衆院選、維新「一人勝ち」の様相:大阪「完勝」、東京では小選挙区確保まで一歩

構築した「橋頭堡」生かせるか
SAKISIRU編集長

衆院選は31日、自民、立民がそれぞれ解散前より議席を減らした(自民279→261、立民109→96)中で、維新がほぼ4倍となる41議席を獲得。ほとんど「一人勝ち」と言ってもいい躍進を見せた。

日本維新の会公式サイトより

大阪無双、各地に橋頭堡

それにしてもホームグラウンドの大阪が際立った。19選挙区のうち、公明のいる4つを除く15選挙区に維新は擁立したが、ここで全て自民に完勝し切った。大阪での快進撃は想定内だったが、こうなると勢いは大阪府外へと広がっていく。兵庫6区では、維新候補者が大阪以外で初となる小選挙区勝利。そして獲得した近畿ブロックの10議席を兵庫や京都、奈良の小選挙区で惜敗した候補者たちにあてがうことができた。大阪では無敵の維新だが、近畿圏全体に勢力を拡大しきれなかったが、ここでは成果を出しきれた。

一方で、首都圏までその勢いが届かないのも宿題だった。筆者が今回の衆院選を与野党とも「勝者なき戦い」になるのではないかと書いた理由の一つがそれだった。蓋を開けてみると、比例ブロックで首都圏では東京2、南関東3、北関東2。さらには北海道こそ届かなかったが、東北1、東海2、北陸信越1、中国1、四国1、九州2と、これまでにない勢力圏も含まれている。各地に「橋頭堡」を確保した意味合いは小さくない。

東京では小選挙区こそ獲得できなかったが、東京12区では、NHKが出口調査の初報を出した時点では、新人の阿部司氏がトップを走っていた。しかしこの選挙区は今回当選した公明、元職を輩出していた共産の「根城」でもあり、組織票の比率が高い期日前投票が乗っかって議席獲得はならなかったが、阿部氏は惜敗率で80%に迫った。維新が東京で小選挙区の獲得に現実味を帯びる展開ともいえ、これは予想以上の大健闘だった。

当選を喜ぶ阿部司氏(右、提供写真)

周知の通り、12区の多くを占める北区は維新所属の音喜多駿参議院議員の地盤。音喜多氏が2年前の区長選で惜敗した際、既成政党の全てを相手に戦って掘り起こした無党派層の「第三極」票をきっちり集めた結果だ。東京全体を見ても比例では85万票を獲得した。一昨年の参院選で音喜多氏が54万票、昨年の都知事選で小野泰輔氏を擁立して61万票を獲得していたが、積み増した。60〜70万票くらいが一つの「リミッター」のようにも感じていたが、これを突破した。

「第三極」栄枯盛衰を克服できるか

ただ、維新にとってはこれも先日書いたように、東京の快進撃は「棚ぼた」勝利だった側面もある。小池百合子都知事が国政復帰で出馬することがなく、都民ファーストの会も国政政党設立を発表しながら時間切れで出馬を断念した。夏の都議選で都民ファが劣勢から巻き返す流れを作ったのも、「自民でもない、立民でもない」新しい政治勢力に期待する人たちがいることが可視化されていたが、今回、維新がそれをモノにした。

一方で第三極の歴史を振り返れば、みんなの党が5年程度しか続かず、都民ファも浮き沈みが激しい。一つには自民や立民、公明、共産のような手堅い「集票マシーン」となる基盤を作りきれていないことが最大の弱点だったが、大阪の維新は「しがらみがない」とは言うものの、大阪府民の中にロイヤリティーの高いファン層を獲得し、地盤化した。これを東京をはじめとする他地域でも広げることができるか。国会議員から地方議員まで日頃、後援会を組織しきれている割合が高いとはいえないが、ドブ板基盤を作りつつ、大阪府民が支持した「身を切る改革」のほかに、東京都民が受け入れやすい政策アジェンダは何か、独自の切り口を作っていけるかどうかも、名実ともに「全国政党」になるかの試金石だろう。

無党派層が新興政党に期待し、その新興政党があえなく没落していく様を、この30年近く我々は嫌と言うほど目にしてきた。瞬間風速的なものに終わるのか、それとも大阪発の政治運動として全国に広げていく過程なのか。岸田政権が改革路線に後ろ向きな姿勢を見せた分、維新が躍進した側面はあったわけなので、独自に法案を出すことができる勢力を確保した今回、国会での自民党への対峙の仕方にも注目している。

 

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