オーストラリアが“共同親権パブコメ”ぶっ込み、単独親権「鎖国」ニッポンへ強まる外圧包囲網

豪メディア「世界的な怒りの高まりに続いている」

オーストラリア政府が3月中旬、日本政府に対し、単独親権の見直しを求める要望書を提出していたことがわかった。豪シドニー・モーニング・ヘラルド(SMH)が22日に報じた(記事はこちら)。これに先立ち、ジャスティン・ヘイハースト次期駐日オーストラリアは今月14日、法務省に斎藤法相を訪れ、家族法の改正について協議したことを明らかにしていた。

SMHの報道については、日本の時事通信も23日朝言及しているが、その厳しい論調については十分紹介されていない。オーストラリア政府が“内政干渉”するのは稀な事態であるとした上で、「日本での児童誘拐のスケールの大きさに対する世界的な怒りの高まりに続いている」と指摘。「世界的な怒り」の具体的な国名などは直接触れていないが、EU議会が2020年7月、子どもの連れ去り禁止を日本政府に求める決議案を採択したことや、22年11月、国連人権委員会が子の連れ去り事案に適切に対応するよう、日本政府に勧告したことなどを指すと見られる。

日本の親権制度に対し、オーストラリア国内の不満は強まるばかりだ。SMHは日本人配偶者に子どもを連れ去られたオーストラリア人被害者の実態を調査報道しており、2004年以来、少なくとも82人が被害に遭ったとしている。フランスでは100人超、アメリカでは475人、それぞれ子どもが連れ去られたケースについても合わせて指摘した。

SMHの記事には、共同養育議連の会長を務める自民党の柴山昌彦衆院議員も取材に応じており、「政府は国内だけでなく国際的な理由から、良い決定を下すために互いに協力しなければならない」と強調。オーストラリアのペニー・ウォン外相が林外相と斎藤法相に懸案を提起したと述べたという。

BeritK /iStock

日本の親権制度見直しを巡っては、法務省が民法の家族法制見直し中間試案についてパブリックコメントを実施、賛成・反対派を問わず、多数の反響があったばかり。今回のオーストラリア政府の申し入れはコメント受付締切後だが、事実上呼応したものと言える。国内世論の高まりを受けて、異例の対応をした格好だ。

また、大手メディアには「黙殺」されているが、法務省とは別に、民間の有識者らによる「民間法制審」が共同親権とDV被害防止の両立を図った独自の制度改正案を提起し、自民党側は合わせて検討してきた。

国内の連れ去り被害者の間では今国会中の制度見直しを求める声が強いが、左派系弁護士らがDV被害者保護を名目に単独親権制度護持を訴えて猛烈に抵抗。永田町・霞が関は水面下で賛成派、反対派が入り乱れてのロビイング合戦の様相を呈していた。

ただ、統一地方選に突入し、岸田政権の支持率上昇で衆院解散の観測も浮上する中、選挙への影響を危惧した「先送り」がささやかれている。国内の政局事情が法案提出に影を落とす中、日本に対する「外圧」は強まるばかりだ。

 

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