公務員?大手?ベンチャー?フリーランス?就職と転職から考える
「自衛隊→記者→人事」異色の経歴の筆者が独自分析- 「自衛隊→記者→人事」異色の経歴の筆者が多様化する働き方を分析
- 公務員、大手、ベンチャー、フリー…転職から見た時の長所・短所
- 要注意!筆者の経験から思う「30代までの女性の働き方」
「大手かベンチャーか」、「公務員か民間企業か」、「フリーランスになった後に正社員に戻れるか」…。昔から議論が尽きないこれらのテーマについて、いずれも身をもって経験し、いまは人材業界にも携わる筆者が語る。
「新卒でどの選択肢を選ぶべきか」。これについては、結局のところ「その人の価値観による」としか言えない(個人的には、ここで悩む時点でベンチャー向きでないとは思う)。自分は何をしたいのか、何を大事にしているのか。それが何より重要となる。
ただし、最もお勧めできない選択肢はフリーランスと言える。新卒の段階ではスキル、実績、人脈、社会人マナーのいずれも乏しい上、新卒フリーランスから正社員を志すのはハードルが高いからだ。企業の目には、「楽をしたいと考えてしまいがち」「一から社会人マナーを教えるのはコスト」と映ってしまうだろう。
転職のしやすさから考える
転職の観点では、結論から言えば「優秀であればどこにいても転職はできる」。経営環境が複雑化する中、大企業出身者だけがもてはやされる時代ではなくなった。以下の表は、筆者なりに「公務員」「大手企業」「ベンチャー」「フリーランス」の類型ごとに整理した図表だが、それぞれの特徴についても詳しく論じたい。
公務員:20代後半から厳しくなるが、道はゼロではない
そもそも、公務員をやめる人は少ない。2020年の国家公務員(行政職俸給(一)適用職員)の離職率は3.7%(1)。新規学卒者の41.1%(2)が就職3年以内に退職する民間企業と比較すると、その低さが際立つ。公務員の給与や安定は魅力的だ。民間とは違ったやりがいもある。行政職ではないが、数ヶ月前に会った幹部自衛官の友人は「たとえ雑用でも、自分のすることはすべて『国民のため』につながる。モチベーションに困ることはない仕事」と話していた。
しかし、転職となると話は変わる。20代半ばまでは「ポテンシャルの高い第二新卒」扱いで何とか別の業界へ飛び込めても、それ以降はどうしても経営感覚のなさと年収の高さがネックになる。名の知れた企業へ転職を果たした知人もそれなりにいるが、その多くは早々に離脱しているか、語学が堪能などのスキルがあるか、一旦は年収ダウンも辞さない転職を挟んで実績をつくっているかのいずれかだ。
民間企業の中にも、たとえば官公庁向けの営業など、公務員経験が生かせる職も少ないながら存在する。何にせよ、転職を考えるのであれば早めに動いた方がいいだろう。
大企業:スキル・経験によっては大幅な年収ダウンも
大企業に勤める人間は「年収」=「自分の価値」だと思い込んでしまうことがある。「会社」という枠組みを取っ払ったときに何ができるのか。転職市場では、それこそがその人の価値だ。胸を張って誇れることがあるならどこからも引く手あまただが、そうでなければ厳しい評価が待ち受ける。
「無名のベンチャーなら自分は歓迎されるはず」と応募したところ、書類で落とされることも珍しくない。経営者に不採用の理由を聞くと、「年収レンジが合わない」「自分でPDCAを回して動いた経験がない」「それなりの年齢なのにマネジメント経験がない」と手厳しい。
また、ベンチャーの中には固定残業代制を取り入れている企業も多い。たとえば年収600万(月給50万、賞与なし)、月の所定労働時間が168時間という条件は同じながら、A社は残業代全額支給、B社は月40時間の固定残業制があるとする。両社で毎月40時間の残業を行うと、年収ではA社の方が約178万円も高くなる。給与の額面だけで判断すると、年収がガクンと落ちる可能性がある。
ベンチャー:「大企業への転職は無理」は過去の話
一昔前は、「ベンチャーから大企業への転職は難しい」と言われていた。だが、自律的に動ける優秀なベンチャー出身者は、組織改革をけん引してくれる存在として重宝されることも多くなった。
「ベンチャーの方が成長スピードが速い」。よくある売り文句だが、確かに新卒3年時点を見てみるとうなずける。大企業よりも裁量は大きいし、マネジメント経験を積む機会も得られやすい。ただし、これは短い時間軸での話だ。大企業には豊富な人的リソースと大きな案件が存在する。生涯を通じて自分がどうなりたいのかによって、求めるべき「成長」は変わる。
一般的に、ベンチャーは離職率が高い。3年も勤務すると「中堅」以上の扱いになってしまうベンチャーも少なくない。だが、その雰囲気にのまれて若いうちにベンチャーを渡り歩いてしまうと、30代に入ってから「長続きしない人」と見られ転職が難しくなるおそれがある。ここでもやはり、長期スパンでの目線が必要なのだ。
フリーランス:スキルと転職理由にもよる
年々増加傾向にあるフリーランス。一度フリーランスの道を選んでも、エンジニアなど固有のスキルがあり、人材が不足している職業については比較的転職しやすい。市場価値を考えても、フリーランスのエンジニアの平均年収は600〜800万ほどと高い。参入の敷居が低いフリーライターの倍ほどにもなる。
ただし、「安定したかったから」「思うように稼げなかったから」といった理由での転職はまずうまくいかないだろう。本音はどうあれ、「より成長したくなった」「チームで大きな仕事をしたい」といったポジティブな動機が求められる。
要注意!30代までの女性の働き方
書きたくもないことだが、いまの日本では女性の方が先々のビジョンを考える必要がある。これだけ女性の社会進出が叫ばれる昨今においても、第一子出産に伴う女性の退職率は46.9%(3)にのぼる。
新卒で入った会社で働き続けるのか、結婚するのか、結婚した場合夫だけの収入で暮らせるのか、子どもを産むのか、どういう育て方をするのか…。本来、実際に経験しないとわからないような事柄でも、すべて決まってから動き出したのでは望んだキャリアが歩めなくなる場合がある。
金銭的には、子どもを産み終えるまでは会社員でいた方が安心だ。この原稿の執筆・掲載時、筆者は第三子を妊娠しており、切迫早産のため長期入院を余儀なくされている。会社員には出産手当金や育児休業給付金があり、入院となれば傷病手当金も支給されるが、フリーランスにはそのいずれもない。
労働者の3人に1人(4)が治療と仕事を両立させているこの時代、男性であっても不確実性はあるが、女性であればさらに増す。一般的には大手企業の方が制度は整っているが、最近は中小企業・ベンチャーでもフルリモートやフルフレックスなど、柔軟な働き方を売りにする企業が増えてきた。まだまだ厳しい道のりだが、チャンスは少しずつ広がっている。「諦め」ではない人生を模索してほしい。
(1)政府統計「一般職の国家公務員の任用状況調査」
(2)厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
(3)厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」 4P
(4)https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/20/dl/2-02.pdf 11P
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