イギリスが台湾防衛に関与本格化の兆し、自民・細野氏「日本有事に直結」

「自由で開かれたインド太平洋」協力から前進

台湾の中国からの防衛を巡り、イギリス政府が、アメリカ政府と初めて有事対応の計画を検討するための高官レベルでの協議を始めたことが明らかになった。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が2日、関係者の話として伝えた。

iZhenya /iStock

FTによると、3月下旬に米英双方の高官が台湾で2日間に渡って会合。アメリカ側は、カート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官と、政権の中国担当高官を務めるローラ・ローゼンバーガー氏が出席。FTはイギリス側の代表者の具体名は報じていないが、相応のレベルの担当者とみられる。

会合が行われた背景には、中国・習近平政権が、ウクライナに対し、ロシアが実力行使で国境線変更を試みたこともあって、台湾侵攻へ積極的な姿勢を強めていることへの危機感がある。米側は台湾問題についても、イギリスなどヨーロッパの同盟国との連携を深めたい意向だ。

FTは関係者の話として、この会合ではイギリスが台湾当局との外交のあり方からアジアでの抑止力を高めることなど、包括的に議論を実施。アメリカと中国が台湾を巡って衝突した際のイギリスの役割についても踏み込んで話し合われた模様だ。

日米より早く台湾と断交した歴史が一転

イギリスは第二次大戦後、1950年に中国本土の共産党政権を承認し、アメリカや日本よりもいち早く台湾と断交。貿易関係は継続してきたが、安全保障では緊密な関係性を維持しているとは言い難かった。

しかし、近年の中国の軍事的脅威の増加を受け、ジョンソン政権は日米が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想への協力に乗り出し、最新鋭空母のクイーン・エリザベスをアジアの海域に派遣するなど対応している。

空母クイーンエリザベス(英海軍サイトより)

今回の会合はこの流れに乗って、イギリスが台湾有事に一層関与を深めようとしていることを示唆。英政府関係者と見られるFTの情報源は、リーク報道を通じた中国側への「けん制」の狙いもあると見られる。

国際政治学者の鶴岡路人・慶應大准教授はツイッターでFTの記事を取り上げ、「米が英と台湾問題で3月に高官協議を初実施とFT。有事をいかに抑止するかに加えて、武力紛争時の英の役割を含めて議論したとのこと。米が日豪と実施してきたものを補完との位置づけ。ウクライナ戦争と並行してこうした協議が実施されているのはよいこと」と評価。

自民党の細野豪志衆院議員は鶴岡氏の投稿に反応し、「台湾有事は日本有事に直結する。核による恫喝を想定して備えなければならない時代に入った」と指摘。「英国の関与はプラス。日米同盟プラス、豪英などの同志国との連携が抑止への道だ」と、日本防衛の観点から歓迎していた。

 

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