「無敗の男」が敗れるのか…茨城7区、中村喜四郎氏が野党鞍替えで大ピンチ
7度守った「孤塁」に異変「無敗の男」の異名を取る中村喜四郎氏の選挙区、衆議院茨城7区でかつてない異変が起きている。周知のように同区は中村氏の強固な地盤として知られるが、長らく無所属を貫いてきた中村氏が近年、野党側へと舵を切り、今回は初めて立憲民主党公認で出馬。しかし、この布陣変更をきっかけに思わぬ大苦戦をして全国的な注目を集めようとしている。

「孤塁」に起きた異変
中村氏は1976年の中選挙区時代、逝去した父・喜四郎氏の地盤を継いで初当選。出生時の名前は「伸」だが、この時、父と同じ名前に戸籍も変えた。以後、1989年、宇野政権で科学技術庁長官として初入閣。当時40歳。戦後生まれでは初の大臣となり、「自民党のプリンス」として脚光を浴びたが、ゼネコン汚職事件で逮捕。起訴後も無罪を訴え、無所属のまま選挙制度が小選挙区に変わった1996年でも出馬して再選。以後、8回の選挙のうち、有罪判決確定による議員失職・服役期間の1度を除く7度の選挙で「孤塁」を確保してきた。
「無敗の男」は、その生き様を描いたノンフィクションライター、常井健一氏の著書タイトル。中村氏はゼネコン事件以後、長らくメディアの取材にも全く口を聞かなかったが、それをこじ開けたのが常井氏で、選挙戦や政治活動の密着取材を続けてきた。
政治メディアの世界でも「喜四郎ワールド」での常井氏の独占的なプレゼンスがあり、血の滲むような取材活動へのリスペクトもあって、筆者はこれまで論評や分析をする気が起きてこなかったが、今回の異変に何も触れないわけにはいかなくなった。
中村氏は近年、安倍政権の後期から自民党一強に対する批判姿勢を強め、野党側の各地の選挙戦を指南。選挙の鬼が、地盤の弱い野党の若手議員の選挙区に入り、自民党支持の団体訪問といった「切り崩し」を本人に直接レクチャー。他にも野党共闘を進めるため水面下での調整に汗をかいてきた。
選挙戦で野党公認として出るのは今回が初めて。長年の勝利の基盤だった後援会「喜友会」は健在のようだが、ポジショニング変更したことで情勢が大きく揺らぎ始めた。
中村氏「初めて」のピンチ
自民党の情勢調査では4月の時点で、宿敵の自民党・永岡恵子氏に対し6ポイントリードしていたものの、8月の調査で永岡氏に4ポイント差で逆転された。10月に入り、選挙戦数日前の調査では中村氏が再びリードするも、中盤の調査では永岡氏が僅差で上回る展開になった。一進一退が続く情勢に、地元紙・茨城新聞は序盤「横一線」と報じたが、ここにきて複数のメディアが期日前投票の有権者に聞き取りした出口調査では永岡氏が大きくリード。現代ビジネス・小川匡則記者がレポートした中村氏自身の演説によれば、立憲民主党の調査でも3ポイント差をつけられ、「今までも厳しいことはありましたが、最初から遅れているというのは今回が初めて」というピンチになっている。
ピンチになった要因はいくつもあるが、これも中村氏自身が認めるように、ここまで支えてきた公明党(創価学会)票が離れ、永岡氏支持に回ったことが大きい。加えて今回は維新の新人候補者(水梨伸晃氏)が茨城7区から初めて出馬した。情勢調査からは「泡沫」(失礼!)と見られるが、一般的に維新に票を投じるのは、既存政党を嫌気した無党派層や若い世代、中道保守的な立ち位置の人たちが多い。
中村氏としては自民党に距離を置きたい層を少しでも集めたいところだが、中村氏と永岡氏が10ポイント差以内で競り合った場合、水梨氏の得票が当落を左右する可能性もある。万一、選挙区で敗れた場合でも、中村氏が比例復活する可能性が高いが、守り続けてきた「孤塁」の陥落は政治的なインパクトは小さくあるまい。
一方でこれも選挙の一般論になるが、期日前投票は組織団体票が早めに動くことで自民党の候補者に高めに出る傾向がある。選挙区への電話やネットで行った、メディアの情勢調査で伯仲していることに間違いはなく、中村氏が「底力」を発揮する可能性は否定できない。かつてないほど茨城7区にはテレビ取材も入るなど注目度は高まるばかりだが、中村氏は選挙後の来週、「無敗の男」でい続けられるのか目を離せない。
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