日本は19位、世界の公務員の汚職度ランキング
「腐敗まみれ」に転じる危険も- 世界中に汚職が蔓延。日本企業も新興国では苦しんでいる。
- 国際NGOの汚職ランキング。日本は19位で相対的にはマシ
- しかし「合法的」な汚職があるのも特徴。油断は禁物
ドイツに本部がある国際NGO、トランスペアレンシー・インターナショナル(略称TI)では賄賂・汚職をなくすための活動をしています。私は、その日本支部の代表を務めています。
日本では政治家や公務員の汚職のニュースは後を絶ちませんが、新興国でもそれ以上に汚職が日常生活に深くまで入り込んでいます。現地に赴く日本企業の社員たちは、公務員が日常的に持ちかけてくる賄賂の要求に日々苦しんでいるのです。

「罰金10倍」新興国の汚職実態
海外にインフラを輸出する日本企業の担当者から聞いた話です。インドの空港に着いた社員が入国審査の列に並んでいたところ、係員から少額の賄賂を要求されたそうです。それを断ると、とても長い行列の「最後尾に並び直せ」と誘導されたのだそうです。
インドネシアのバリ島では、昨年こんなことがありました。日本人がオートバイを運転中に、警察から、昼間のライト点灯を忘れるという軽微な違反を咎められた際に、なぜか法定の10倍の罰金を取られたというのです。この日本人が警察とのやりとりを録画して動画を拡散したところ、56万回も再生される騒ぎとなり、最後には警察が公式に謝りました。
起業家が現地で事業を始めようする時にも、同様に、最初から賄賂の問題に突き当たるのです。電気の開設やら開業の許認可の申請をすると、現地の公務員があれこれ書類を突き返してきて、そのうち賄賂の要求が始まります。断れば、申請書類を放置されます。それが数か月、数年にわたるケースもよくあるのです。
中国でも、数年前に日本の大手企業が工場を建設した際に、税関で部品を止められたり、検査官が操業開始に必要な検査に来てくれないことで生じた贈賄事件もありました。いやいやながらでも応じてしまうと、贈賄事件の犯人となってしまうのです。
日本はマシ?各国汚職ランク
TIでは、世界各国の政治家・公務員がどれだけ腐敗・汚職にまみれているかについて調査をしています。ここではCPI(腐敗認識指数)という指標をもちい、汚職度の低い順に並べて清廉度を測り、毎年、国別のランキングを発表しています。この指標は世界銀行や国連開発計画などが世界各地で行う「あなたは自国公務員がどのくらい腐敗していると思いますか」「公務員に賄賂を要求されましたか」といったアンケート調査をもとに通算集計したものです。
「CPI 2020」として1月に発表された(図表参照)最新の調査では、日本は100点満点で74点。清廉度、すなわちクリーンさにおいて世界180か国中19位という好成績でした。オリンピック関連支出の不透明さや、コロナ対策の不手際が厳しく指摘されているものの、世界目線で見てみると、相対的にはかなりマシな国であるとの位置づけです。
清廉度トップ5は、デンマーク、ニュージーランド、フィンランド、シンガポール、スウェーデン。
ワースト5は南スーダンとソマリア、シリア、イエメン、ベネズエラです。
日本と関係の深い国を見てみましょう。輸出先トップ5を見ると、アメリカが25位、中国が78位、韓国が33位、台湾が28位、香港が11位です。輸入先トップ5は中国、アメリカ、オーストラリア、韓国、サウジアラビアで、オーストラリアは11位、サウジアラビアは52位です。
相対的に清廉と評された日本ですが、この国の問題はそもそも「合法な賄賂」がシステム化されている点にあります。企業から政治家への政治献金は、許認可や法改正、発注での見返りを期待してなされています。また役所から企業への高額発注も常態化していますが、これは発注先への天下りを期待したものです。こうした背景によって、日本においては、選挙において金権選挙が常態化しているのです。そして、その全ては合法的なのです。
「合法的」な日本型賄賂
また、日本は独特の「忖度の文化」が根強いのも特徴だといえます。森友学園の開設認可と国有地払い下げを巡る問題では、安倍首相(当時)の名前を出せば、財務省などの官僚が業者に有利に手続きを進めてくれるという実態が明らかになったことは記憶に新しいことです。カジノ解禁法の成立・誘致にあたっては、中国企業が与野党の複数の国会議員に金品を渡したり接待を行っていたりしたことが発覚しました。秋元司衆院議員が現職のまま逮捕され、現在、拘留中で裁判が行われているところです(2021年4月現在)。
選挙での買収事件も後を断ちません。元法務大臣であった河井克行衆院議員と案里参院議員夫妻の事件では、妻の選挙にあたり、票のとりまとめを求めて地元の県議や市議らに現金を配っていたことが発覚しました。妻は当選しましたが、今年2月に有罪判決を受け辞職。夫も辞職しました。
このように、国の指導者達が忖度や献金、天下りという目に見えない「合法的な賄賂」を行う一方で、庶民生活においても、「党費」や「会費」という名の見えない「合法的な賄賂」があります。特定の政党や宗教を通せば、生活保護の申請が通りやすいなどという噂は絶えません。
このように、日本では、途上国のようなあからさまな賄賂要求はあまり無いものの、形を変えた「合法的な賄賂」が様々に存在するのです。それは表向き問題が無いとされているからこそ、なおさら厄介でもあるのです。

日本も「途上国並み」の危険
日本も油断をすれば、途上国並みの腐敗まみれの国に転じる危険をも孕んでいるといえます。というのは、日本は腐敗防止の法制度面の整備が大変遅れており、世界の中で後進国だからです。2003年にニューヨークの国連総会で採択された国連腐敗防止条約を日本が締結したのは2017年。世界で182番目の遅さだったのです。他に締結していない国は、シリアや北朝鮮ぐらいしかありませんでした。
資金洗浄の防止や透明性の確保、公務員による贈収賄や横領などの犯罪を防止するために、国連腐敗防止条約では締結国に腐敗防止のための専門機関を作ることを求めていますが、日本はこれに対応する専門機関をまだ立ち上げようとさえしていません。
国連腐敗防止条約に加盟している多くの国では、腐敗をみつけた場合に通報先となる腐敗防止機関が既にあります。この機関は、警察や消防のような公的機関と同様に人々に知られた存在となっているのです。
日本では、腐敗の抑止効果という意味では、個々人や企業などの自助努力、そしてメディア・ネットによる世論の拡散・抑止効果のみに頼っているのが現状なのです。日本ではこうした腐敗を通報できる公的な組織がまだ存在しておらず、社会インフラのなかに、自浄機能を担う公的組織が存在してないのです。
私はこうした数々の事象にたいして批判のための批判ではなく、問題の解決・改善を目指した考察を行います。よりよい社会の実現を目指し、日本と外国の公的部門の腐敗について、サキシルでは専門家としての見地からみなさんに解説していきたいと思います。
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