京都市交通局、バスと地下鉄の経営危機を「ちびキャラで広報」の浅はかさ
コロナで大打撃、民間で当たり前の情報開示に過ぎないが...- 京都市のバス、地下鉄が経営危機。コロナ禍による観光客激減が打撃
- 「経営状況の『見える化』」でちびキャラを使ったページを始めたが物議
- 「ちびキャラ使っときゃOK」なのか?透けて見えるのは…
ここ数年来のコロナ禍は飲食業や旅行業など、日本経済に深い痛手をもたらした。それは公共交通機関も同様だ。京都市交通局が運営する市バスと地下鉄も厳しい財政難に喘いでいる。2021年度の利用客は、コロナ禍前の19年度に比べて市バスが25.1%減少、地下鉄が26.2%減少。20~21年度のコロナ禍における2年間で、運賃収入は約270億円の大幅な減収で、前代未聞の事態となっている。
そんな経営難を打開しようと、京都市交通局は経営状況に関する「見える化」の特設ページを公開。ページ入口には「経営状況の『見える化』に取り組んでいます」と称し、マンガのようなちびキャラが「まぢピンチ」「それな」などと、経営の窮状を訴えている。

危うい経営状況、コロナで決定的に
もっとも緩さを感じさせるのは入口だけで、ページ内を進むと運賃収入の速報値や経営健全化の取り組みなどが記載されている。イラストや図表が多用され、すっきりとしたデザインも見やすく、厳しい経営状況がダイレクトに伝わってくる。「見える化」という言葉にウソはなさそうだ。
京都の市バスと地下鉄が危機的状況に陥るのは、実は今回が初めてではない。バス事業は、09年に「経営健全化団体」の対象になっている。経営健全化団体になると総務省に管理され、職員の給与引き下げなどの経費削減、運賃の値上げなどの収益向上を図ることで、経営再建に取り組まなければならない。民間企業でいえば、倒産に近い状態だ。

地下鉄事業も同様で、08年に経営健全化団体へ転落。これは地下鉄事業者としてはわが国初で、それゆえに京都市営地下鉄は「日本で最も経営が厳しい地下鉄」と称される。特に経営の負担となっているのが、現在までに3700億円以上残る有利子負債。バブル期に建設された東西線によるもので、建設費用が当初想定の1.4倍となる5461億円にまで膨れ上がってしまったのだ。道路の表面から穴を開ける工事だったため埋蔵文化財の発掘調査が義務づけられ、建設に時間がかかってしまうという古都・京都ならではの事情が建設費増大の理由だった。
その後、両事業とも経営健全化団体から脱し、昨今のインバウンドによる好況もあって、厳しいながらも何とか運営されてきた。バス事業などは剰余金も出て、留保に回すことができていたぐらいだ。ところがコロナ禍によって、全てが吹き飛んでしまった。このままだと再び経営健全化団体に転落しかねない危機的状況だ。

職員の給与引き下げなど、必要なリストラはすでに経営健全化団体だった頃に行っている。それに京都は観光で成り立っている都市であり、コロナ終息後すぐに観光需要に対応しなければならないので、これ以上の人員削減は難しい。何よりも公共交通機関だから、一定の輸送力の確保も必要だ。京都市のサポートに頼ろうとしても、そもそも京都市自体が財政破綻寸前だ。21年に京都市が公表した「行財政改革案」によると、企業の破産にあたる「財政再生団体」に28年度にも転落する恐れがあるとしている。
「ちびキャラ使っときゃOK」なのか?
交通局のみならず、京都市そのものが危機的状況にあるのはわかった。通常、財政難など都合の悪い情報は隠したがるお上が、積極的に情報を開示しようとするときには、必ずその裏にロクでもない“下心”があるものだ。例えば、財務省が将来的な財政危機を煽れば、大抵は増税の議論がセットになっているように。
そもそも厳しい経営状況を市民に広く知らしめたからといって、それが何か経営改善につながるのか。そんなのは一般企業では当たり前に求められるディスクロージャー(情報開示)にすぎない。市バスと地下鉄の経営が危ないことを知ったからといって、京都市民や観光客が歩ける距離をわざわざバスに乗ったり、地下鉄に乗ったりはしないだろう。財政悪化を立て直すには、方法は1つしかない。支出を減らして、収入を増やすことだ。
現に京都市も昨年10月、経営改善策として2024年度から市営地下鉄と市営バスの運賃を値上げする計画を打ち出した。地下鉄が30円、バスが20円の値上げだ。つまり、ちびキャラによる“財政難見える化”の本質は、経営状況を開示することで値上げを納得してもらおう、ということではないのか。いわば、値上げに向けた“根回し”だ。京都は「大学のまち」と呼ばれ、生産年齢人口の2割近くが大学生だという。当然ながら運賃値上げは、通学で公共交通機関を利用する大学生のサイフを直撃する。大体、京都の地下鉄運賃は日本一高い。京都市からは、「大学生だから、マンガみたいなキャラ使っときゃ」といった浅はかな思惑も透けて見える。
昨今、地方再生が叫ばれて久しい。疲弊する地方経済の象徴として、過疎化する限界集落や閑散としたシャッター商店街などが紹介されることが多いが、待ったなしの再生を迫られている “地方”は、意外にもわが国を代表する観光地、古都・京都だった。
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