都港区)が首都圏の新築分譲マンション契約者の動向や属性を調べたところ、下記のような結果となった。

  • 世帯主の平均年齢:37.7歳
  • 世帯年収(共働き等の総収入):985万円
  • 平均購入価格:5,538万円
  • ローン借入総額:平均4,864万円
  • 最も多い購入理由:子供や家族のため、家を持ちたいと思ったから

※引用 「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査(株式会社リクルート住まいカンパニー)

首都圏の住宅購入者のほとんどは上記の様な自己利用目的のファミリー層だ。自分が住むための家を自分の価値観と経済状況を鑑みながら子供や家族のために購入するなら、それは「実態の価値以上の評価が生じている経済状態」とはいえない。キャピタルを狙った売買ではなく、実需(ここでは自己使用の意)に基づく取引なら、それは価格が高くても安くてもバブルではなく、需給バランスに基づくその時々の相場での取引だといえるだろう。

物件を下見するファミリー層(※画像はイメージです SetsukoN /iStock)

中国のバブル退治と日本のバブル予防

一方、中国では、1世帯で持てる住宅数が制限されている都市が多いことから、住宅所有数を増やすために偽装離婚をする人が相次いでいるという。規制の目をかいくぐり、複数の住宅を持とうとする行為は「投機的だ」として随分前から問題視されており、当局は規制や監視を強化している。

※参考:ロイター「北京発『規制ショック』、中国不動産市場に冷や水か」

中国政府のバブル退治がどうなるかに世界の注目が集まっているが、新築マンション価格が平成バブルを超えた日本の不動産市場動向にも注意が必要だ。先述したように首都圏の住宅市場は今のところキャピタル狙いの投機的取引よりも実需取引がメインであり、筆者は現状をバブル状態とは思わない。

しかし今後も価格上昇が続いていくと、気づかないうちにバブルの泡が膨らんでしまう可能性もある。バブル崩壊の悲劇を充分に味わった日本に、もう土地神話は残っていないと思うが、不動産バブルを予防するためには住宅購入目的に「値上がりするから家を買う」という項目を決して加えてはいけない。国内外の投機マネーは常に行き場所を探しているのだ。

住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

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