沖縄政治の台風の目?本土復帰50年、ようやく到来した「復帰っ子」の時代
【連載】復帰50年・沖縄政治で始まる新しい潮流 #2- 沖縄政界で起きる新しい潮流に注目する篠原氏の連載
- 2回目は、那覇市長選に出馬が取り沙汰されるNPO代表の女性のケース
- 女性は復帰の年である1972年生まれ。新世代が台頭する場合の意義とは?
復帰50年の節目を迎えた今年の沖縄は選挙イヤーでもある。前回触れたように、7月の参院選挙では、玉城デニー沖縄県知事の支援母体である「オール沖縄」から、現職の伊波洋一氏(70)が再選を目指すが、対する自民党は、総務省キャリアだった若手候補・古謝玄太氏(38)を公認した。9月には知事選が行われる。現職の玉城デニー氏(62)がすでに出馬の意向を表明しているが、自公候補は4月20日現在未定である。
これらの選挙とは別に筆者が注目するのは、秋に行われる県都・那覇市の市長選だ。
注目される那覇市長選
翁長雄志氏(当時那覇市長/故人)が2014年に知事選に出馬した際に、後継者に指名され当選した現職の城間幹子(71)氏が3三期目も出馬するのか否かまだ明らかにされていない。
そうした中で3月上旬、NPO法人「にじのはしファンド」代表の糸数未希氏(49)が、市民有志から構成される「那覇の未来に希望を語り実現する会」から出馬を要請され、本人も前向きの姿勢を示していると報道された。無所属新人の候補が、既成党派公認の候補を差し置いて最初に出馬の可能性を示し、それが大きく報道されたのにはちょっと驚いた。

糸数氏は1972年那覇市生まれの早稲田大学社会科学部卒、目下、沖縄電力に勤務している。彼女が設立した「にじのはしファンド」は、「沖縄県内の児童養護施設、里親家庭、ファミリーホームを巣立った子どもたちの進学や資格取得を支援する」NPOで、県民・市民から「毎月一口千円」の寄付を募って意欲的に活動している。
「復帰っ子」とは?
実は、糸数氏も「那覇の未来に希望を語り実現する会」の主要メンバーも「復帰っ子」世代である。「復帰っ子」は、沖縄ではしばしば使われる言葉だが、復帰の年である1972年または1972年度に生まれた世代(今年50歳または49歳)を指す。沖縄戦も米軍統治もまったく経験していない最初の世代である。
「たんなる生年だからそんなに重要な意味はないのでは?」というなかれ。「復帰っ子」という言葉が使われ始めておそらく30年以上、ひょっとしたら40年近い歳月が流れているが、その間、学校やメディアなどでことあるごとに「復帰っ子は…」といわれてつづけてきたのだから、好むと好まざるとに関わらず、彼らにはそれ以前の世代と異なる何らかの「自覚」が備わっている。「復帰っ子」は、彼らの「物事の感じ方」、「事態への対処の仕方」、「生き方」などに多かれ少なかれ影響を与えてきた重要なフレーズだと思う。
ところが、全部で11の市がある沖縄県で、復帰っ子が市長に選ばれた例はまだない。例外的に、那覇市に隣接する豊見城市の山川仁市長は47歳(市長当選時は44歳)と復帰っ子より若いが、11市の市長の平均年齢は60.4歳である(今年1月1日時点)。
那覇市に限っていえば、現職の城間市長と前職の翁長雄志氏は小学校の同級生で、それぞれ1951年生まれと1950年生まれの「米軍統治世代」、その前の親泊康晴氏(故人)は1926年生まれの「沖縄戦世代」であり、沖縄のより新しい世代を象徴する言葉である「復帰っ子世代」の那覇市長がもし誕生すれば、那覇市だけでなく沖縄全体の政治が刷新されるかもしれない。

沖縄政治を変える第三勢力?
糸数未希氏の目新しさの一つは、「自公(保守中道)」対「オール沖縄」という図式の下で行われてきた従来の沖縄の選挙戦のあり方を塗り替える可能性を秘めているところだ。
糸数氏を推薦する「那覇の未来に希望を語り実現する会」には、これまでオール沖縄系候補者を支持してきたメンバーもいるが、自公系候補者を支持してきたメンバーもいる。一般的な表現をなぞれば「保革相乗り」の候補に思えるが、政党とは縁の薄いメンバーが主体だから、「相乗り」という言葉は相応しくないだろう。政党に縛られない新世代「復帰っ子」が主導するグループの候補者といったほうが適切である。
糸数未希氏の母君は、「オール沖縄」を牽引してきた糸数慶子前参院議員(71)だが、未希氏を推す団体の関係者は「オール沖縄から支援してもらえばありがたいが、こちらから支援をお願いすることは今のところ考えていない」という。オール沖縄が糸数氏の支援に回る可能性もあるが、城間市長自身が出馬する、あるいは城間市長がオール沖縄という選出母体から新規の後継候補を選ぶ可能性もまだ残されている。そうなれば、糸数氏はオール沖縄と選挙戦を戦わなければならない。
台風の目の可能性はあるが…
他方、自公側は候補者選びの最中だという。地元紙は、「自民県議など候補は6人」と人数まで指定しているが、県議だけでなく保守系市議のなかにも市長選への出馬を期待されている複数の有力市議がいることは確認できる。自民関係者は、糸数氏を推薦する可能性もあると示唆する。ただ、参院選、知事選の影に隠れてまだ目に見えるような動きはない。糸数氏とオール沖縄の動向を見守っているのが実情のようだ。
糸数氏は「台風の目」のような存在になっており、地元有力紙の琉球新報も沖縄タイムスも、糸数氏を押す動きを「第3の勢力」と位置づけた記事を掲載している。オール沖縄、自公、糸数氏と三つの勢力が鼎立すれば、選挙戦はより複雑な様相を呈し、「連携」も含めた駆け引きが激しくなることもある。
そうした駆け引きが重視されると、復帰っ子の候補が登場した意義や背景が霞んでしまうこともありうる。筆者がいちばん怖れるのはそうした事態である。
ここで想いだすのは2013年2月10日に行われた浦添市長選である。(後編に続く)
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