ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感

「控訴して徹底的に争う」

食品大手ミツカン創業家の元婿養子で、実子との離別を強いられたと訴えている中埜大輔さんが、ミツカンホールディングス(愛知県半田市、中埜裕子社長)を相手取り、不当な異動や解雇の無効などを主張し、1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、東京地裁であり、中埜さんの請求が棄却された。

判決後、記者会見する原告の中埜大輔さん

今回の訴訟の名目は労働裁判だが、紛争の発端はいわゆる「ミツカン父子引き離し事件」だ。海外の投資銀行員だった中埜大輔さんは2013年、ミツカンの中埜和英社長(当時、翌年会長)の次女、聖子氏(現ミツカンHD副社長)とお見合いを経て結婚した。

中埜大輔さん側の主張によると、翌年生まれたばかりの長男を、祖父母である社長夫婦との養子縁組などを強要された。これを拒否すると聖子氏との離婚要求や、赴任先のイギリスから日本国内への異動命令が下されるなどした末に、聖子氏との不本意な離婚や長男との生き別れを強いられた。

2019年に創業家のお家騒動として週刊文春が報道した直後、ミツカンは中埜大輔さんを即時解雇。以来、長男とは一切連絡が取れない状態でいるという。

愛知県半田市のミツカン本社(Asturio Cantabrio /Wikimedia CC BY-SA 4.0)

今回の訴訟では昨年8月、被告側から和英会長夫妻が出廷し、原告側による反対尋問を実施。原告代理人である河合弘之弁護士が、孫との養子縁組を実父の大輔さんに要求した経緯などを徹底追及したことが注目された(関連記事)。尋問から12日後、和英氏は判決を待たずに死去した。

訴訟は共同親権問題や実子連れ去り問題を背景に社会的注目が集まっていたが、この日の判決では、日本国内の配送センターへの一方的な異動命令などについて違法性を認めなかった。中埜大輔さんは判決後の記者会見やSNSで「控訴して徹底的に争う」との意向を示した。

一方、この騒動は当初から週刊誌やネットメディアが主体的に報じてきたものの、地上波テレビや一般紙は消極的だった。ミツカンは代表商品「味ぽん」などテレビCM出稿に積極的で、民放局には“お得意様”だ。大スポンサーとしての隠然たる存在感が否定できないことに加えて、判決が企業側が勝訴したことでニュース価値が高くないと判断されたこともあってか、大手メディアの報道がほとんどない状態だ。

大輔さんが判決後に司法記者クラブで会見したにもかかわらず、大手メディアの速報はゼロ。一夜明けてグーグルニュースやスマートニュースで11日午前8時時点で表示される一審判決の記事は、同クラブ非加盟の東京スポーツだけだった。

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