“紙本主義”の読売新聞、文科省の「GIGAスクールたたき」に懸命も、ネット呆れ気味

「端末が原因ではなくて、もともとあったこと」

読売新聞が7日付の朝刊一面トップで、文科省が小中学校のDXで、1人1台学習用端末を配布する「GIGAスクール構想」を巡り、「全国74自治体のうち14自治体が、アプリによる誹謗中傷などのトラブルを把握している」とする独自調査の結果を報道した。読売はデジタル教科書の導入の際にも社説や連載記事でネガティブな論調を展開していたが、今度は「GIGAスクール構想」にケチをつける記事を大々的に掲載した格好だ。しかしネット上の反応は冷ややかだ。

東京・大手町の読売新聞社

記事によると、46道府県庁の所在市と、5つの政令市、東京23区を対象に取材したものをまとめた。主なトラブルとして「プログラミングアプリで中傷するような書き込み」「フィルタリングを解除してわいせつ動画を視聴」などといったケースを紹介している。記事の最後には子どものネット問題に詳しいという大学教員による「安全にネットを使えるようリテラシー教育を行うべきだ」などのコメントを掲載。全体としてGIGAスクールの運用に“警鐘”する構成となっている。

ツイッターでは

「予想通りの事態。スマホでトラブルだらけだというのに、タブレットまで与え、さらに火の粉をバラまく」

などと読売記事に同調する人もいたが、全体としては少数派。むしろ記事への異論が相次いだ。典型的なのが

「家庭管理だった端末でやってたのが学校管理の端末になったから既存の事案が把握できるようになっただけでは?」

「学校が配った端末が原因ではなくて、もともとあったことが学校が配った端末で起こっただけ。むしろ公用のタブレットの方が証拠が残るだけ以前より掴みやすい気がする。」

といったように、問題を端末のせいにするかのような論調や、機器の導入でトラブルが可視化されたのではという投稿があった。

こうした読売記事への「異論」の中には「先進自治体」からの疑問も。東京都渋谷区は、すでに2017年から区立の小中学校の子どもたちにタブレット端末を配付するなど「先進事例」として知られるが、渋谷区議の鈴木建邦(けんぽう)氏は、「いいですね!学校管理下だから明るみに出るトラブル。指導につなげられることがICT導入の一つの強み!!!!!」と指摘、さらに「読売新聞はもっと「これがICT導入の成果だ!」キャンペーンをやりましょう…せっかく手間かけた独自記事なんだから」と、ネガティブな側面をやたらに強調するような論調への違和感を述べ、「目の届かない陰でのいじめやトラブルにどれくらい苦労しているか、という点を踏まえてほしいところ」とも注文していた。

※画像はイメージです(recep-bg /iStock)

GIGAスクール構想は近年、文科省が進める学校現場のDX化の一環で、新型コロナで在宅でのオンライン学習が急がれた昨年は、当時の萩生田文科相が前倒しを急いだ。しかし韓国では昨年の春のうちにオンライン授業にスムーズに移行し、日本のオンライン対応の遅れが指摘されていた。

そうした中で、読売は今年1月、デジタル教科書について「紙と活字が人間形成の基本だ」などと退歩的な社説を掲載し、ネット上では「どうせならパピルスとか木簡とか竹簡とか粘土板も使ってほしい」と皮肉られるなど、物議を醸した。本業の新聞販売で培った、紙へのこだわりは、ある読売OBは“紙本主義”と評するほどの徹底ぶりだが、今回の記事もGIGAスクールの問題点を強調する割に、取材した74自治体のうちに問題があったと回答したのは14自治体にとどまった。これを「針小棒大」ととるか、「初期消火」ととるか人によって受け止め方の幅はありそうだが、衆院選の最中も教育政策を取り上げた記事で「教育…デジタル化 現場戸惑い」といった論調だったことから見ても、DXの潮流に抗おうとするスタンスなのは確かなようだ。

 

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