電通グループ最高益1075億円:望月衣塑子記者が言う「高笑い」なのか?

本社売却益をさっぴくと...
電通本社(d’n’c /flickr CC BY-SA 2.0)

電通グループは11日、2021年12月期の連結業績を発表し、今年の最終損益が1075億円の黒字になる見通しを示した。1595億円の赤字を計上した20年12月期から一転し、2001年の上場以来「過去最高」を見込むという。

これについて、オリンピック開催に批判的だった東京新聞の望月衣塑子記者がツイッターで「飲食・旅行業は苦しい中、五輪強行で電通は高笑い。理不尽だ」などとコメントした。左派系のネット民が「五輪による負債は、電通が払え」「超中抜き電通」などと望月氏に同調していたが、電通は本当に望月記者が「高笑い」と言える状況なのだろうか。

すでに何人かのネット民が望月氏にツッコミを入れているが、電通の黒字転換は昨年のコロナ禍で打撃を受けた広告市況が回復傾向にあるだけでなく、今年6月に発表した本社ビル売却の利益560億円が押し上げの要因だ。3月には世田谷区内にある社員向け運動施設と神奈川県鎌倉市の研修所の売却を発表しており、その売却益約300億円も今回計上している。固定資産の売却は、電通グループとして構造改革を進めている一環で、一時的な変動要因になっている。

アンチ電通の左派系ネット民が一見すると「高笑い」「オリンピックバブル」などと思える業績だが、電通が最終黒字になるのは実は3年ぶりだ。仮に本社などの固定資産を売却していなかった場合、単純計算で黒字は200億円程度に圧縮される。今年2月の業績発表時に、同社のCFOが「開催されるものと願っている」と述べたオリンピックはなんとか開催したものの、主力にしてきたテレビ広告の市場衰退は継続している。昨年は1兆6500億円と、2年で約2500億円も減少した。

デジタル化を急ぐ電通は、昨日の業績発表でも、グループ会社によるイケアのDX支援の成功例を強調していたが、自社の収益構造の転換をどれほど早く結実できるのか、今後の命運を握ると言っても過言ではなさそうだ。

そうなると、望月記者による「高笑い」発言は、電通を含めた広告業界の事業環境の一大変化を見知った上で論評しているのかが怪しくなる。社会部記者は粉飾決算など経済事件の取材経験を重ねない場合は、財務諸表を読みこなす機会もないため仕方ないとも言えるが、望月氏は『新聞記者』という題名の著書を出し、それが映画化されて日本アカデミー賞で最優秀作品賞など7つの賞を総ナメしている。“新聞業界の顔””になってしまっていることも考え合わせると、恥をかくのは自分だけではないことに気づかないのだろうか。

 

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