「物価上昇は一時的」パウエル議長が繰り返す、バブル期の日銀総裁の過ち
現役ディーラーが知らない金利急騰の恐怖- FRBパウエル議長の「物価上昇は一時的」発言に疑義、藤巻健史氏が指摘
- バブル景気到来を見抜けなかった往年の日銀総裁がのちに認めた間違い
- 日本より投資が盛んな米国で、資産効果で経済が狂乱した際の影響を危惧
FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、過去数か月間、「物価上昇は一時的だ」との強気の説明を繰りかえしてきた。しかし、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、「一時的」であるとは、それほど確信を持っていないのではないか?との解釈が市場で広がってきたようだ。

5月に寄稿して反響のあった「米国バブルが日本に地獄をもたらす」でも述べたが、私自身は、もし議長がいまだに「一時的」と信じているのなら、それは日本のバブル時代(1985年~1990年)の澄田智日銀総裁と同じ間違いをしているのではないか。先日の『米国が「緩和縮小」見通しも長期金利が下がるワケ』で述べたように、長期金利の下落はごく短期的で、米長期金利は今後とも大きく上昇するはずだ。金融緩和をしばらく継続するのなら、かなり強烈なインフレを招いてしまうのではないか、と思っている。
30年を失わせた過ち

澄田元総裁は、株や不動産等の資産価格上昇が、景気を狂乱させることに当時、気が付かず、低位安定していた消費者物価の動向に安心し、金融引き締めを怠った。その結果、その後の「失われた30年」と言われる経済低迷を呼び込んでしまったのだ。彼は正直に間違いを認め、その反省を書物に著してくださったのにFRBも日銀も、その反省を生かしそうにない。澄田元総裁は往時についてこのように懺悔している。
確かに87年頃から東京の地価は 2ケタの上昇率を示し、株価もかなり速いペースで上昇していました。それなのにすぐに金利引き上げを 実行しなかったのは、後から考えると、認識が不十分だったと答えるしかありません。そもそも消費者物価などの指標があまり過熱していないのに、のちにバブルと呼ばれる資産価格だけが上昇する現象は、日本では初めてのことで、世界でもそれまで指摘されていなかった現象でした。(略)ただ、土地や株、それに書画や骨董といった資産の価格だけが急激に上昇している意味を早く見抜けなかったことについては、私がその責めを負わなければならないと思っています。(『<真説>バブル』(日経ビジネス)p275)
コロナ対策でばらまいた過剰流動性が、株と不動産価格を押し上げている米国の現状は、まさに当時の日本とそっくりだ。さらには株が史上最高値圏にある点も同じ。史上最高値圏にあるとは総じていえば、株で損をしている人はほとんどおらず、その資産効果(株や土地を保有している人がお金持ちになったつもりで消費を増やす。それを見て株価が更に上昇するという好回転)は強烈だということだ。さらには米国は、401K(確定拠出型の個人年金制度の一つ)等を通じ株式投資をしている人が日本よりはるかに多いため、資産効果の影響力がすさまじいと思うのだ。
金利急騰の血みどろ
資産効果で経済が狂乱すれば、インフレ圧力は相当なはずだ。ただ、日本のバブル時は狂乱経済という強烈なインフレ要因を3年間で約130円もの円高進行(1984年末1ドル=251.58、1987年末=122.00円)という強烈なデフレ要因が相殺した。だから資産価格が急騰しても強烈なインフレは起こらなかった。
(注:資産価格の上昇は直接的に消費者物価指数(CPI)の計算には、入らない)

しかし、ドルは安定しており、強烈なデフレ要因が今の米国には存在しない。だとしたら、資産効果が景気を強烈に刺激し、そのインフレ圧力は相当なものだと思うのだ。
株価は、狂乱経済を迎えるのなら、まだ上昇を継続するかもしれない。ただここまで上昇してきているので、確信はない。しかし長期債の高値(=超低金利)は間違いなく異常だと思っている。景気が狂乱していくのならば長期金利が上昇していくのは当たり前の話だからだ。そのようなときに今の10年金利の1.5%は、FRBが10年債を大量買いしていることを割り引いても、あまりに低すぎる。私は、ディーラーになった直後の1980年、米国長期債が20%を超えて、先輩ディーラーが血みどろになっているのを、目の当たりにした。(参考・日本の長期債は1980年4月に11%を付けた)
この20年間以上、日米金利はさざ波程度にしか動いていない。激しく金利が上昇をしはじめた時、金利急騰の経験のない現役債券ディーラー諸君は右顧左眄してしまうのではないか?と心配になる。
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