東京オリンピック、最終聖火ランナーは誰だ?#2

コロナで分断した世界を1つにできるのは...
2021年07月16日 06:00
ジャーナリスト、大和大学社会学部教授
  • 開会式当日の聖火ランナーの予想候補に野村忠宏さん、大坂なおみ選手ら
  • 聖火台に火を灯す最終ランナーは?平和と差別撤廃の理念を掲げた歴史
  • コロナ禍で分断した世界を1つにできそうな日本のアスリートは…

前回述べた「傾向」を分析した上で、開会式当日の聖火ランナーの有力候補を挙げてみたい。筆者の予想で浮かび上がってくるのは、以下の5人だ(=★は夏季五輪出場経験がない選手を表す)。

野村忠宏(柔道、五輪3連覇)北島康介(競泳、金メダル4メダル数7)★大坂なおみ(女子テニス、世界ランキング1位経験者)★松山英樹(男子ゴルフ、マスターズ優勝)★羽生結弦(男子フィギュア、五輪2連覇)

羽生結弦さん(David W. Carmichael:CC3.0)野村忠宏さん(Ogiyoshisan :CC4.0)=commons.wikimedia

最終日ランナーは誰か

複数大会での金メダリストである野村さん、北島さんは近年の傾向(前回記事参照)の全ての条件にあてはまり、最終日ランナーに選ばれる可能性は高いだろう。2人とも柔道、水泳という花形競技の名選手でもあり、野村さんは聖火リレー公式アンバサダー、北島さんは東京都出身であることも考慮される。しかし、北島さんについては「最終日ランナー6つの法則」で気になる点があり、候補から外れる可能性もあるので、これは後に述べる。

これまでの大会では、現役選手も最終日ランナーに選出されている。世界的スターの大坂なおみ、松山英樹両選手は金メダルを争う東京大会の「顔」であり、大会日程との兼ね合いで本人の了承次第であれば、確実に登場するのではないか。ハイチ出身の父と日本出身の母を持つ大坂選手は多文化主義を世界にアピールするためメッセンジャーとして、5人の中で最終走者に選ばれる可能性が最も高いと考える。

Rob Prange/flickr (CC BY 2.0)

一方、羽生選手は冬季五輪組の代表格で条件があてはまる。出身の仙台市は東日本大震災の被災地でもあり、宮城スタジアム(利府町)では今回、サッカー競技も開催される。

日本のお家芸の体操、レスリング競技からも選出したいところだが、聖火ランナーは2度走らないという暗黙の掟がある。女子レスリング界のレジェンド、伊調馨さん(五輪4連覇)、吉田沙保里さん(五輪3連覇)の2人はそれぞれ故郷で走者を務めており、最終日に国立競技場に姿を見せることはないだろう。

体操界でも、レジェンドの小野喬さん(1964年大会日本選手団主将、金5メダル13)、具志堅幸司さん(金メダル2メダル5)がすでにリレー走者の役割を果たし、最終日ランナー候補からは外れる。であれば、現役選手から、今大会にも出場する内村航平選手(五輪個人総合2連覇、金3メダル7)を挙げたいところだ。

リオ大会ではサッカー界のレジェンド、ペレが当初、最終走者だったが、病気のため最終的に辞退した経緯がある。競技人口が多いサッカー界からも最終日ランナーとして選出することも予想され、国際的知名度の高い澤穂希さん(ロンドン五輪銀メダル)、現役の三浦知良選手が最終日ランナーとして起用されることもあるだろう。

コロナ禍の世界へ何を示すか?

しかし、聖火リレーの最終日ランナーと、聖火台に火を灯す最終ランナーは少し意味合いが違う。1996アトランタ大会では、パーキンソン病を患ったモハメド・アリ(ボクシング、ローマ五輪金メダリスト)、2000シドニー五輪は、白豪主義で抑圧されてきたアボリジニの血を引くキャシー・フリーマン(陸上女子400メートル、シドニーで金)が最終走者となり、平和と差別撤廃の理念を掲げる五輪のメッセージとなった。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

となれば、東京大会では、コロナ禍で引き裂かれた世界を一つにする「スポーツの力」を示すため、急性リンパ性白血病からの回復を果たし、東京大会出場の権利を勝ち取ったスイマー、池江璃花子選手が最終走者の最有力候補と見る。池江選手は延期されなければ、開会式開催当日だった昨年7月の国立競技場のセレモニーでも登場し、「逆境から這い上がっていくときには希望の力が必要だ」と読み上げたメッセージは世界中の人々の心を打った。

もし、池江選手が最終聖火ランナーとなれば、北島さんは最終日ランナー6つの法則の「同一種目からは2人は入らない」点によって、最終日ランナー候補から外れてしまうのだ。しかし、リオ大会閉会式で行われた東京大会への引継ぎ式で安倍前首相とともに出演した北島さんの国際的知名度、これまでのスポーツ界全体に果たした功績はずば抜けており、今年3月から全国各地をまわって開会式前最後の聖火リレーとなる、前日7月22日の都内リレーの締めを飾る役割をまかすのではないかとも考える。

いずれにせよ、大会組織委員会内でもごく一部しか知らない聖火リレー最終日ランナー、そして最終ランナーをあてるのは難しい。

個人的な予想をすれば、23歳の大坂なおみ選手から引き継いだトーチを、21歳の池江璃花子選手と岩手・宮城・福島出身の10歳の東日本大震災出身の子供たち4人で一緒に、東京大会の聖火台に火を灯すシーンを勝手に想像(妄想?)している。

第1次世界大戦とスペイン風邪に苦しんだ直後に行われた1920アントワープ五輪の歴史が今も語り継がれているように、史上初めて延期となった2020東京五輪の開会式はきっと、世界中の人たちの心に刻まれるに違いない。クライマックスの点火式を心待ちにしたい。(おわり)

【7/24朝:編集部追記】実際の開会式はどうだったか。佐々木正明さんの「自己採点」はこちら

 

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ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

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