共働き家庭でも小学校受験は可能?お金の面でFPが考察

仕事とお受験は両立できる!ただし入学後の留意したいこと
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、健康経営エキスパートアドバイザー
  • かつては専業主婦世帯の印象だったが、共働きの小学校受験は珍しくない
  • 私立小学校家庭の6割以上は年収1,000万円以上。家計のゆとりは必須
  • 入学後の小学校生活も考えて収支の見通しを

(編集部より)都内の私立小学校は入試本番がほぼ終了しました。年長のお子さんは、もう来年度の入学先の見通しが付き始める頃です。また、年中以下のお子さんがいるご家庭では「うちもお受験させようかな」と考え始める時期でもあるでしょう。そんなときによく聞かれるのが、「共働きでもお受験はできるのか?」という疑問です。共働きで実際に子どもの小学校受験を経験したファイナンシャル・プランナー(FP)の加藤梨里さんが解説します。

AGE-STUDIO /illustAC

共働き家庭の小学校受験は増えている?

コロナ禍に入ってから2年目の小学校受験は、ほぼ、あと国立小学校を残すのみ。密を避けるために試験の形式や日程が大幅に変わるなか、受験生は急増しています。昨年は首都圏の小学校への受験者数が前年比1割近く増え、今年もさらに増加したともいわれています。

少子化にもかかわらず、小学校受験の受験者数はこの数年増加の一途をたどっています。特に昨年の新型コロナ感染拡大による学校の一斉休校を機に、いち早くオンライン授業に対応した私立小学校への注目が高まり、お受験に挑む家庭が増えているといわれています。

その波は共働き家庭にも及んでいて、父母ともに働いている家庭が小学校受験をするのはいまや全く珍しくありません。全国の世帯全体で、共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上※2を占める現在、かつては専業主婦家庭向きとのイメージがあったお受験の世界でも、共働きはマイノリティではないのです。コロナ前の2~3年前に幼児教室に通っていた筆者でも、肌感覚では専業主婦の割合が多いと思っていたものの、パート、フルタイムともに働いているママ友も何人もいました。

※2 厚生労働省「共働き等世帯数の年次推移

仕事と幼児教室の両立は可能

実際に、両親が仕事をしながら子どものお受験対策をすることは可能です。大多数の幼児教室には土曜日のコースがあり、模擬試験のほとんどが土日に開催されるため、平日フルタイムで働いていても両立できます。追い込みのこの時期に行われる直前講習も土日に設置されるものが多いので、所属している幼児教室の講座だけでなく、外部講座に参加もできます。

わが子も平日は保育園に行き、幼児教室には毎週土曜日に通っていました。試験本番が平日だったときには保育園を休みましたが、それ以外は直前期までほぼ皆勤で、筆者も仕事に勤しんでいました。

もちろん、これで合格レベルに達するかどうかはわかりません。直前期ですら土日の空いている時間だけに直前講習を入れ、ペーパーを解くのは平日夜だけだったわが家の受験対策は決して胸を張れるレベルではなく、もっとがんばればよかったと反省するばかりです。ただ、しくみとして親が生活の全てをお受験に捧げないと一切受験ができないわけではなく、両親が働きながら小学校受験をすることは、十分に可能だということです。

私立小学校家庭の65%は年収1000万円以上

では、収入面で小学校受験の“圏内”はあるのでしょうか? 当然、入試では世帯収入は問われませんから、収入に関わらず受験はできます。とはいえ、私立小学校には裕福な家庭が集まるイメージもあります。

ひとつの目安として文部科学省の「子供の学習費調査」※3をみると、子どもが私立小学校に通う家庭の約65%は、世帯年収が1,000万円以上です。公立小学校ではその割合は15%に満たず、所得層がかなり違うことがわかります。

文部科学省「子どもの学習費調査

データ上では、この年収が共働きで稼いでいるものなのか、夫婦のうち1人で稼いでいるものなのかはわかりません。しかし個々の家計では、必要な収入を夫婦共働きで稼ぐのか、どちらかひとりの収入で支えるのかによって、家計の管理体制や教育費の計画が大きく変わってきます。データはひとつの参考にしつつ、入学後6年間の収入の見通しをイメージしながら受験を検討するといいのではないでしょうか。

小学校生活にかかるお金は保育園時代と様変わり

紺色らいおん/PhotoAC

また、共働きかどうかに関わらず、学校生活で出て行くお金のイメージもつけておくことが大切です。入学金や授業料などまとまったお金は募集要項に記載されており、金額も支払時期も明確です。しかし学校生活ではそれ以外にも、通学定期代や制服代、修学旅行の積立金や給食費など、日常的にさまざまなお金がかかります。放課後の習い事や塾が増える可能性もあります。こうしたお金は入学前に用意しておくよりは、毎月の家計収支でやりくりするのが一般的です。

別の角度では、学校外での暮らしぶりも意外と重要です。小学校生活では同級生の家を行き来したり、一緒に買い物や旅行に行ったりする機会もあります。保護者会など学校行事の後には、親同士でお茶を飲みに行くこともあります。自宅のたたずまいやお店の選び方から、お互いに生活水準が見え隠れすることもあるでしょう。ご家庭の考え方によりますが、お受験をするかどうかや学校選びの判断にはそういった面の検討も大事かもしれません。

加えて、中学以降どこに進学させるのか、中学受験をするのかなど、教育費全体の計画も見据えておかねばなりません。子どもの成長の道のり上、小学校はまだまだ序盤。できるだけゆとりをもった判断が肝要です。これらを踏まえて、小学校受験をさせるのか、どこの学校を志望するかを検討すると、お金の面で安心でしょう。

 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、健康経営エキスパートアドバイザー

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