山中竹春市長が横浜市立大学に“謝罪強要”か?郷原氏、議長に請願書

「SNSで学長の不誠実を市民に知ってもらう」
ライター
  • 山中市長が在籍していた横浜市立大学が、教職員向けに不可解なメールを送信
  • メールは当初中立的だったが、40日後には山中氏に謝罪&礼賛
  • 訂正が行われた背景に圧力をかけた疑い。疑惑解明へ郷原氏が議長に請願提出

8月末に就任した山中竹春・横浜市長への疑惑がくすぶり続けるなか、郷原信郎弁護士が6日、横浜市議会議長に対し、請願書を提出した。請願書が議会で採択されれば、疑惑解明に向けて議会が対応することになる。

山中竹春横浜市長(筆者撮影)

出馬時の学内文書に不審な変化

山中市長には経歴詐称、パワハラなどの疑惑もあるが、この日郷原氏が請願書で提起したのは、山中市長が6月末まで在籍していた横浜市大への不当圧力について。請願書によると、山中市長の出馬が報じられた6月16日、大学は理事長と学長の連名で「今朝(6月16日)の新聞報道について」と題された文書=下記画像=を、学内の教職員約3000人に向けて送信。ちなみに理事長、学長ともに女性だ。

6月16日に大学が教職員へ送ったとされるメール/請願書より

詳細は画像の通りだが、

「御本人への連絡がつかない状況が続いていますが、現在も連絡を続けており、意思確認に努めております」

「横浜市の設置する公立大学法人として教職員の選挙活動及び政治活動へ関与することはありません」

などとある。突然の出馬ニュースに驚きつつも中立の立場を明言しており、ごく常識的な内容と言える。

ところが、そのおよそ40日後の7月26日に教職員向けに再度送られたメールは、一見して異様である。こちらも理事長と学長の連名で出されている=下記画像=。

7月26日に出されたメールは、山中氏を誉め称える内容に変化/請願書資料より

こちらも詳細は画像の通りだが、「お詫び」、「大変申し訳ございません」、「大変ご迷惑をおかけし」、「深い謝罪の意」など、山中市長への謝罪の言葉のオンパレード。冒頭こそ「山中元教授」と書かれているが、後半では「山中先生」とひれ伏すような言葉遣いになっている点も、注目したい。

極め付けは文書の末尾だ。

「山中先生におかれましては、これまで素晴らしい研究成果や学内のご実績により、横浜市立大学のプレゼンスと高めてくださりました。今後も感謝の意を学内外へ伝えて参る所存です」

出馬直後の淡々とした中立的なメッセージとは打って変わって、山中氏を歯の浮くような世辞で誉めちぎっているのだ。

ネット炎上にビビった?

この40日の間に、何があったのか。郷原氏は大学側が作成したと見られる資料を、関係者より入手した。それによると、40日間の間に大学側は立憲民主党の市議会議員である花上喜代志議員、今野典人議員ともう一人、黒塗りにされている人物3名と3回にわたって面談を実施(花上議員は1回目のみ)。黒塗りされている人物について、郷原氏は「山中市長以外、考えられない」と指摘する。

面談では回を重ねるごとに上席と思われる人物が登場し、3回目の面談では理事長本人が出席。面談の概要を記録したと見られるメモ書きには、山中氏サイドの主張として次のようなことが書かれていた。

  • 学長の名前が入っていないのはおかしい
  • 市民にSNSやインターネット上で理事長・学長の不誠実を知ってもらった方がよいとも考える
  • コンプライアンス違反で訴え厳正に対処することも考えている
  • 文案が完成したら、今野議員を通じて、事前に見せること

大学側が用意した草案(下書き)に対して、山中氏サイドが様々な注文を付けていたことが分かる。SNSを使ったネット炎上を思わせるような発言は「害悪の告知」であり、脅迫の疑いがあるという。

資料について、郷原氏は「間違いなく公式の面談記録だと確認できる形で入手した。捏造された可能性は皆無」と断言。ガセネタの類ではないと自信を見せた。

黒塗り部分は郷原氏の入手当時から。小山内理事長と並列で大学職員と思しき個人名があったため、サキシル編集部でモザイク処理した/請願書資料より

山中氏は「事実無根」を主張するが…

山中市長は、自身のホームページで「事実無根の報道について」とのページを開設。疑惑を先駆けて報じた週刊フラッシュからの質問状と回答を公開している。それによると、

当初の通知で、本人と連絡がつかないなど、事実無根の文書が発出されたことから、訂正に向けて支援者がご尽力いただいたものと承知している。その結果、2021年7月26日付「お詫び」文書においてしっかりと訂正されたものと承知している

などとある。自身を誉め称える美辞麗句の並んだ“土下座文書”の内容に、満足しているようだ。

郷原氏の入手した資料によると、6月16日のメールは、午前11時15分に送信されている。大学側が山中氏に対してどのように連絡を試みたのかは不明だが、電話をかけたが出なかったり、あるいはメールがすぐに返ってこなかったりという状況だったのかもしれない。

山中市長からすれば、レスポンスが少し遅れただけで全教職員に「連絡がつかない」と告げられてしまうのは、不本意だったのかもしれない。とはいえ、市長選に出馬するのであれば、報道と同じぐらいのタイミングで所属先に報告したり、すぐ連絡が取れるようにしておくべきだったのではないだろうか。大学側が何らかの連絡を試みたのであれば、“事実無根”は言い過ぎだろう。

「大学の自治」という言葉が示す通り、大学は政治権力から独立した存在でなくてはならない。山中市長が出馬表明後に議員を帯同して大学に圧力をかけたのが事実であれば、民主主義の根幹を歪める行為だったと言える(圧力に屈してしまう大学も情けないが)。

請願書は果たして採択されるのか。9月中には、その可否が判明するという。

 

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