ネットに出回る「トカラ列島群発地震 発生回数」はフェイクニュース?気象庁に聞いてみた

「トカラの法則」も科学的根拠ナシ
ライター
  • トカラ列島近海で群発地震が続いている
  • 政府は「1カ月ぐらいは大きな地震があっても大丈夫なように備えてほしい」
  • 「トカラの法則」を指摘するデータが出回るも、フェイクニュースか
「気象庁 震度データベース検索」スクリーンショット

トカラ列島近海で、地震が相次いでいる。トカラ列島は、鹿児島県の南の海に浮かぶ島々で、奄美地方の北部に位置する。9日午前には深度5強を観測し、政府地震調査委員会は9日、「1カ月ぐらいは大きな地震があっても大丈夫なように備えてほしい」と呼びかけた。

ネット上では地震への警戒感が高まった。なかでも注目されたのは、Yahooコメント欄に提示された、次のような数字。トカラ列島での地震が頻発した年は、国内の他の地域で大地震が起きるという“トカラの法則”を示した。ツイッター上でも拡散され、議論を呼んだ。

Yahooニュースのコメント欄に投稿された“トカラの法則”を示す数字

だが、そもそもこの数字は正しいのか。気象庁・大規模地震調査室に問い合わせると、「うーん、なんだこれは…」とつぶやいた後、

「震度データベース検索で1年ごとに検索して集計したものかもしれない」

と話した。

気象庁ホームページには、過去の地震の震度を記録した「震度データベース検索」があり、一定の期間や場所を指定して、いつどこで、どのような地震が起きたかを調べられる。例えば、2004年1月1日〜12月31日の期間に「最大震度1以上」「トカラ列島近海」と震度や地域を指定して検索すると、確かに25という、ヤフコメと同じ数字が出てくる。

だが、この数字は「最大震度1以上の地震の回数」であり、「群発地震の回数」ではない。また、「最大震度1以上」の回数であったとしても、投稿されている数字は2011年以降は、間違った数字が書かれている。検索期間を短く設定してしまったのか、実際より少し少ない数字になっているのだ。デタラメとまでは言えないが、情報として不完全なフェイクニュースと言えるのではないか。

ミスリードを起こしてしまうものに見えます。前提条件も書いてなければ、出典も書かれていません」(担当者)

専門家の目から見れば、ネット上に出回っている数字が「データ」と呼べるシロモノではないことは明らか。今年にトカラ列島での地震が頻発しているのは事実だが、そのことと国内の他の地域で大地震に関連性があるかは分からない。

鹿児島県の地元紙・南日本新聞では、鹿児島大学の中尾茂教授の話を掲載。

「そもそも東北や熊本はトカラ列島と地理的に離れ、地震に因果関係があるとは考えにくい

「日本全体が地震多発地帯。法則のように見えても根拠のない偶然

と中尾教授は話している。地震に対して何らかの法則性を見出したくなるのが人間の心理ではあるが、本当のところは、専門家ですら予測が難しい。冷静な情報収集を心がけたいものである。

 

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