イスラム型でも西洋型でもない…日本型の少子化打開策はあるのか?
アメフト、バスケ...球技に例えて傾向と対策を考える- 少子化の打開策を考える前回の続き。「3人目を増やす」という作戦は?
- 家庭、社会のどこかで「3人目の負担」を受け持たねばならない現実
- アメフト型、バスケ型…球技に例えて傾向と対策を考える
前回記事の終盤、「合計出生率2.1を目指すなら、少なくとも10人に1人の女性は3人目の子供を生まなければならない」という数学的な事実を説明した上で、現実の日本ではさまざまな事情でうまくいかないため、少子化が続いていると指摘しました。
それでは、「3人目を増やす」という作戦はどうなのでしょうか。フランスの例で言えば、【3333222210(2.1)】のような状況を目指すわけです。けれども、この作戦で2.1をクリアした国はありませんし、今後も多分ないでしょう。
「3人目」を増やそうにも…
断定はできませんが、育てる子供の人数が2人か3人かで両親の人生が大きく変わる(少なくともそう思われている)のではないでしょうか。まず、いくら行政やパートナーの協力があるからと言っても、産休育休で20~30代で合計5年前後のブランクができるとなると、女性がキャリアを維持することが難しくなる場合も多そうです。
また、私自身の実感レベルの話をすれば、家庭内で親の数よりも子供の数が多くなることの負担は想像を超えるものでした。お稽古事(含む塾)や学校行事、急病の対応など両親がフルに動いても対応しきれなくなることがあります。
家庭によっては祖父母が助けてくれるにしても、社会全体で考えると負担を一世代分先送りしているだけで、負担の総量が変わりません。行政や地域社会が助けることも大切ですが、これらも負担の分散でしかありません。PTAや町内会への参加強制が、あちこちで働く女性やパートナーの足を引っ張っていることを考えればわかりやすい話でしょう。結局どこかに「3人目の負担」が行くのです。
アメフト型とバスケ型
ここで話は大きく飛びます。スポーツのルールで攻撃と守備を選手間でどう分担するかという話です。まず、極端なのがアメリカンフットボール(アメフト)で、攻撃と守備は完全に分業になっており、QBなどの攻撃の選手が守備を行うことはほとんどありません。球技なのに、ボールに触ると反則になる選手もいます。
逆の極端な例、バスケットボールでは、5人全員に同じルールが適応され、守備も攻撃も全員でやります。ラグビーやバレーボールもこちらに近いルールです。
もう、お判りかと思います。男女の話に戻せば、性別による役割分担がはっきりしている旧来のイスラム社会がアメフト型。ジェンダーフリーを旨とする近代的西洋社会がバスケ型ということになり、少子化対策という面だけを考えれば、アメフト型が成功しているというのが、これまでの話です。
では、日本を含む「先進国」が近いうちに一斉に、ジェンダーフリーときっぱり決別しない限り、人類はイスラム教の生物になるのでしょうか……恐らくそうなんでしょう。でも、1つだけ見込みのありそうな代替案があります。
球技の話でアメフト型とバスケ型の中間に、「全員で攻撃も守備もするのが原則ですが、ゴールキーパーという守備専門の選手をチーム内に1人だけ置く」という、サッカー、ハンドボール、ホッケー(氷・陸)、水球、ラクロスなどのサッカー型と言うべきタイプのスポーツが多数あります。他にも、バレーボールのリベロや、野球のDH制での投手など、守備に専念する選手を作る方向へ、ルールが改革される傾向があります。やはり、守備の専従者がいたほうが、競技全体のバランスがよくなるのかもしれません。
男女関係にこれを応用できないものでしょうか。男女とも社会的キャリアも家庭も両方とも目指す事を原則とするが、一部の女性は(子供の人数などの状況によってはパートナーも)子育てに専念することもでき、社会もそれを推奨するというような方式です。
少子化キーパー !?
フランスの例で言えば、【6222222210(2.1)】のような形で、簡単に言えば10人に1人の割合で、6人ぐらいの子供を産む女性が出現すれば、それだけで少子化問題はとりあえず解決するということです。6人ともなるとさすがに、出産する女性だけではなくそのパートナーも自分のキャリアのかなりの部分を犠牲にしなければなりません。少子化キーパーと言った生き方です。
最後にひとつ付け加えますが、ひとりのキーパーを置くという思想が意味を持つのは、他の女性(フィールドプレーヤー?)も難なく2人目を産める社会であるということが前提です。
日本のように、多くの一般女性にとって子供は贅沢品になっている状況をサッカーモデルで解決しようとすると【9222221100(2.1)】のような形で、「キーパー」に9人目の出産を求める事になり、あまり現実的な話ではありません。
やはり、ジェンダーフリー政策や母子社会福祉の充実で出生率を1.7~1.8ぐらいまで持ち上げてからでなければ、このサッカーモデルの少子化対策は効力を発揮できないということになります。
「またまた村山クンは無茶なことを言うのね。どうやって、ジェンダーフリーを進めながら、一方でジェンダーに特化したような『キーパー』を養成するのよ。」
相変わらず鋭い先輩女子の突っ込みですが、その答えは……次回までに考えておきます。
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