世田谷と芦屋…東西2大ハイソな街、20代首長は誕生するか?

令和初の統一地方選、世代交代は進むか?

統一地方選は22日、選挙活動の最終日に入った。4年前の統一地方選は元号が平成に変わる直前に行われたが、今回は令和になって最初の実施となる。東京・北区長選は今週88歳の誕生日を迎えた現職が続投をめざす一方、世田谷区長選や兵庫・芦屋市長選は20代の有力候補者が注目を集める。世代交代は進むのか。

政策で現職“論破”も

世田谷をより良くするためには、30年や50年先を見据えたビジョンを持った区長が必要だ。今回、そのような世田谷区にチェンジする」。世田谷区長選に挑んでいるのが地元出身の内藤勇耶(ゆうや)氏(29)。仮に当選すれば、平均年齢が60代半ばの東京23区長では初めての20代区長となる。

報道関係者向けの「区役所ツアー」で建て替え計画変更案を説明する内藤氏

まだ20代とはいえ選挙戦では、元財務省の研究官らしい政策通をアピール。現行の区役所の建て替え計画では400億円の税金が使われるだけだとして、豊島区や渋谷区などが行ったような、民間資本を取り入れる形で区民負担を実質ゼロにする計画への変更を訴えた。

当初は無視していた現職の保坂展人氏だったが、内藤氏の陣営が世論調査やネットなど巧みな広報戦略で、建て替え問題の事実が浸透。保坂氏の陣営も無視できなくなり全面反論に転じた。結果として選挙直前に内藤氏が「争点化に成功した」と手応えを感じるまでになった。

告示後には両者がツイッターで直接火花を散らし、保坂氏が内藤氏の公約である区保有の有価証券運用に疑義を呈したところ、内藤氏が元財務省研究官の見識をもとに「区長の金融に関する発想には誤りがある」と“論破”する場面もあった。

この選挙戦は、元社民党国会議員で、立民や共産などが支援する保坂氏と、自民・維新が異例のタッグを組み、公明の一部、国民の玉木代表が加勢する内藤氏という「左派陣営vs.保守中道連合」の党派的な対立で注目を集めてきたが、政界関係者は「情勢調査で世代別の支持率見ると、50代以下は内藤氏がリード。60、70代は保坂氏の支持が厚い」と語る。近年の選挙では変化を求める現役世代と、そうではないシニア層との意識の乖離が目立つ傾向が出ているが、区長選の結果次第で区役所建て替え計画で400億円の使われ方が決まるだけに、世代を問わず政策本位での判断が求められる。

「史上最年少」市長誕生?

一方、その内藤氏が出馬会見の時に「かつては西の芦屋、東の世田谷」と並び立てて意識していたのが、同じく高級住宅街のある兵庫県芦屋市。奇しくも同時に行われている市長選で存在感を見せているのが同じ20代のNPO法人理事長の高島崚輔氏。26歳2か月で当選した場合、史上最年少の市長になる。

先日の本サイト記事でも触れたように、兵庫の名門、灘中学校・高等学校出身で在学中は生徒会長を経験。進学が決まっていた米ハーバード大学への入学を前に、東大にも“腰掛け”で半年学んでいたという逸材だ。ハーバードでは環境工学と公共政策を学んでいたが、在学中に芦屋市役所でインターンを経験したことがきっかけで、市の現状に危機感を抱いた。

出馬会見では、「西日本で最高の財政力、なんといっても芦屋を愛する市民の皆さんの力。皆さんが築き上げて来られた 芦屋の魅力にほかならない」と、先人たちに敬意を示した上で、30、40代の現役世代の人口の急減ぶりを指摘。「芦屋の良さが十分に生かされていない。このままでは大好きな芦屋はどんどん魅力が小さくなってしまい、いつの日かどこにでもあるような地方の一都市になってしまう」と強調。ITを活用した「最高の学びができる芦屋」を掲げ、18歳までの医療費無償化など子育て支援、シニア世代に対しては予防医療推進などを公約に掲げた。

世田谷の内藤氏、芦屋の高嶋氏に共通するのは周囲からの「他にも有望なキャリアの選択肢があった中でよく政治の世界に挑戦する決意をした」という驚きの声だ。世田谷も芦屋もハイソでリベラルな街としての印象が強く、上の世代に行くほど昭和期の“残像”を強く抱きがちだが、10年、20年先の「当事者世代」は違った風景を見据えて選挙戦を戦っている。2人とも共に現職に挑む選挙戦の構図。幅広い世代に訴えは届くのだろうか。

 

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