「逃げるな大江」大江健三郎と沖縄 〜 なぜ辺野古で罵声を浴びたのか
戦後左派論客の精神的支柱、沖縄問題の功罪(前編)- 生前の大江健三郎氏の沖縄問題における「功罪」を問う
- 8年前、辺野古で罵声を浴びた大江氏。何があったのか?
- 大江氏の作品を愛読した篠原氏が冷めてしまった理由とは…
川端康成に次いで日本人2人目となるノーベル文学賞受賞者・大江健三郎氏が今月3日、亡くなった。享年88。1950年代生まれの私たちも含め、1960年代から70年代前半にかけて「青春」を過ごした者にとって、大江健三郎という存在は多かれ少なかれ特別だった。朝日新聞・岩波書店的な左派系論壇の理論的精神的支柱といっていい文学者だったが、政治的にはそれと対極にある人々にとっても、何からの影響を及ぼしていたと思う。
その大江氏は、沖縄の基地反対運動の世界でも大きな存在感を示していた。というより、戦後思想史を振り返ると、沖縄戦という惨劇を反戦・非戦の思想の中軸に据えた張本人こそ大江氏であり、その大江氏に支えられるようにして沖縄の基地反対運動は展開してきた、といっても過言ではない。今回はその大江氏の沖縄におけるエピソードや私的な大江体験も交えながら、沖縄問題に関する大江氏の「功罪」を論じてみたい(以下敬称略)。
辺野古で罵声を浴びた大江健三郎
今から8年前の2015年に大江健三郎が沖縄を訪れた時、大江は辺野古の埋め立て反対運動の現場に足を運び、用意されたボートに乗って大浦湾内も巡った(動画は琉球新報YouTubeチャンネル)。
辺野古の活動家たちは、視察を終えた大江をゲート前で行われる集会に呼びこみ、連帯のメッセージを発してもらおうとしたが、この時、大江は体調を理由に登壇を拒んだ。実際、当時80歳と高齢だった大江は視察中に熱中症にかかっており、翌日に予定されていた沖縄タイムスの(※訂正:琉球新報)の講演会もキャンセルして、その後1週間ほど療養している。
登壇を拒んで車でホテルに帰ろうとした大江に、反対運動の活動家たちは、「逃げるな大江」「裏切るのか大江」と口々に罵声を発した。その模様は、辺野古の活動家で当時盛んにツイキャスで配信していた仁尾淳史がアップした動画で多くの人が確認している(ちなみに仁尾は、昨年辺野古を訪れたひろゆきともやり取りしている)。大江が罵声を浴びた事実はあまり知られていないが、これを知った、辺野古の反対運動に批判的な保守派の人々のあいだでも、「ノーベル文学賞を受賞した大江氏に対する敬意を欠いている」といった同情的な声があがったほどだ。
大江健三郎といえば、『沖縄ノート』を著した、沖縄の基地反対運動にとっての最大の功労者である。なぜ、こんなことが起こったのだろうか。
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