開会式直前の「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」騒動、米ユダヤ人団体が抗議声明

残り1日でワールドクラスの不祥事

東京オリンピックの開会式・閉会式のディレクターを務める小林賢太郎氏が、お笑いコンビ「ラーメンズ」時代の90年代に舞台で披露したコントで、「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」という台詞を使っていることが、開会式2日前の21日からネット上で問題視されている。

小林氏は昨年11月、表舞台の活動からは引退。20年以上前のパフォーマンスとはいえ、ナチス・ドイツによるホロコーストを揶揄するような内容がネットを震撼させた。「いじめ」発言により、楽曲担当を辞任した小山田圭吾氏の問題よりも国際的にははるかに深刻に受け止められる内容で、米ユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」は21日(日本時間22日未明)、「東京オリンピックの開会式のディレクターによる反ユダヤ主義の発言を非難する」との声明文(原文は英語)を出した。開会式をあすに控え、大会組織委のみならず日本政府、東京都の対応が迫られる可能性が高まった。

Tom-Kichi/istock

問題のコントは1998年5月、ラーメンズなどのネタを集めたVHS「ネタde笑辞典ライブ Vol.4」(日本コロンビア)に収録されていたことを、芸能系ネットメディア「GEINO」が21日に指摘。問題のコント部分の動画がツイッター上で拡散し、小林氏の名前などがトレンド入りしていた。コントでは、NHKのEテレで往年に放映された「できるかな」のパロディで、小林氏がノッポさん、相方の片桐仁さんがゴン太くんに扮し、翌週の番組企画を話し合うという設定だ。

小林氏が「文字で構成された野球場を作る」企画を提案し、観衆に使う人形として、相方の片桐氏が「ちょうど“こういう人の形に切った紙”がいっぱいあるから」があると応じる。ここで小林氏がその人形が何だったのかを説明しようとする台詞で「本当?ああ、あの『ユダヤ人大量惨殺ごっこ』やろうって言った時のな」と発言する。動画を見ると、思わぬブラックジョークに観衆の笑い声も聞こえてくるが、コンプライアンスが現代よりも緩かった90年代といえども、テレビではとても放映できない内容だ。実際、このコント収録したビデオが発売される3年前には、文藝春秋社の雑誌「マルコポーロ」の廃刊騒動があったばかり。同誌2月号で、医師がホロコーストを否定する論考を掲載。前述のSWCが猛抗議し、文藝春秋の広告主に対して、広告を出稿しないようボイコット運動を呼びかけ、同誌は廃刊に追い込まれた。

SWCは小林氏のコントについてグローバル・ソーシャルアクション・ディレクターによる非難コメントを掲載している。

「どんなにクリエイティブであっても、ナチスの虐殺の犠牲者をあざける権利は誰にもありません。ナチス政権は障害を持つドイツ人もガス処刑した。この人物と東京オリンピックとの関係は、600万人のユダヤ人の記憶を侮辱し、パラリンピックの残酷な嘲笑を引き起こすでしょう」

いつもはSNSの動きにめざといスポーツ紙のネットニュースも、事態が深刻すぎるのか、この騒動は21日中に報道したところはなかったようだ。開会式まで1日を残す中、どのような展開を辿るのだろうか。騒動続きの大会主催者側には事案の性質上、ワールドクラスの不祥事が訪れた形だ。

【追記:11:20】毎日新聞は先ほど組織委関係者の話として、小林氏が解任されたと速報した(参照記事)。

 

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