コロナのフランスで出産・育児のリアル:無痛分娩なのに痛がる私に…

「母親であること」と同等以上に「女性として自立」重視
2021年06月23日 06:00
myillo/iStock

筆者は2019年11月からフランスのパリに居住しており、コロナ禍真っ只中の2020年9月に第一子をパリで出産した。出産・育児においても、日本とフランスで「正解」が異なると、「もうどっちも正解で良いじゃん」と許容範囲が広がるような気になってくる。今回は筆者のフランスにおいての出産・子育てエピソードをお伝えしたいと思う。

コロナ禍での妊婦生活

妊婦生活は、初っ端からコロナ禍の煽りをくらってしまった。お世話になっていた主治医が70歳と高齢であったため、「コロナにかかったらワタシ死ぬネ。しばらく来ないでクダサイ」と言われ、しばらくっていつまでやねんと思いつつ、結局2ヶ月間検診が受けられなかった。

そしてその後診察が再開されるも、フランス人が人生のすべてを懸けていると言っても過言ではない夏のバカンスの時期にあたり、またもや2ヶ月検診スキップ。知人の場合は、破水して出産を予定していた病院に駆け込んだものの、その日バカンスで担当医が不在。急遽別の病院に搬送されたらしい。すっとこどっこいな話に聞こえるかもしれないが、フランスという国においてはバカンスが理由であれば、医者が診察を止めようが水漏れの工事が延期になろうが何も言えないのだ…。

とはいえ、妊娠中は道ゆくフランス人にとても親切にしてもらった。「妊婦は病気ではない」という表現があるが、フランスにおいては「病気のように治せないのだから、優先されるべき」という考え方だそうだ。

妊娠前は、筆者がフランス語が不自由なこともあって塩対応とも思えるほどクールな対応をされることがままあったが、お腹が目立ってくると公共交通機関や店のレジなどあらゆる場面で優先してもらった。

これは産後も同じで、子ども連れだと1日に何人も道行く人に話しかけられる。パリは地下鉄などの公共交通機関がバリアフリーでなく歩道も段差ばかりだが、道行く人がベビーカーを担いで移動を手伝ってくれるし、ドアを開けてくれたり、お店でおまけしてくれたりと何かと親切にしてもらうことが多い。海外生活で不便なことも確かにあったが、フランス人の親切味を感じることが多々あった妊婦生活であった。

8割以上の妊婦が無痛分娩希望

フランスでは、母親の精神的消耗を最小限に抑え、産後のより早い体力回復のため、約8割の妊婦が無痛分娩で出産するそうだ。また無痛分娩は出産を請け負う助産師側の負担の軽減にも寄与している。

筆者も無痛分娩には大いに期待したのだが…。陣痛が30秒間隔になって麻酔注入ボタンを連打しても、少しも楽にならない。そう、いつだって何かが故障しているフランス…。不備があったようで、麻酔が思うように入って来ないのだった。「なぜこの段階になって痛がっているのか」と痛みに悶えるわたしを、不思議そうに眺めていた助産師たち…。ようやく機械の不備を疑い手直しをした結果(早くしてくれ)、一気に麻酔が効き過ぎてしまい嘔吐が止まらず、朦朧とした頭で出産したのだった。

基本スパルタな入院生活

筆者は日本での出産経験はないが、入院生活は「フランスらしいな」と感じることが度々あった。例えば、人生の一大仕事を終えて一発目の食事がこちらである。

筆者撮影:「トレーの上、汚ねぇな」とお思いでしょうが、あえて配膳ママで撮ってみました。

夕飯はおかずが出て少し栄養が摂れたものの、筆者は自費で入院したことに加え、日本の御膳のような入院食を知っているので少し落胆してしまった。しかし、フランスの医療保険に加入していれば、入院含め出産にかかる費用には保険が適用され自己負担はゼロなので妥当かとは思う。

フランスでは特別な事情がない限り、出産当日から母子同室である。少しでも身体を休めたいと願うも虚しく、四六時中入れ替わり立ち替わり助産師たちが出入りするので、なかなかリラックス出来る時間がない。人によって言うことが違うので何度も同じやりとりをしたり、ある人の言う通りにすると別の人から怒られたりもする。夜中の1時に助産師が予防接種を打ちに巡回して来た時は「それ昼間じゃダメなの?」と思わず苦笑いしてしまった。

そしてやっとの思いで迎えた退院日。自宅に戻り、退院間際に渡された息子の出生データを確認すると…なんと同じ日に産まれたクレバリーさんという面識のない新生児のデータだった。その後病院に問い合わせると「正しいものを郵送する」と返答があったが、半年経った今も何も送られて来ず。それでこそフランスである。散々書いてしまったけど、無事に出産させてくれたことに大感謝している。

「大人の都合」も優先  フランスゆる育児

育児に関してフランスと日本の違いのひとつは、多くの人がミルク育児を選択することだ。医師や助産師曰く、大半の方が3か月以内に母乳育児を止め、ミルク育児に切り替えるそう。主な理由は比較的早い職場復帰の準備、夫婦の性交渉の再開、バストケアを考えてだ。先輩ママたちに「夜間授乳が辛くて…」と泣き言を漏らすと、「ミルクをたっぷり飲ませて寝かせれば良い」と言われて終了であった。

ちなみに友人はフランスの母親学級で、「哺乳瓶の消毒はしなくても良い」「粉ミルクは常温の水で溶かしてOK」と教えられたそう。また、無痛分娩のおかげか「床上げ」の慣習もなく、産まれたばかりの小さな赤ちゃんが普通にシャバに出ているので、時々その愛らしい姿を拝むことができる。

またこれは個人差のあるテーマだとは思うが、フランス人女性は産後「母親」であることと同じくらい、もしくはそれ以上に「女性として、経済的にも精神的にも自立していること」を重要視されると聞く。具体的には、産前の体型に戻すこと、夫婦関係の再開、育児以外の自分の世界を持つこと、仕事に復帰し経済的に自立することなどを指すそうだ。子どもが小さいうちからシッターに預けて仕事や趣味の時間を過ごすことは普通のことである。

母親の自由度が高い風潮は望ましいが、精神的にも体力的にもまだ不安定な時期にそれらを求められることは、それはそれでプレッシャーだなと個人的には感じるのだが、どうだろうか。余談だが、フランスでは産後のボディメイク・健康上の理由から、骨盤底筋群を鍛える「膣ケア」を、医療保険適用で受けることが出来る。それもなんだからしいなと思うところだ。

極めて個人的なエピソードであるが、以上が筆者のコロナ禍での妊娠・出産記録である。これからも双方の考えを自分に都合よく解釈し、出来る限り気負わない子育てが出来ればいいなと思う。

 

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