人類の夢?宇宙エレベーター!「カーボンナノチューブ」がスゴい!

坂田薫『コテコテ文系も楽しく学ぼう!化学教室』第14回
2021年10月10日 06:00
化学講師
  • ノーベル賞候補、飯島澄男博士の素材「カーボンナノチューブ」を紹介
  • 同素材を有名にしたのが「宇宙エレベーター」計画を実現に近づけたこと
  • 宇宙エレベーターが長らくフィクションの産物にとどまった理由を解説

今週はノーベル賞の発表がありましたね。候補者として日本の科学者の名前も挙がっていました。第1回の「結晶スポンジ法」藤田誠博士、第4回の「光触媒」藤嶋昭博士らもそうです。同様に候補者として取り上げられる飯島澄男博士の「カーボンナノチューブ」を2回にわたってご紹介します。前編の今回は「人類の夢?宇宙エレベーター!」です。

ガンダムの世界

ngkaki /iStock

子供の頃、誰もが一度は想像しワクワクした世界が、現実のものになるかもしれません。それは、いつでも誰でも気軽に宇宙に行ける「宇宙エレベーター」。「宇宙旅行の父」とよばれていたコンスタンチン・ツィオルコフスキーが、今から100年以上前に自著の中で記したのが最初といわれています。それから数々の研究者が宇宙エレベーターの研究をおこなってきましたが、実現性に乏しく、いつしか私たちは「ガンダムの世界の中だけのもの」と割り切るようになりました。

ところが1991年。「あるきっかけ」により、宇宙エレベーターは研究者のあいだで「実現可能な計画」に変わります。そして2012年、総合建設業の大林組は「2050年宇宙エレベーター完成を目指す建設構想」を発表。2018年には静岡大などの研究者が宇宙空間での稼働実験をおこなうなど、構想は実現に向けて急速に進み始めたのです。

その「あるきっかけ」とは、いったい何だったのか。それは、1人の博士による、とある素材の発見でした。その名も「カーボンナノチューブ」。日本発のこの素材は、研究者たちの想像をはるかに超えるものでした。

「宇宙エレベーター」本当の目的とは?

みなさんは「宇宙エレベーター」と聞いて、真っ先に何を想像しましたか?やはり宇宙旅行でしょうか。宇宙エレベーターが完成すれば、高度400kmにある宇宙ステーションまで日帰り旅行が可能になるといわれています。「今度の週末、ちょっと宇宙行ってくるよ」なんて会話が日常になるかもしれませんね。

metamorworks /iStock

しかし、宇宙エレベーターが担う本当の役割は、宇宙旅行よりずっと重要なものです。その役割とは「次世代の宇宙輸送機関」になること。というのも、現在の宇宙輸送機関であるロケットは、いくつかの問題を抱えています。宇宙エレベーターは、それらの問題を解決することができるのです。

一つ目は「輸送コストの問題」。ロケット輸送はコストが莫大にかかってしまいます。例えば、日本で研究が進む「宇宙で太陽光発電」。宇宙空間にメガソーラーを設置するためにはロケットを1000回打ち上げる必要があり、材料輸送費はなんと2772億円だとか。高いのか安いのかの判断もできない数値ですが、宇宙エレベーターができれば、輸送費は5分の1から10分の1まで抑えられるといいます。少し気が早いですが、エレベーターが複数になったり大型化すれば、さらにコストは下がるでしょう。

2つ目は「エネルギー問題」。宇宙エレベーターは先述のメガソーラーの設置に貢献するだけでなく、レアメタルなどの鉱物資源を周辺の小惑星で採掘することも期待されています。その理由は、現在、宇宙からの物質を地球の正確な場所に落下させるのは難しいのですが、宇宙エレベーターができれば解決できます。

そして3つ目が「環境問題」。ロケットの打ち上げには燃料を使用していますが、宇宙エレベーターは宇宙太陽光発電衛星などからの電力調達が検討されており、環境にもやさしいのです。(宇宙太陽光発電より先に、環境に優しい電力を地球で大量に作る方法が開発されている可能性もあります)。そして、近年問題になっている宇宙ゴミ。その多くはロケットの打ち上げによるものです。当然、宇宙エレベーターではその心配もありません。

宇宙エレベーターの仕組み

さて、多くの研究者が宇宙エレベーターの研究をおこなっていたにも関わらず、長い間ガンダムの世界から抜け出せなかったのは、何故なのでしょうか。

その答えは「宇宙エレベーター実現のために必要不可欠なものを作ることができなかったから」です。いったいそれは何なのか。それを知るため、まずは宇宙エレベーターの仕組みを確認してみましょう。

まず、気象観測用衛星「ひまわり」をはじめとする人工衛星は、赤道上空約36,000kmにあり、地球の自転と同じスピードで周っています。そのため、地球からは同じ位置に静止しているように見えるので「静止衛星」とよばれています。例えば車で走行中、隣の車線に同じスピードで走っている車がいたら、その車は止まっているように見えますよね。それと同じです。

では、静止衛星が何かわかったところで、一緒に宇宙エレベーターを作ってみましょう!想像力を働かせて、ついてきてくださいね。まず、静止衛星から地球に向けてケーブルを延ばしていきます。地球側だけにケーブルを延ばすとバランスを崩すため、地球とは反対側(宇宙側)にも延ばしていき、全体のバランスをうまく調整しながらおこないます。

やがて、ケーブルは地球の地上に到達し、地上と宇宙を結ぶ1本のロープのような状態になります。このケーブルにクライマーと呼ばれる昇降機を取り付けると、宇宙エレベーターが完成です!!

実際に大林組が発表している完成予想図は次のようなものです。ケーブルの地球側の末端(すなわち地上)にはターミナル。そして宇宙側の末端にはバランスをとるためのおもり(カウンター)がついていて、ターミナルからカウンターまで、ケーブルがピンと張った状態です。

大林組プレスリリース(2012年2月20日)より

そして、ターミナルとカウンターの間には、地球に近いほうから「低軌道ステーション」「静止軌道ステーション」「火星ステーション」「高軌道ステーション」の4つのステーションが設けられており、ステーションの間を、通常のエレベーターのようにクライマーが昇降しています。みなさんの頭の中に完成予想図が見えましたか? (見えなかったかたは、大林組のHPへお願いします。)この完成予想図。私は何度見てもワクワクします。映画などではなく、現実にそれを人間が作ろうとしているのですから。

次回後編「宇宙エレベーターを実現可能な計画に変えたカーボンナノチューブ」は10月31日です。お楽しみに!!

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