翁長前知事の「亡霊」がいまも徘徊する沖縄 #2

「負の遺産」に垣間見る、沖縄の「政治とカネ」
2021年07月08日 06:00
批評ドットコム主宰/経済学博士
  • 那覇市議選で注目すべき、故・翁長前知事の「負の遺産」を引き続き検証
  • タワーマンション開発やホテル賃料をめぐる疑惑もくすぶる
  • 選挙と利権配分に長けた翁長氏の手法を元県議が証言

来年の知事選挙の前哨戦ともいえる那覇市議選(11日投開票)を前に、故・翁長雄志前沖縄県知事が残した「負の遺産」を前回に続き検証する。「那覇孔子廟違憲判決」、「上下水道局駐車場疑惑」以外にも問題点を指摘した上で、沖縄の政治とカネ、翁長氏の「罪」に迫る。

2014年11月、沖縄県知事選と那覇市長選ダブル勝利を祝う翁長氏と城間幹子現市長(翁長氏ツイッターより)

タワーマンション疑惑

大和ハウスパーキングは大和ハウス工業の子会社だが、大和ハウスは、沖縄初の30階建てタワーマンションの建設を伴う新都心再開発事業「おもろまち1丁目プロジェクト」(2006年〜2015年)を手がけている。マンションの建つ敷地は、もともと市庁舎の移転先として那覇市が取得した公共施設用地だったが、当時の翁長市長の唐突な「決断」によって大和ハウスに市場価格より安値で売却されている。おまけに、売却後、那覇市は事業者の取得した不動産価値をさらに高めるかのように、用途地域指定を「第二種住居地域」から「近隣商業地域」に変更している。

前回問題になった駐車場の向こうにそびえる、中央と右の高層2棟が疑惑のタワーマンション。左手奥には大和ハウス系ホテルも見える。©批評ドットコム

この問題は疑惑の域を出ないままに終わったが、前回指摘した駐車場疑惑も、翁長市長時代のこうした再開発事業の延長線上にあり、しかも事業者も同じ大和ハウスの子会社である。

ホテル賃料をめぐる疑惑

翁長氏が那覇市に遺した負の遺産はまだある。離島航路の発着港である泊ふ頭に、那覇市の第3セクター、泊ふ頭開発が建設した複合商業ビル「とまりん」(1995年開業)に入居するテナントの賃料をめぐる疑惑である。県内最大手のホテルグループ「かりゆし」が経営する「かりゆしアーバンリゾート那覇」が問題のテナントである。

那覇港の宿泊一体施設「とまりん」(作・ヨッシー宙船/写真AC)

かりゆしグループといえば、2014年に翁長氏が初当選した県知事選挙で、金秀グループの呉屋守将会長とともに選挙運動を支えた平良朝敬氏が会長を務める沖縄経済界の有力企業で、平良氏は、オール沖縄の意思決定にも関与する論客だった。

かりゆしアーバンリゾート那覇は、ホテルとしての人気は今ひとつで、経営はつねに苦しかった。そのため、かりゆし側はたびたび賃料減額を求め、しばしば裁判沙汰にもなってきた。平良氏は2007年に「高額賃料のせいで経営できない」として、2009年11月末をもって「とまりん」を退去している。

その後、泊ふ頭開発は、かりゆしの穴を埋めるホテル事業者を募り、3社が応募したが、審査のすえ事業者として選定されたのは、なんと退去したばかりのかりゆしグループだった。フタを開けてみると月額賃料は約3000万円から2500万円に引き下げられていた。端から見ると、賃料減額を実現するために退去という強硬手段をとったようにしか見えない。当時の翁長市長の口添えがなければできないような強引なやり方だった。

が、話はここで終わらない。今年1月、かりゆしは来年1月を目処に「とまりん」から撤退すると通告したのである。月額賃料減額交渉がまたまた決裂したらしい。さらに、6月になってから、かりゆしが「とまりん」のホテル棟の買い取りを提案していることが明らかになった。かりゆし側の退去通告は賃料減額やホテル棟取得のためのなりふり構わぬ戦術と思われるが、先行きは依然として不透明だ。

かりゆしが翁長氏の政治力を背景に業績を伸ばしてきた企業であることは疑う余地がない。平良氏のオール沖縄への参画も、権益配分上の有利な立場を得ることができるからだ。翁長氏の逝去は平良氏にとって大打撃だったようで、亡くなってまもなく平良氏はオール沖縄から手を引いている。現在のオール沖縄を担う玉城デニー知事や城間那覇市長の力では、権益へのアプローチは難しいと判断したからだろう。

「とまりん」を舞台に繰り広げられる、かりゆしの権益をめぐる攻防戦。民間企業同士の争いならいざ知らず、「とまりん」には100億円を超える莫大な税金が投入されている。納税者の目に付きにくいところで、このような茶番が行われていることに地元メディアも沈黙しているが、翁長氏と持ちつ持たれつだったかりゆし側の小細工に、これまで多額の血税が浪費されてきたとしたら由々しき問題だ。

翁長氏とオール沖縄の「罪」

沖縄県のある元県議はいう。

翁長さんが選挙戦と利権配分に長けた人だったことは誰もが認めるところ。が、彼のいちばんすごいところは、利権配分の隙間を突いて選挙資金や政治資金を工面してきたことだ。翁長さんが私欲を満たしてきたとは思わないが、彼が工面してきた政治資金の元をたどれば、多くは公的資金に行き着くのではないか。その手法は、今の沖縄の政治家にも受け継がれている。

目下発覚している公共事業や公的事業をめぐる不可解な契約や解約の多くは、来年の那覇市長選、沖縄県知事選に向けた資金作りに関係があると私は見ている。驚くのは、こうした資金が「革新」といわれるオール沖縄の候補のために使われることだ。自民党が同じことをやれば、革新勢力は黙っていない。ところが、現在の沖縄では革新勢力が不正や不透明さを擁護する側にいる。基地反対というスローガンの裏に疑惑が隠されているということだ。翁長氏とオール沖縄の罪は大きい。

市議選で試される那覇市民の良識

7月11日に投開票される那覇市議選のポスター掲示板。定数40を63候補で争う ©批評ドットコム

ここで触れた疑惑の多くに明確な不正の証拠があるわけではない。真相は闇の中だ。だが、沖縄には、あるいは那覇市には、納税者が納得しがたい公的取引が多すぎる。

7月11日には、来年の沖縄県知事選、那覇市長選の「前哨戦」ともいえる那覇市議選が行われる。たかだか市議選というなかれ。納税者(市民・県民)を裏切らない政治とはいったいどんな政治か、よくよく考えながら一票を投ずる「良識」が求められる。私たちもたんなる傍観者に留まらないよう、投票の行方を注視したい。(おわり)

 

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批評ドットコム主宰/経済学博士

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