40代で認知症も…元ラグビー選手100人以上が「脳震盪で後遺症」訴え競技団体に法的措置

日本でも深刻な事例報告、他競技はルール改正
ライター/SAKISIRU編集部
  • イングランドの元ラグビー選手ら100人以上が競技団体などに法的措置
  • 現役時代に繰り返した脳震盪による後遺症訴え。40代で初期認知症のケースも
  • 日本でも部活などで18年間に460人が突然死、7年前に報告された事故の実態は

このところの日本代表の活躍で日本にもファンが多い、ラグビーのルールが変わるかもしれないような訴訟が進んでいる。

ラグビー強豪国、ニュージーランドの新聞社系ニュースサイト「Stuff」によると、100人以上の元ラグビー選手がラグビーの国際競技連盟「ワールドラグビー」や、イングランドラグビー協会、ウェールズラグビー協会に対して、現役時代に脳震盪が繰り返されたことによって、後遺症が発生したとして法的措置を講じているのだ。

※画像はイメージです(skynesher /iStock)

40代で初期認知症、元スター選手の悲劇

訴えを起こした元選手の中には、ラグビーの2003年W杯を制したイングランド代表のスティーブ・トンプソン氏や、ラグビー元ニュージーランド代表のカール・ヘイマン氏といったスター選手も含まれる。トンプソン氏は2020年に42歳の若さで初期の認知症と診断されている。ヘイマン氏も昨年、41歳の時に若年性認知症と診断されたと公表した。訴えを起こしたうちの1人、アリックス・ポパム氏も2020年12月に早期の認知症と診断されている。

昨年、イギリスでプロのラグビー選手を対象に行われた調査によると、たった1シーズンプレイしただけでも選手の脳に悪影響を与えることが分かった。調査によると、脳への血流量の減少や認知機能の低下は、ポジションにかかわらず、どの選手にもみられたという。研究チームは、脳へのダメージは年々、累積していく可能性があるとしている。

日本では部活などで19年間に460人が突然死

体と体を激しくぶつけ合うラグビーは、スクラムの際など、選手の頭と頭がぶつかり合う場面も少なくない。それだけに、日本の部活レベルでも重傷事故が起こっていることが以前から問題視されてきた。日本スポーツ振興センターが主催した講演会「学校でのスポーツ事故を防ぐために」の中で、東京都市大学教授で、日本ラグビーフットボール協会理事(当時)の渡辺一郎氏は、学校でのラグビー事故の実態を説明している。

それによると、1998年度から2016年度までの19年間で、体育の授業や部活動といった学校体育のラグビーでの突然死は460人に上る。熱中症による突然死の例もあるが、タックルなどによる頭部へのダメージによる死亡例の方が多い。渡辺氏は、死亡事故の一例を挙げ、その詳細を次のように検証している。

他校との練習試合で、本人がボールを持って走っていた時、相手選手のタックルを受け、左に回転しながら背中から前方に倒れた。その時に、肩、後頭部の順にグランドに勢いよく打ちつけ、頭部を打撲した。負傷後嘔吐、その後意識消失しドクターヘリで救急輸送された。治療を受けるも約10日後に死亡した。

当該生徒は、練習試合中前半1回、後半4回タックルを受けている。そのうち2回のタックルはダメージが大きく、特に最後の5回目のタックルが致命傷となった可能性が高い。

※画像は本文と関係ありません(South_agency /iStock)

サッカーはヘディング禁止、アメフトはルール改正

サッカーではヘディングによる脳震盪が問題視され、イングランドサッカー協会(FA)は7月18日、12歳以下のヘディングを禁止すると発表した。

また、脳疾患がある元アメフト選手ら約5000人が、アメリカのナショナル・フットボール・リーグ(NFL)を訴えた裁判では、NFL側が推定総額10億ドルを支払うことで、2016年に和解している。NFLはその後、選手の安全を守るための新ルールを導入。たとえば、タックルをする際やタックルを受ける際に、ヘルメットから当たりに行くことは反則となった。その成果もあってか、2018年シーズンでは脳震盪を起こした選手が、前シーズン比で30%減少したという。

時には、頭と頭が衝突することも辞さないような、迫力のあるぶつかり合いがラグビーの魅力の一つだが、ルール変更など、何らかの対策が必要なのかもしれない。

 

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