東京・町田市長選“終戦”で始まる「小6女児自殺」新展開と参院選展望

どこのメディアも報じない「裏政局」を斬る!
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役
  • 東京都町田市長選は5選をめざした現職が快勝。「裏政局」とは?
  • 明暗が分かれた各候補者、各党の動きは?参院選への展望は?
  • 市長続投で「小6女児自殺」、今後の動きで予想される真相解明の動き

東京都町田市長選は20日、投開票が行われ、無所属の現職、石阪丈一氏(74)が、5人の新人を破って5選を果たした。

東京ローカルの選挙ではあるものの、5か月後に控えた参院選など首都圏の政治情勢、そして町田発の痛ましい社会問題となった「小6女児自殺」事案の今後を占う意味で、実は、全国区とは言わないまでも広域的な注目に値する選挙だったので少々解説しておきたい。

5期目を決めた石阪氏(石阪氏選挙特設ページより)

“保守分裂”も、現職圧勝の5選

石阪氏はかつての選挙では、自民、公明に推薦された保守系の首長。ただ、4期16年を務め、高齢になっており、自民党前都議の吉原修氏(66)が後釜を狙って昨夏の都議選は不出馬。さらに、昨秋の衆院選で躍進し、東京での党勢拡大を図る維新が、首都圏で初の公認首長誕生をかけて、こちらも昨夏の都議選に出馬しなかった前都議の奥澤高広氏(39)を擁立するなど、保守系だけで3分裂の事態に陥った。

一方、衆院選後の政党別支持率で維新の後塵を拝することが多くなった立民は、共産、社民、れいわ、生活者ネットで、再生エネルギー関連会社社長の清原理氏(63)に推薦を出す“野党共闘”路線に打って出た。町田市は2000年代、民主党の衆院議員が比例復活や選挙区当選するなど、リベラル系の地盤が存在。参院選に向けて党勢をどこまで維持・回復できるかが喫緊の課題だった。

蓋を開けてみれば、石阪氏が53,323票を獲得して予想以上に圧勝。吉原氏(36,632票)、奥澤氏(31,011票)を寄せ付けず、清原氏は22,780票に低迷した。政界関係者によると、保守分裂となった今回、カギを握る存在となった公明票の動きが大きく左右した。

※画像はイメージです(maruco /iStock)

各候補、各党の泣き笑い

国政では友党の自公だが、都議選ではライバルでもある両党。自民都議時代の吉原氏との折り合いが悪かったこともあり、公明の都議、市議らは石阪氏支援に舵を切ったといい、過去の国政選の比例票などから市内に擁する2万票余りの公明票が“ゲタ”となり、石阪氏は知名度も含めて安定的に戦いを進めた。

これに対し、吉原氏は自民有志の勢力的な応援に支えられ、衆院選後に党勢が堅調だった維新の奥澤氏を上回る底力を見せたが、4期務めた現職・石阪氏に貫禄負けした格好だ。

また、維新は、ここ数か月、党勢が好調だったはずだが伸び悩んだ。維新は衆院選比例票の都心部を主体に都内全体で得票率13%だったのに対し、多摩地区の町田では10%程度。今回も浸透しきれなかった。

ただ、野党間の争いでのみ見れば、衆院比例で立民だけで47,000票を集めた野党共闘の候補が2万を超えるのがやっとというのは、候補者個人の知名度、資質は別に、関係者には「惨敗」以外の何者でもない。立民と維新はすでに国政で小競り合いをしているが、リベラル野党の退潮がここでも明確になったのは確かだ。

女児自殺事案、新たな調査体発足

さて、町田といえば本サイトで最近報じている「小6女児自殺」事案の当地だ。おそらくマスコミは書かないだろうが、今回の市長選で石阪氏が圧勝したことで、現在、市で設置した委員会が調査中の事案解明が加速することが予想される。

※画像はイメージです(KatarzynaBialasiewicz /iStock)

同事案は昨年9月、女児の両親が自殺の原因はいじめにあったとして、文科省で記者会見をし、学校や市教委の対応を非難した。

これを機にメディア側の火がついて「町田小6いじめ自殺」問題は、新聞、テレビからネットメディア、あの週刊文春までがセンセーショナルな報道を繰り広げた。

報道が激しく一方的に過熱したことで、石阪市長や市は当事者や学校関係者の人権を侵害する可能性を強く懸念した。

そして市教委が設置した「いじめ問題対策委員会」が昨年10月に提出した「重大事態調査経過報告書」で、「いじめだけが原因ではない可能性があったとする言及があり、また、報告書に添付された資料の中には、 いじめ以外の原因を強く示唆する資料」(昨年11月22日付 市長の公文書)があったことを指摘すると、石阪市長は異例とも言える動きに打って出た。

市教委が管轄する同委員会の「いじめ問題対策委員会」とは別に、昨年11月、市長直轄の新たな第三者委員会「いじめ問題調査委員会」を設置して事案のさらなる解明をめざしたのだ。

丹念に解明を、政治関係者は自重を

新たな調査委員会はすでに7回の会合を非公開で実施、3月中にも報告書を出すと見られる。第三者委員会の性格上、必ずしも石阪市長が期待するような内容が答申されるとは限らないが、それでも市長の“肝煎り”で再調査が始まった経緯からすれば、昨秋の一方的な報道で注目されなかった複合的な要因を綿密に検証した中身になるとみて良さそうだ。

編集部で入手した遺書の中身からは、亡くなった女児が悩み苦しんでいた形跡が十二分にうかがえる。何か問題があると当事者もメディアも「一つのわかりやすい原因」を求めがちだが、実際に起きた出来事は複雑にもつれた糸のような、さまざまな要因でできていることも多い。当事者の人権、名誉が絡む話だから、石阪市長は事案の解明は慎重に行いつつも、全容解明を丹念にめざすことが5期目、最初の大仕事になりそうだ。

※画像はイメージです(sibway /iStock)

他方、編集部がここまで本件を取材していると、痛ましい事案が「政治利用」された側面も見えてきている。町田市長選や市議選では、「子どもの命を守れる教育環境が急務」といった訴えをする候補者もいた。

真摯な思いでの訴えならむしろしっかり政策実現していただきたいが、渋谷区では一部区議がネット上で、元校長の教育長就任経緯を区長への攻撃材料に使えば、学生団体がデモ活動でトラブルを起こし、区は近く法的措置を取ろうとしている。まだ取材中だが、他にも永田町で怪しい動きがあったことも見えてきている。

改めて言うが、1人の女児の尊い命が失われた事案だ。党利党略の不純な動機で問題提起するのは厳に慎むべきだ。

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