異例の国家石油備蓄放出に相次ぐ否定的な見方、国民・玉木氏「法律違反の可能性」

経済学者は「オイルショック再来」を懸念
ライター/SAKISIRU編集部
  • 岸田首相が米国の要請に基づき「石油の国家備蓄」の放出を決定。
  • 価格高騰抑制での国家備蓄放出は初。本来は紛争や災害による供給不足への備え
  • 「備蓄使い果たしたらその後余計に原油価格が上がる」など否定的意見が多数

原油価格が高騰するなか、岸田文雄首相は24日、米国の要請に基づき石油の国家備蓄を放出すると表明した。価格高騰を抑制するための備蓄放出は初めて。

石油備蓄は1973年のオイルショックなどを経て70年代に開始。国家備蓄は全国10カ所以上の基地などで国内需要の90日分以上、民間備蓄は70日分以上を貯蔵することが決められている。9月末時点の国家備蓄は、145日分。

鹿児島・志布志国家石油備蓄基地(JOGMECサイトより)

だが、備蓄は紛争や災害で供給不足となった場合のためのもの。米国の要請があったとはいえ、国家備蓄を放出することにはさまざまな意見が出た。

国民民主党の玉木雄一郎代表は、「石油備蓄確保法は価格安定のための放出を想定しておらず法律違反の可能性すらある」と指摘。原油価格の代表的な指標である「WTI原油先物」は上昇していることなども疑問の理由に挙げた。さらに玉木氏は国民が維新と共に提言している「トリガー条項の凍結解除」を改めて要求した。トリガー条項とは、ガソリン価格が一定の価格まで上昇した際に自動的に税率を下げる取り決め。東日本大震災の復興財源確保のため、現在は凍結(一時的に停止)されている状態だが、凍結解除による「減税」を求める意見に対し、政府は解除に反対で石油の元売りに補助金をつけて価格上昇を抑える方針だ。

玉木氏はさらに、「2008年、ガソリン価格が185.1円/ℓと史上最高値を記録した時でさえ国家備蓄を放出しなかった。今回の放出は効果が薄いだけでなく石油備蓄確保法の法律目的に反している可能性がある。政府には説明責任が求められる」と続けた。

また、立教大学大学院特任教授で経済学者の金子勝氏は、「オイルショックもどきになってきた」と警鐘を鳴らし、「金融とエネルギー政策の根本的転換がいるのだ。間違っても詐欺補助金などではない」とコメント。

元朝日新聞記者で欧州特派員を歴任した冨永格氏も、「国家備蓄は紛争や災害時の供給不足に備えたもので、価格を下げるための協調放出は異例。値崩れを恐れる産油国との消耗戦になりかねません」と言い、本来の目的と異なると指摘。元日経BP社記者でノンフィクション作家の松浦晋也氏も、石油備蓄は「価格操作のためのものではない」と断言。「岸田首相は財務省の傀儡と化している感が拭えない。そして財務省は省益のみで動いており、全体最適を見ているようには思えない」とも批判した。

“元経済ヤクザ”でおなじみの作家、猫組長氏は、「備蓄使い果たしたらその後余計に原油価格が上がるやろ」と言い、今後の展開に懸念を示した。

今のところ、石油の国家備蓄放出については、否定的な意見が大半を占める。米国の思惑通りに石油価格が安定すると良いのだが。

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