「育休中にリスキリング」強まる岸田首相への批判に、当事者から「異論」も

「育児中にリスキリングしている人を傷つけないで」

岸田首相が27日の参院本会議で、育児中の女性のリスキリングを後押しすると表明したことに炎上が拡大している。発言の直後に子育て中の女性らがツイッターで非難が巻き起こり、リベラル系の有名人や経営者などからも「子育てをしてこなかった政治家が言いそうなこと」などと批判の声が上がった。

釈明に追われた岸田首相(30日、衆院ネット中継)

30日の衆院予算委で真意を尋ねられた首相は「ライフステージのあらゆる場面で、本人が希望した場合には、学び直しを後押しできる環境整備を強化していくことが大事だ」と釈明に追われた。野党もメディアも一斉に取り上げ、通常国会スタート早々、支持率低迷に追い討ちをかけそうなムードが漂い始める。

しかし、こうした一方的な世論に「異論」もある。

育休中にリスキリング、良いアイディアだと思うのでつぶさないで欲しい」。自民党の松川るい参院議員は29日朝にツイッターに連続投稿。外務省時代、2児を育てた経験から「育休中は決して暇ではなく大変な重労働が存在することは私も実感」としながらも「「通勤」はないので、それなりに自分で時間をコントロールできる」とも指摘。

可能な方は、育休中にも堂々とリスキリングする機会を享受してもらいたいし、周りの方はそれを批判しないでというのが私の偽らざる気持ちです。私自身、育休中に金融・投資、経済の勉強をさせてもらいました。娘を育てる以上のことができて良かったと思っています」と振り返った。

与党だけでなく、民間からも育休中のリスキリングに理解を示す人も。実業家の田端信太郎さんは「『育休中にスキルアップできるわけないやろ!?』っていう人は、育休の前も、後も、どうせ『仕事に疲れた』『時間がない』とか言って、スキルアップに何も努力しないだろう。いつだって出来ない理由を言い出したら、何も出来ない。 やる奴はやる。やらない奴はやらない」などと述べ、やる気次第との見方を示した。

kohei_hara /iStock

実際、田端さんが言うように“やる人はやっている”のも事実だ。「育児中にリスキリングしている人の尊厳を、強い言葉で傷つけないで欲しい」と題したブログをnoteに綴ったのは、愛知県豊橋市で種麹メーカーを経営する村井裕一郎さん。

4歳と2歳の子どもをがいる中で、第3子を妊娠した自身の妻の事例を紹介し、「第3子妊娠9ヶ月目で大学院(MBA)受けて、出産翌月から大学院に通っています」「出産翌日には病室から仕事の取引先とWebミーティングしていました」などと振り返り、「育児、仕事、院生の3足の草鞋、履きこなしていて、凄い妻だと思います」とリスペクト。

実家が近所に近く、自身の十分でないサポートの代わりに義母の存在の大きさは挙げるなど、「仕事や地域の環境も良かった、たまたま、たまたま、運が良かっただけ」と述べる一方で、「真面目に育児していたら、リスキリングなんて出来ない」といった岸田首相への批判論については、「私たちだって、真面目に育児をしています」と“反論”する。

どう言うことか。村井さんはSAKISIRUの取材に対し、「野党の政治家などから『子育て格闘している時にできるわけがない』『赤ちゃんを育てるのは、普通の仕事よりはるかに大変』などと、言われてしまうと、リスキリングした自分たちが『子育てと格闘しなかった夫婦』『子育てをしてこなかった夫婦』って言われているような気がして傷ついた」と、ブログを綴った真意について補足した。

さらに「世の中の流れは早い。リスキリングを支援しないと、ブランクからの復帰が遅くなる社会になるのは目に見えている」とも述べ、今回の炎上でリスキリング支援の機運が萎む可能性を危惧していた。

 

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