コロナワクチン副反応、働く世代が「正しく」恐れるには
先行接種者の声やデータから分かること- 新型コロナワクチンの気になる副反応。先行接種者のデータや声からわかること
- 筋肉痛は半数以上。「発熱つらい」の声も。働く世代は休暇取得など支援策を
- 命に関わる重い副反応も、迅速対応で9割以上が回復。情報を共有して混乱回避に
(編集部より)新型コロナワクチン接種を巡っては、各地の首長や自治体職員が高齢者より先駆けて接種していることがスキャンダラスに報じられ、迷走している印象ですが、「副反応」に対するマスコミの過剰な報道は、当初懸念されたほどではないようです。医療従事者、高齢者の先行接種の次はいよいよ現役世代が対象。アナフィラキシーなど「副反応」リスクにどう向き合うべきか、歯学博士/医療行政アナリストの中田智之氏が解説します。
働く世代だからこそ「副反応」備えを
新型コロナワクチンの一般の方への接種が始まりました。4月末には高齢者へ接種に関する案内が届き、各自治体での接種日予約でいくらかの混乱がありつつも、概ね順調にワクチン事業は進行しているようです。
現役世代の接種も遠からず始まると見込まれますが、ここまでのワクチン接種の報告から留意すべき副反応も分かってきました。
特に注射部位の痛みや、腕を上げにくくなるほどの筋肉痛は初回接種から半数以上の方に見られており、2回目の接種ではこれに疲労・頭痛・発熱が加わります。
(参考・図)新型コロナワクチン1回目および2回目の接種後副反応調査について - 青森県立中央病院(2021年4月30日)
私の同業者である歯医者たちからも、先行接種にて「運転は出来るけど腕が上げられない」「職場全員、接種後に痛みを感じている」「38度以上の発熱でつらい、休診にすればよかった」などという声が聞こえてきました。医療従事者の仕事なら多少の融通は効かせられますが、職種によっては副反応が職務遂行に支障を来すおそれは十分あると思います。
雇用者・行政の立場からもワクチン接種後に休暇をとれる支援策を用意し、人手不足や事故に繋がらないよう備える必要があるでしょう。力仕事や、運転操作等集中力が必要な仕事では特に重要になるかと思います。
これらの痛みや発熱に対し極端に不安を感じる必要はありません。市販の解熱鎮痛薬を使用することができますし、青森県立病院の669名を対象にした医療従事者を対象にした接種後副反応調査によると、2日目をピークに7日目までにほとんど消失することが分かっています。もちろん副反応だと思われるものでも症状が重ければ医師に相談する必要があります。
(参考)コロナワクチン副反応 仕事休むと1日4000円支給 山梨 ― 毎日新聞 (2021年4月26日)
気になるアナフィラキシーの状況は?
ではワクチンによる後遺症や命の危険はないのでしょうか。
既に国内では約400万人が接種していますが、明確にアナフィラキシーと診断されたのは4万人に1人程度です。現時点までにアナフィラキシーが原因で死亡した事例はなく、発症者中9割以上が迅速な対応により後遺症なく回復あるいは軽快したと報告されております。
また同時期までに報告されている接種後の死亡者は28名。これらは全てワクチン接種との因果関係が不明とされています。なぜこのように表現になるかというと、人口動態統計基づくと毎日3万人に約1人の日本人が死亡しているという背景があります。毎日約30万回のワクチン接種が行われる中で、死因とワクチン接種の因果関係は慎重に調べられます。
科学的にフェアに言うなら、今後事例が多くなっていく中で統計的解析によって何らかの未知の事実が明らかになる可能性はありますが、現時点ではそれができないという意味を含んでいます。
(参考)第58回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料 ―厚生労働省 (2021年5月12日)
ゼロリスクはないが、効果は立証
以上のアナフィラキシー発症者数や死亡者数を見て、新型コロナワクチンは安心だと感じるか、恐ろしいと感じるかは人次第です。
既にイギリス・イスラエル・アメリカでは人口の40~60%がワクチン接種を完了しており、1週間での新規感染者数は明確に減少しています。社会的に新型コロナウィルスを抑え込むために必ずしも全員がワクチン接種する必要はありません。
例えば初回接種でアナフィラキシーを起こした方などは再接種ができないし、様々な持病・事情・思想でワクチン接種をしない方も大勢います。ワクチン未接種者を不公平に扱ってはならないのは、ワクチン行政を情報汚染や感情論で停滞させないためにも重要です。
新型コロナウィルスは国民の180人に1人感染経験者がいて、100人中約2人が死亡する病気です。新型コロナワクチン2回接種を終えた集団では新規感染者が9割以上減少することが分かっています。
接種してもしなくてもゼロリスクはありません。世界中から集まってくる客観的データに基づいてなるべく多くの方がワクチン接種にご協力いただけるよう願っております。
(参考)人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移 ― 札幌医科大学
(参考)SARS-CoV-2 Infection after Vaccination in Health Care Workers in California ― NEJM(2021年5月6日)
■
新しいワクチンを開発し一般に普及するには本来長い時間がかかりますが、新型コロナワクチンが開発開始からたった1年でここまで普及しているのは驚くべきことです。日本国内でもこの1~2か月のうちに多くの一般の方が接種できる見通しとなっております。
医療従事者の先行接種については賛否ありますが、職業柄、副反応に対し冷静受け止め、分析できている部分はあると思います。これらの情報や体験談を多くの方と共有し、筋肉痛や発熱といった副反応の頻発によるワクチンへの不安、あるいは事故や混乱に繋がることないよう備えることができれば、先行接種にも一定の意味合いを持たせることができます。
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