「天の時、地の利、人の和を得た」SBI北尾会長が描く半導体参入の勝算とは?

台湾PSMCと工場設立へ提携

SBIホールディングスは5日、台湾の半導体受託製造大手、力晶積成電子製造(PSMC)と日本国内に半導体工場を設立すると発表した。両者合弁による準備会社を設立し、数年後の建設開始を視野に入れる。近年バイオやWeb3.0など非金融分野への投資に積極的だったSBIだが、日本の大手金融グループとして半導体分野に本格的に進出するのは異例だ。

記者会見するSBI北尾会長(YouTube「SBIチャンネル」より)

このタイミングで半導体分野への進出について、北尾氏は「天の時、地の利、人の和を得た」と独特の表現で報告した。著書やブログで中国古典に言及することも多い北尾節だが、米中が半導体市場の覇権を争い、日本が国策として復権をめざす「天の時」にあって、半導体関連企業が多く、自動車やAIなどの需要が多い国内の「地の利」を生かし、高いレベルの半導体技術者を擁する台湾側と日本国内の金融ネットワークという「人の和」を結びつけようというわけだ。

台湾系半導体大手の日本進出といえば、TSMCの熊本での工場進出が話題になっているが、PSMCとの提携では、合弁による新会社設立の形式にした理由について、北尾氏は「日本の会社でできた知財は基本的にそこに属する」と指摘。「例えばTSMCが日本で工場を作りましした、って言ったら(知財は)TSMCに属してしまう」と比較しながら合弁の意義を強調した。

80年代に世界市場の半分を席巻した日本の半導体だが、日米半導体協定の締結で価格設定などに足かせを作られたことを機に衰退。その後の技術革新や経営環境の変化に遅れを取り、今では市場シェアは6%程度に過ぎない。国をあげて何度も体制を立て直そうとしたものの、2012年には、半導体メモリー「DRAM」メーカーとして国内唯一、世界3位だったエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)が経営破綻する憂き目にも遭った。

※画像はイメージです(hekikuu /PhotoAC)

日本車のEV本格化に期待

北尾氏はエルピーダ破綻について「技術的には相当なレベルに行っていたと思うが、何で破綻したのかと言えば最終的には金づまりだった。ちょうど民主党政権になって(公的支援の)金を切られたりした」と指摘。半導体市場は、技術革新のペースが速く設備投資や在庫管理に独特の難しさがあり、資金繰りが極めて重要になることから「半導体産業と金融が引っ付くことは非常に意味がある」と提携の意義を強調した。

日本は技術面でも韓国や台湾にリードされている。トヨタ自動車やソフトバンク、NEC、NTTなど8社が出資してラピダスは2020年代後半に回路線幅2ナノ以下の開発をめざすなど、日の丸半導体の反転攻勢は、スマートフォンやPC用の「ハイエンド」でのキャッチアップに力を入れている。

しかし北尾氏は「政府は『ハイエンド』に力を入れているが、別にそこをやらなくても『ミドルレンジ』、あるいは『成熟』のところで半導体の需要はものすごいある」と述べ、特に車載向けで28ナノ以上の半導体が9割の需要を占めることから、「こっちの方がある意味必要とされる」と勝算を示してみせた。実際、コロナ以後、車載半導体の世界的な不足で自動車メーカーが減産を強いられてきた。

加えて北尾氏は、自動車などの「特定用途向け」半導体が2桁ペースで増加中のことから「日本が遅れていたEVの本格参入が見込まれ、半導体需要が一層高まっていく」と展望を示していた。

 

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