“キャンドル・ジュン式”記者会見で、望月衣塑子を撃退できるか?
危機管理広報「新スタイル」に注目不倫騒動で活動休止を発表した女優の広末涼子さんの夫、キャンドル・ジュン氏が18日に行った記者会見が「斬新」な手法として注目されている。
スポーツ報知によると、自ら会見の受付を行い、記者の名刺を受け取ったほか、質疑応答も質問者がキャンドル氏の隣に座って行うという形で行われた。筆者も新聞記者時代から無数の記者会見を見てきて、また広報サイドで会見の設営に関わった経験もあるが、このようなスタイルは初めて見た。

メディアスクラムを「各個撃破」に
今回のようにネガティブな事象の記者会見では、「メディアスクラム」という言葉があるくらい、取材者側が「数の力」で会見する側を圧倒することが多い。これが取材者側に奇妙な集団心理や“安心感”を生んでしまうようで、中にはリミッターが外れてしまうためか、取材相手に対し、威丈高な言動に出る取材者もいたりする。
ところがキャンドル氏の手法は、ステージ上に取材者をあえて上げ、さらには自らの隣の席に座らせる斬新な手法に打って出た。マンツーマンの局面を作り出すことで、取材者が数の力任せに放言するシーンを打ち消した。為末大氏がツイッターで「最高すぎる。質問者も自然と顔出しせざるをえない」と絶賛していたが、少数が大勢と戦う上で重要なことは、「各個撃破」できるシーンに持ち込むことだ。
政治家ではかつて橋下徹氏が大阪市長時代の囲み会見で、しつこく質問するMBSの女性記者に逆質問で応酬。弁舌力で勝る橋下氏がこの記者をやりこめたことが注目されたことがあったが、あれもいま考えると、橋下氏が女性記者を論戦に引き摺り出して「各個撃破」に持ち込んで逆襲した形だ。
企業会見で“キャンドル式”応用できる?
ただ、今回のキャンドル氏の手法が異なるのは、取材者側も椅子に座らせることで目線を同じにしている点だ。マンツーマンの局面を作りたいだけなら、たとえば、最近の官邸での首相会見のように、取材者がスタンドマイクのある場所に立って質問する形式もあり得た。しかし取材者側を椅子に座らせることで目線を同じにして、対話しやすいようなムード醸成をしている。
ストロングスタイルで圧倒する橋下氏と対照的に、柔よく剛を制するあたりは「平和の火」を灯すキャンドル・アーティストらしさかもしれない。そもそも大半の記者はスポットライトを浴びせる側にはいるが、浴びる側は慣れていない。いざ壇上に立たされると新人役者のように経験したことのない重圧ががかってたじろぐ者もいよう。その点、取材されることに慣れているキャンドル氏のペースで会見を進行しやすくなる。

では、今後、企業や政治家、他の芸能人が不祥事など危機対応の記者会見で、“キャンドル・ジュン式”を効果的に応用できるかといえば、いまの段階では未知数としか言いようがない。
ステージ上など衆人環視のシーンに不慣れな記者たちの攻勢をいなす効果は一定度ありそうだが、たとえば国会の議場で、取材者の矩(のり)をこえて不規則発言をしてしまうような東京新聞記者の望月衣塑子氏のように、人前で話すことに慣れている取材者を隣に座らせると、むしろ逆効果になる可能性が高い。官房長官時代の菅義偉氏の隣に望月氏を座らせようものなら、内閣広報官もSPも卒倒しかねまい。
会見の効果と時代の変化
一方で、取材者側としては質問力が問われる。ここで気になるのがベテランやOB・OGなどから「現場感」の衰退も指摘されることだ。
芸能会見に関していえば、ワイドショー全盛期の名物レポーターたちが続々と引退しているが、かつてフジテレビの番組で活躍した東海林のり子さん(89)が文春オンラインのインタビューで、「今はスタジオで、新聞や文春の記事を元にフリップを作って説明するでしょ。それは自分たちの目で見た情報ではない。テレビ局が現場に行かせないから、レポーターも立ち場がない」と指摘している。現場感の低下は当然「質問力」にも比例する。
なお、会見の効果でもう一つ指摘したい。今回のキャンドル氏が特に懸念していた発言の「切り取り」だったが、「どこかだけを今日切り取っても構いません。でも必ず皆さんの中の誰かが、この記者会見全てを流してくれるはずです」と述べたかいもあってか日刊スポーツのように当日夕方の時点で全文を速報したり、あるいはフジテレビなど動画で全編を流したりするメディアもあった。
注目度の高い騒動だったとはいえ、ここまで「全体」を見せるメディアが増えたあたり、ネット対応の進化も感じさせた。
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